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吸血鬼には白い百合の花を!  作者: 夕風清涼
12/20

◇4

数分後、ようやく着替えを終えた早川さんと私はお店を出て行く。


『ありがとうございました!』


たぶん店内に居るスタッフ全員だろう、私達が出る時に川上さんを中心に一列に並びお見送りをしてくれた、店の前を往来している人々が一瞬立ち止まり、私達に視線を注ぐ。


『わっ!‥みんなうちらを見てるわ‥‥‥』


『気にしない!気にしない!‥さっ、次はCCの店だってタクシー降りた時に言ってましたよね?』


『さっ………沙也架ちゃん!!もういい!もう十分やから!…うち普段の生活に戻れなくなるわ!……薬局寄って早よ本部に帰ろ?なっ?…うちケンさんにお礼言いたいし!』


そう言うと早川さんは素早く手を挙げタクシーを停めるとすぐさま乗り込んだ。


まだ信じらんない!そんな表情の早川さんと私は薬局に寄り女の子用品を購入して本部に戻った。


…………………

……………

………


♪コン!コン!


『失礼します!……………わっ!?何これ!凄い!………』


確か買い物に行く前に居た部屋はテーブルと椅子しかなかった会議室が、今はまるで映画に出てくる軍隊の指令室みたいになっていた。


『……沙也架ちゃん……うちら部屋間違うたんちゃう?……警察の指令室よりえげつない装備やで………核ミサイルのボタンでもありそうな感じ………』


(たった数時間で…………こんなに変わるなんて………)


まだ機材の設置作業中とはいえ、あまりの部屋の変貌ぶりに私達は迷子の子供みたいに立ちすくんでいた。


『やぁ、沙也架!京子!買い物は楽しんだかい?』


私達の後ろからケンさんの声が聞こえた。


『あっ!ケンさん!』


買い物中ずっと神経を張り詰めていたからか、私はケンさんの声にホッとして笑顔になる。


『あ!‥あの!ハーバーランド様!‥‥‥こ‥‥‥こんな‥うち!‥いや、私の為に本当にありがとうございます!』


『はははっ、You arewelcome!気にするな!それに今日からは同じ仲間だし、沙也架の良きfriendになって欲しいからね!それと私の事はケンて呼んでくれ!』


『は!…はい!よろしいお願いします!ケンさん!』


緊張の糸が切れたのか、早川さんは満面の笑みを浮かべる。


『ほな、沙也架ちゃんもうちの事、京子って呼んでや!これからよろしくね!』


『うん!京子ちゃん!』


『あははっ!でも、訓練の時は別やで!みっちりしごいたるからね~!覚悟しときや~!』


『うっ…………』


『wonderful!私もこんなcuteなladyを迎えられて嬉しいよ!…そうそう、今から私と一緒に本部長の部屋に来てくれ、渡したい物がある!』


ケンさんは私達を従え廊下を歩き出す。


『なぁなぁ…渡したいもんて………ひょっとしてうちの買い物の請求書と違う?……本部長、あぁ見えて結構せこいから…』


『はは………それは無いと思いますよ………』


エレベーターで三階に降り、一番奥の部屋へと私達は進んだ。


♪コン!コン!


『入るよ!松本さん!』


ドアを開けると堂々とケンさんは部屋の中に入っていく。


『さっ、君達も入って!』


『失礼します!!』


私達が部屋に入ると松本さんが出迎えてくれた。


『おっ!帰ってきたな!早川!買い物楽しかったか?お姉ちゃんもご苦労やったな~』


お…お姉ちゃん……まだ私はそう言われ続けるのね…


『はい!私服のままで申し訳ありません!早川京子巡査部長、只今戻りました!』


(京子ちゃん、ほんの数秒で警察官に戻った!!凄いわ!)


『構わん!構わん!お前は今日からケンさんのチームに出向やさかい、気にすな!まぁ座り!』


私達は松本さんに言われるがままソファーに座った。


『松本さん、例の物を!』


ケンさんは松本さんの机の上に置いてあるトランクケースを指差した。


『あぁ!そやな、それを渡すのに呼んだんやったわ!がはははっ!』


‥ほんとにこの人本部長なの?まだ信じらんないわ‥‥


『よっこい醤油~~』


出た!オヤジギャグ!


松本さんはソファーのテーブルにケースを置くとケンさんの横に座った。


『‥‥‥さて、このケースの中身やけど‥』


私と京子ちゃんはジッと固唾を飲んでケースを見つめる。


『この中にはな‥さっきお前らが買い物した請求書が入っとるんや~!………』


『えっ!?………』


私達は背筋に冷たいものが走る。


『でな…早川………とりあえず10年払いのボーナス返済でええか~?……』


『あ…………あの…………わ………私…………』


今にも京子ちゃんは泣き出しそうな表情に変わっていく。


『はははっ!松本さん、悪い冗談はそのくらいでいいじゃないか~!今にも京子が泣き出しそうじゃないか!』


『えっ?………』


(は?…え?…何?)


何が起こってるのかさっぱり理解出来ずにいる。


『だって、ワシかて早川羨ましいもん!…ちょっとくらいビビらしてもバチ当たらんやろ?』


(何?…何がどうなってるの?)


『がはははっ!早川!すまん、すまん!ちょっとワシのジェラシーな悪戯!…請求書なんかあらへん!』


『は…………………はぁぁぁ~~~~~~~………』


京子ちゃんは目に涙を浮かべながらソファーにもたれる。


(…オッサン!…)


『気を悪くしないでくれよ!京子、沙也架…昔から松本さんはこんな事をしては人から嫌われているんだよ!ははははっ!』


『ちょっとケンさん、そりゃないで!ワシ部下から愛されてると思てんのに…』


『はははっ!sorry!だったら若いladyには優しく接しないとね!OK?』


同じオジサンでも全然違うわ~♪ケンさん最高♪かっこいい♪


『いや~すまん、すまん!‥お詫びのセリフやないけどな、早川!お前明日付けで警部補に昇進や!』


『えっ!?‥‥ほんまですか?本部長?‥』


『これは冗談やなくてほんまやで!辞令書も手元にあるさかい!』


京子ちゃん、凄くいい顔になった!良かったね♪京子ちゃん♪


何だか友達の合格発表を一緒に見たような、そんな嬉しさがした。


『あ………ありがとうございます!』


京子ちゃんはソファーから立ち上がり、本部長に敬礼をする。


『うむ、まぁ座れや早川!…これにはまだ話しの続きがあるんや!』


松本さんはケンさんに視線を送ると、何も言わずにケンさんは頷く。


『???何でしょう??』


また神妙な顔付きになり京子ちゃんは本部長の顔を見つめた、私は松本さんが今から話そうとする事を予測が出来た。


『あんな、今から言う事は小説でも映画でもアニメでもない話しや……これは国家的にシークレット事項やから心して聞いてくれ!いいな?』


わっ!松本さんの表情も凛々しく変わった!


『ケンさん、そして君の横に居る十文字沙也架さんは、ある事件を追っている!それは決して公表出来ない事件だ!』


『公表出来ない?………政治絡みですか?…それともテロ関連?…』


『テロ関連と言えるかも知れないが……実は、首謀者は人間ではないんや!』


『?????はぁ???………言ってる意味が解りません……』


そりゃそうでしょうね…私もそうだったし……


『この事件の首謀者……それに仲間は全員、吸血鬼なんや!』


『本部長……また…私をからかっているのですか!!!』


いきなり京子ちゃんは声を荒げて立ち上がる。


『京子ちゃん!落ち着いて、お願い…最後まで松本さんの話しを……聞いて……』


私は京子ちゃんの腕を掴み、悲しそうな顔で見つめた。


『わ…………解ったわ………』


京子ちゃんの気持ちはよく解る、私だってそうだった!本物のヴァンパイアと遭遇するまでは…


少し落ち着いた京子ちゃんは松本さんを睨み付けたまま、静かに腰を下ろす。


『早川……お前の気持ちは解らんでもない……確か、お前の両親はドイツ旅行で事故に遭い亡くなったそうだな?』


『!!それが今の件と関係あるんですか!!本部長!』


『ある!!…これを見ろ!早川!!』


松本さんは厳重に封印された封筒から書類を出し、京子ちゃんに渡した。


『!!インターポール!!………この書類………』


『君の両親の事故報告書や!………内容が内容だけに国家シークレット扱いになった書類や……ケンさんの協力でやっと手に入ったんや!…読んでみ!』


手を小刻みに震わしながら京子ちゃんは翻訳された報告書を読み始めた。


(もしかして…京子ちゃんも…私と同じ………)


……………………

………………

…………

……


『そ……そんな……確かフリーウェイの事故だったって聞いていたのに……………21世紀の時代に…吸血鬼なんて…………う……嘘や!!この書類かて嘘っぱちや!!!』


『NO!京子‥これは嘘ではない!この書類は紛れもなく本物だ!信じられないなら公安局で調べてもらうといい!‥』


『そ……そんな……そんな事って……お父ちゃんとお母ちゃんが事故やなく吸血鬼に襲われて死んだやなんて………なんでなん?………』


『偶然……京子の両親は偶然だった!…調べたが京子の血縁にはヴァンパイアとの接点が無かった!…たまたま血を求めていたヴァンパイアと遭遇したのだろう……沙也架の両親とは違ってね…』


『えっ!?………沙也架ちゃんも!?……』


『沙也架の場合は少し違う、沙也架の両親はヴァンパイアの標的になっていた、彼女の祖父は世界中の国家が認めるヴァンパイアハンターだったからだ!そして私は彼のパートナーだった!…しかし…その彼女の祖父が行方不明になると、しばらくの後にヴァンパイア達は彼の縁者を襲い始めた……ヴァンパイアハンターの血を絶やす為に……そして沙也架の両親も犠牲になった………今は世界中でその血を受け継いでいるのは沙也架1人だけだ………』


『さ…………沙也架ちゃん………』


苦しそうでもあり、悲しそうな表情で京子ちゃんは私を見つめる。


『京子ちゃん…ケンさんの言った事………全部本当よ……私も最初は信じなかった!………本物のヴァンパイアを見るまでは……』


『ほ、本物?………本物の吸血鬼?……』


『YES!…京子!…沙也架は祖父の意志を継ぎ、自分の気持ちを押し殺してヴァンパイアハンターになってくれたんだ!…昨日、東京のホテルでヴァンパイアを冥界に送った!』


『…それって…従業員の女性を刺殺して焼身自殺した事件の事ですか?………』


『そうや、今朝もニュースでやっとったやろ?あの主犯が吸血鬼や!!お前も警察官やったら解るやろ?…そんな事実を公表したらどうなるかくらい!』


『………………………』


『京子、この件は大阪府警の中では私達と折野君しか知らない!それほど重要な事件なんだ!…最近では毎日ヴァンパイアと思われる事件が増えてきている!京子……我々は一刻も早く吸血鬼の幹部とbossを見つけ出しヴァンパイアの脅威から人々を解放しなくてはならないんだ!協力してくれ、京子!』


『お願い!京子ちゃん!…私……まだまだへなちょこハンターだけど…京子ちゃんが味方になってくれたら、凄く心強いの!…だから………』


『もうええ!!!…沙也架ちゃん!!!』


『きょ…………京子ちゃん…………』


『うちが………うちが沙也架ちゃんの盾になったるわ!…うちと同じ境遇やったらなおさらや!!大阪女の心意気、血を吸う蚊みたいなヤツらに負けるかい!』


『京子ちゃん……ありがとう……』


『よう言うた!早川!!それでこそ浪花女や!!!根性と人情は浪花女が日本一やで!がはははっ!』


『Thank you!君に出逢えた事を私は誇りに思う!君と沙也架の命は私が全身全霊を持って守ろう!』


『よっしゃっ!最高のチームの結成やな!ほな、アイテムの授与式といこか!まずは早川からや!』


松本さんはトランクケースを2つ鍵で開ける。


『えっと…どれどれ?早川には………ふむふむ……まずこれか…』


♪ゴトッ!…


松本さんはまずテーブルに拳銃を置いた。


『ほ…本部長……この銃は……』


『コルトパイソン357マグナム4インチモデルやな…さすがにSP利用の多い外国さんは解っとるな!オートマチックの拳銃は弾詰まりしたら役に立たんからな!いざって時はやはりリボルバーや!』


『でも…本部長…私…マグナムは扱った事ありませんが……』


『心配いらん!お前用にカスタムしてくれるし、軽量化してくれるわ!それ以外の扱い方はナンブと同じやからすぐに慣れるやろ!』


(へぇ~~‥これが噂のマグナムなんだ~‥見た目は重そうね…ハンターの私がマグナム持ったら‥‥‥‥‥‥‥‥なんかそんな漫画あったような‥‥‥)


『で‥‥‥これが銃弾‥二種類あるな~‥‥‥ほぉ~~~‥なるほど‥‥一つは模擬弾タイプで中には聖水が入ってるんか‥‥‥で‥‥もう一つが‥‥‥こりゃまた高価やな~~!!銀の弾丸とは‥‥一発なんぼやろ?‥』


120発入りと書いてある箱をそれぞれ松本さんは取り出し、京子ちゃんに預けた。


『ええか!早川!警官の意地で絶対にお姉ちゃんを守るんやぞ!一緒に甲子園に行く約束しとるんやからな!』


ははっ‥‥‥甲子園ですか‥‥‥


『はい!!』


『それと、これや!!!』


『!!!!こ‥‥‥‥バッチは!?‥‥‥初めて本物を見ました!‥』


『そうや!!いついかなる時でも発砲してもいい許可証や!但し、ヴァンパイア、その協力者のみだけに効力があるから気を付けろや!』


『は‥‥‥はい!了解しました!』


(す‥‥‥凄すぎ!‥スパイ映画みたい!でもリアなのよね…)


聖水入りの模擬弾と銀の弾丸‥発砲許可証‥正直ビックリだわ!


『以上が早川が所持するアイテムや!‥銃はすぐにカスタムに回すからしばらくはナンブを所持しておいてくれ!』


『本部長!お言葉ですが、カスタムは遠慮してよろしいでしょうか?』


『‥‥‥なんでや?‥』


『カスタムすれば耐久性が大幅にダウンしますし、それに‥‥‥‥‥‥女だから、マグナムは扱えないとか言われたくないんです!‥‥うちだって‥‥鍛えてます!‥‥だから‥‥』


『これは、これは‥‥‥頼もしい限りですな!松本さん?‥京子は立派なSPだ!』


『こりゃ一本取られましたわ!‥がはははっ!‥解った!ほんならこのまま持っていけ!!』


『ありがとうございます!本部長!』


『京子、マグナムの扱い方はロバートから教えてもらうといい、後で38口径の弾を用意させておくから練習すればいいよ!』


『解りました!』


『さて!次はお姉ちゃんやな!‥‥‥‥えぇ~っと!‥‥‥!!ケンさん!!‥ほんまにこれお姉ちゃんに渡してよろしいんでっか?‥』


『YES!!‥沙也架も立派なHEROだ!私達人類の希望なんだから!』


何?‥‥‥ちょっとオジサン同士で何を話してるのよ?‥私に何を渡そうとしてるの?


私が座っている位置からはトランクケースの中身が見えなかった。

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