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俺(40歳成人男性)が魔法少女に?!  作者: 桃地公多浪


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14/18

第14話 1回目

 目を開くと、なんだか寝起きのように意識がスッキリとしていた。

 疲労も取れていて、身体も軽い。

 酒を飲んで昏睡し、起きたら昼だったときのような感覚だった。

 しかし、俺は布団のうえではなく、スーツを着て座っていた。

 座りながら、部長室で、部長に叱られていた。


「田中君! 我々は魔法少女だ! 宇宙を守る使命があるんだ! そんな意識では困るよ!!」


 聞き覚えのある台詞。

 どこか冷静な気持ちで、目を真っ赤にして怒鳴る部長を見ていた。


「君が彼女を呼ばないのなら、私が迎えにいく! どこの学校なのかも分かっているからね!」


 そこまで聞いて思い出した。

 これはただの既視感ではない。実際にあったことだ。

 俺はこの日、ここで部長に責められて、そして部長は舞ちゃんを連れ去りに向かった。


「あっ、部長! 駄目です!」


 咄嗟に声を上げたが、部長は止まらなかった。

 記憶の通り、窓を破壊して外へ飛んで出ていってしまった。

 次に、騒音を聞きつけて社員が部長室に流れ込んでくる。


「やばい……」


 このままいけば、同じことになる。

 ざわつく社員には目もくれず、俺は部長を追いかけた。部長が出ていった窓から飛び降り、俺も変身する。

 前と同じであれば、とにかく時間がない。俺は空を飛べないから、部長に追いつくには最速で最短で向かわないといけない。

 自分が飛べるともう信じていない俺は、地面に着地をし、迷わず舞ちゃんの中学校に向かって走った。そこに無駄な動作はなかった、はず。  


 だが、どう足掻いても、俺は部長には追いつくことができなかった。

 中学校へ着いた頃には、そこに部長の姿はもうなかった。


 「2人目の変態だ!」


 中学生からの罵声もよく覚えている。

 だが、取り合っている暇はない。今はとにかく時間が惜しかった。

 俺は一瞥をくれ、例の倉庫へと向かう。


「やぁ、大二郎。大変なことになったね」


 途中、淫獣がまた俺に近づいてきて、舞ちゃんの視覚や聴覚の共有を提案してきた。

 舞ちゃんの様子が気になった前回は、この提案を受け入れたが、今回はスピード重視。意識の妨げになると思って断った。

 何より、舞ちゃんが辛い目に合うのは見たくない。俺自身、部長に顔を近づけられて囁かれるのは耐えられない。

 果たして、倉庫には着いたが、またしてもそこには全裸で息をあげている部長と、乱れたブレザー姿で横たわる舞ちゃんがいた。


「あぁあ――ッ! またかよ!!」


 どうやら、また間に合わなかったらしい。これだけ急いだのに、変わらなかった。

 その無力感に、俺は声を上げて、また泣いた。

 感情の勢いに任せて、部長に飛びかかる。

 動きに迷いのない俺に、部長は一手遅れたらしい。直前で変身したが、掴みかかってきた俺に反撃することができず、そのまま壁まで押し込まれた。


「た、田中君!!」

「部長!! また、あんたって人は!」

「待ってくれ、私はまだ志半ばだよ」

 

 部長の言い訳に耳を貸すつもりはない。

 そんな格好で誰が信じるかよ。

 俺は迷うことなく、部長を殴りつけた。何度も顔面を拳で、悪魔が相手の時のように、渾身の魔力を込めて、打ち込んだ。

 そうしているうちに、ここでもやはり遅れて警察が倉庫に入ってきた。

 もう何もかもが手遅れだ。こいつらの来るのが遅いから、こんなことになったんだ。

 怒りの矛先が部長から警察に向きかけた時、前回と同じように、俺は複数人の警察官に取り押さえられた。

 そこで気がついたが、部長はまた全裸になっていて、失神していた。


「何をしている! 警察だ! 動くな!!」

「未成年監禁の疑いで現行犯逮捕する! 大人しくしろ!」


 また、同じ結末か……。前回と同く、無実の容疑で、俺は現行犯逮捕されるらしい。

 俺はやってないって。やったのは部長なんだって。

 ただ、前回と違うことが1つあった。 

 それは、犯人である部長が生きていること。

 俺は間に合わなかったが、不本意にも、1人を救うことはできたらしい。

 警察は全裸で横たわる部長を見ると、


「お前がやったんだな」


 と、俺に新たな容疑をかけた。

 無理もない。こんな状況では、俺が加害者にしか見えないだろう。現に、部長に関しては俺の仕業だ。

 俺がパトカーに連行される途中、舞ちゃんと目が合った。


「舞ちゃん……俺、俺……っ」 

「田中さん……」


 俺は君を救いたかったのに、ごめんね。また、間に合わなかった。あの悪魔から、君を守れなかったよ。

 怯えた目をする彼女を見て、思わず叫んだ。


「舞ちゃん! 待っててよ! 次こそは必ず……!」


 警察に視界を遮られる間際、俺はふと疑問に思った。 

 舞ちゃんのブレザーやワイシャツは乱れているが、それだけだということに。俺が思う既遂であるなら、もっとこう、色々とどうにかなってそうなのに、それ以外はどうも無事に見える。

 そして、部長の最後の言葉であり、見苦しい言い訳を思い出す。


 志半ばってどういうこと……?


 もしかして、俺は勘違いしていたのかもしれない。感情のまま部長を消し炭にして、ボコボコにして。またこうして勝手に絶望しているが、本当は初めてから、間に合っていたんじゃないか?

 去り際、俺の背中に、意識を取り戻した部長がつぶやく。


 「残念だよ、田中君」



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