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転生者が変える人類の近未来史  作者: 黄昏人
第1章 涼の歴史への登場
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1-9 彩香の活躍と父隼人の受難

この作品は間違って消去した作品の復活版です。

 彩香の転居と転校が決まり、クラスで発表された時は、その存在感の大きさから結構な騒ぎになった。

「どうしたの、彩香、こんな時期に?都内っていっているけど、中学はどうするの?」

 最も仲のよい、斎藤真紀が聞いてくるのに、苦笑して応える。


「うん、転居が市ヶ谷だから、近くの私立よ。まあ、理由は護衛がついているのと、同じということ」

「だけど、聞かなかったけど、護衛が付くなんて普通考えられないなあ。それも、彩香になにか特別な何かがあってということではないだろうし」


 真紀の言葉に、横にいた同じバスケ部の宮城あかねが追随する。

「うん、彩香は優等生で、バスケのエースだよ。だけど、護衛がつくようなものはないと思うな。お父さんはゼネコンの監督でしょう?だったら、兄さんか?ええと、涼って名前だったような」


「ええ?兄さん、ええと、前に会った時はごく普通の方だったような」

 真紀が言うが彼女等は、日向家に遊びに行って涼に会っている。それは可愛い彩香の兄ならイケメンかもと思って彩香に会わせるように強要したのだが、そのブサ面にいっぺんに興味を無くしたのだ。


 その彼女等からすれば、その涼が突出するような何かを持っているとは思えないということだ。一方で同じく会っている綾子は自宅開業の会計士であっても、まさに主婦という感じで対象外と思っている。

 彩香の返事は「それは秘密なの」の一点張りだが、「でも〇〇線で一本だし、家もそのままだからちょくちょく遊びにくるわよ」とも付け加えている。


 授業を終え、彩香が教室の外に出たときに、一人の女生徒が追いかけてきて話しかける。同じクラスの館田という大人しい子であるが、ちょっと訳ありの連中と混ざっていることが多く気になっていた。

「あ、あの。日向さん……」彩香は立ち止まって振り向き、「館田さん、なにか?」と応じる。


「そ、相談があるの。で、でもここでは……」

「ふーん。じゃあそこのテラスに行きましょうか」

 3年生の教室は3階であり、階段の横に外に向かったテラスがある。そこで相手を向いて、柔らかく話を受けようとする。彩香としては、このようなケースはいくつか経験をしており、いじめに遭おうとする生徒を救った記憶がある。


「それで、なにかな?」

「ええと、クラスの皆川さん、私の近所なの。それで、仲間に入れとうるさくて、断れ切れなくて。それでも、嫌なことをいろいろ命令されるので、思い切って仲間から抜けると言ったの。そしたら、最後だから日向さんを呼んでこいって……」


「ふーん、館田さん。それを聞いたら私が思いっきりやばいということは分る?」

「え、ええ。でも護衛がいるような日向さんだったら……。私、私もう嫌なんです。あの柄の悪い連中の仲間なんて。ママからも叱られて。ええーん」

 そう言って声を忍んで泣き出す。その様子を、廊下を通る生徒が覗いていく。


『あまり状況は良くないわね。まるで私が虐めているようじゃないの。嘘ではないようだし、ちょっと見捨てるのは後味が悪いわね。これは防衛省が恐れている状況ではないし、学校の構内だから護衛の只野さんは呼ぶわけにいかないな。まあ、中学校の不良連中だったら、大したことはないでしょう。

 本当は教師を呼ぶのが正解なんでしょうが、どうもここの教師連中はあのくず連中に知らせかねないから、後でひどいことになりそう。やばくなったらアラームもあるし、兄さんから渡された”あれ”もあるし、最後のご奉公よ。大丈夫、よし!』


「解った、館田さん案内しなさい。あなたもそれなりの覚悟をしなさいよ!」

 決然と言う彩香に、涙の溜まった小動物のような目を瞬いて、館田は今更ながら言う。

「え、行ってくれるんですか?あ、危ないかもしれませんよ」

「今さらながらよ。あなたは、あの連中と縁を切るんでしょうが。連中に勇気をもって宣言しなさい。いくよ!さあ先に!」

 威勢よく言う彩香に巻き込まれて、館田も涙を拭いながら前を向いて先導する。


 場所はテンプレの体育館裏である。

『おう、おう。たかが女子一人に集めたね』

 彩香が思うように、にやにやして待っていたのは、同級の悪というほどでもないが、小物悪(?)の女生徒と2人と、男子生徒3人であり、そのほかのメンバー6人である。


 ひと際目を引くのは、身長が180㎝を超えてがっちりした体格の、清水とかいう中学の番長(笑)である。浅黒い顔色の彼は、もっぱら強さを求めて他校の生徒とのバトルを繰り返しているとの噂だ。あまり虐めなどとは聞いていない。また彩香との接点は殆どない。


 だが、相手は彩香のことを知っており、すれ違った時、最初は睨んでいるような目つきだったが、彩香がにっこりして丁寧にお辞儀をしたら、慌てたような表情でそそくさと去って行った。色黒のためよくわからなかったが赤くなっていたのかも。その後は、顔があうと彩香は軽くお辞儀をして、彼も軽く手を挙げる間柄だ。


 だから、クラスでその種のグループが彩香相手に、強硬に出てこないのは彼のお陰かなと、ひそかに思う彼女であったが、それだけにここに彼が来たのは意外で、残念だった。


 しかし、その横にずいっと出てきた三白眼の男子生徒をみて、『あら、これはやばいわ』と思ってしまった。名前は白根と聞こえているが、狂犬のような奴で、だれかれ構わず突っかかっていき、徹底的に相手を痛みつける性格らしい。悪いことに、兄が暴力団にいるらしくその威を借りるという狡猾さもある。


 清水には敵わないということだが、穏やかに収まりそうもない。覚悟を固めながら、装備を確認する。スカートのポケットから手を突っ込んで装備を確認しつつ、同じクラスの館田に命じたという相手に言う。

「ご要望に応じてやってきました。佐口さん、これで館田さんは最後の貴女の要求を呑んだわけだから、今後は縁切りよね」


「ふん、余裕だね。その余裕がいつまで続くか、み……」

 派手な化粧の佐口が憎たらし気な表情で言うが、彼女が言い終わらない内に、狂犬中根が彩香に駆け寄っていきなり殴りかかる。


 彩香は、すでに涼に教えられ訓練された『平静』ゾーンに入っており、動揺することなく、半眼で油断なく相手を全体としてみていた。だから、中根が飛び出し殴り掛かったのも把握しており、日ごろの『運動』の成果による滑らかな動きで、すいっと一歩下がって振りぬかれたフックを避ける。


 そこには足を開いて大振りした拳を振り上げている相手がいる訳で、彩香は『運動』のメニューにもある、前蹴りで相手の股間を蹴り上げる。体育でサッカーをすると、ボールを50m以上飛ばす脚力は強烈である。その足の甲に、ぐにゅっという感触を感じて、おもわず眉をしかめたが相手はそれどころではない。


 勢いに後ろに飛ばされた中根は、受け身もならず後頭部を地面に打って悶絶してしまった。見ている者達が唖然とする中、「ワハハハハ」思いっきり大きな笑いが響いた。見ると、腹を抱えて笑っている清水だ。


「これは愉快だ。くそ生意気な中根もこれでぐうの音もでないだろうよ。チンピラが兄貴にいるだけで、調子に乗りすぎだ。いいか、お前らも、その子も日向もこれで終わりにしろ。それと、この狂犬につるんであるくのもやめろ。おれが許さん。

 白根を見てみろ、女の子の不意をついて簡単に躱されて、金玉を蹴り上げられて。これで、やり返すようなら男じゃない。いいか分かったか!。中根に同調したら許さんぞ」


 そう言って凄む中根は、まさに『番長』そのものだ。

『それも正義の番長というやつね』

 彩香は思っていると清水から声がかかる。

「それにしても見事なものだな。全く動じずに全体に目を配りながらだ。相手の動きを見極めて必要最小限の動きでパンチを避けて、相手のスキをみて蹴り上げる。なかなか出来ることじゃない。なにか、格闘技をやっているのか?」


「いえいえ、とんでもない。でも兄に教えてもらっている体操にそういう動きがあるのと、動じないような気持の切り替えを練習しているのよ。でも、気絶しているのは脳震盪だと思うけど、大丈夫ですかねあそこ?」

 彩香は、気絶している中野の股間を指す。


「ハハハ、大丈夫だ。弾力があるからあのくらいじゃ潰れん。潰れたやつでも半分残っていれば機能は残るよ。こいつはそっちの方では質が悪いと聞いているから、世の女のためには本当は完全につぶした方が良かったと思うぞ。

 気にすることはない。ところで、誰も気絶したあいつに近寄らないというのは、奴の日ごろの行いのせいだよな」


 そう言って清水番長は、皆を見渡して彩香に去るように言う。

「ああ、日向、それと一緒に来た子、もういいぞ。あとは仕舞いしておくからな」

 その声に、彩香は館田を見て頷き清水に向かって丁寧に頭を下げて、館田も慌てて頭を下げるのを見て言う。


「今日はありがとうございました。清水さんのお陰で助かりました。思うにここに来たのは軽率でしたし、行動も後先考えないとんでもない行為でしたが、清水さんお陰で丸く収まりました。では後のことはお任せして、失礼します」

「お、おお。そういわれると照れるなあ。まあいいものを見せてもらったよ。あとは任せておけ」


 彩香は本音で軽率だったと後悔していた。あの時、中野を蹴り倒したはいいけど、清水の介入がなければ、皆が襲いかかってきただろう。兄からもらった“あれ”があるから、全員を気絶させることはできただろうが、その後の始末がどうなったか。多分学校を挙げての大騒ぎになっただろう。


 その意味では、清水の介入は有難かった。多分彼は私を呼び出すという話を聞いて、酷いことにならないように立ち会ってくれたのだと思う。

『あれはあれで、あの頼もしさからすれば、秀才タイプと反対だけど立派な人材だよね。今後のコースについて調べてもらっておこう。兄さんに今日の報告をしておかなくちゃ、叱られるけどね。母さんには絶対秘密ね。知られたら、当分外に出して貰えなくなるわ』


―*-*-*-*-*-*-*-*-*-


 父の隼人は、今日は会社の送別会である。千葉の地下鉄工事の現場の送別会はすでに終わり、本社の建設事業部の施工管理部の会になるが、異例なことに前島建設の社長である前島健太朗が出席している。それもあって、普段は使わないホテルの宴会場で出席者40人が出席している。


 会社の規定では、こうした会は3千円が限度で会社負担であるが、今回は異例の3千円が自己負担になっている。乾杯の後、45歳創業者一族の社長が挨拶に立つ。

「ええ、日向隼人君は、入社以来21年各地の現場を担当し、今ではわが社トップの現場代理人であります。その彼について、今般防衛省からたっての招聘の要請があり、わが社も断腸の思いで受け入れることにしました」


 社長の言葉に隼人は『嘘つけ。受注に繋がるということで喜んで受け入れたくせに』内心はそう思っていたが、神妙な顔で聞いている。実際、防衛省はだいぶ会社には飴をぶら下げて申し入れたらしい。自衛隊関係の資材調達や建設を行う防衛施設庁は、結構特殊でいわゆる公開入札などはやらない。


 これは、防衛上の秘密保持のためということにしているが、単なる口実であることも多い。だから、割に発注者が恣意的に業者を選択できる余地があるのだ。だが、会社も何で隼人が防衛省にノミネートされたかはっきりは知らないが、『重要な開発のキーマンの家族の安全を守るため』と言われている。


 ということを防衛省関係者からささやかれて、キーマンは社員である隼人本人ではないはずだし、奥さんも関係ないはずだ。そうすると高校生の息子かな。そのように防衛省から話があって、社長室で話していた社長と建設事業部担当の岩瀬常務、営業本部担当の鹿山常務は頭をひねったものだ。


「まあ、断れないとしても、日向君というのは事業部の評価はどうなのかな?」

 その話会いの中で社長が岩瀬常務に聞く。

「優秀ですね。腹も座っているし、自分の頭で考えられます。将来は会社を背負うレベルの人材です。しかし、覚めているところがあるので、まあ可愛げがないと見做されがちです。かなり惜しい人材です」


「まあ、そうでしょうが、どうも防衛省は間もなく、アメリカからの調達予算を大きくに減らして、国内生産品調達の予算を大幅に増やすようですよ。うちは、今まで余り受注がなかっただけに、施設庁長官まで出てきての話ですから、確度が高いので会社としては大きいですよ」


 そう言う営業の鹿山常務に隼人の上司に当たる岩瀬が尋ねる。

「鹿山常務。それにしても、行く日向君の待遇がどうなの?彼が不満を持つようだと将来トラブルの元だし、僕も上司として気にかかるし」


「それは、大丈夫のようですよ。待遇としては、参事級ですからうちより完全に上です。さらに、先ほど言ったように国内の建設が大幅に増えるので監督官が欲しいのは事実です。

 はるかに広範囲かつ規模の大きな仕事を統括するようになるでしょう。それでも、基本的に自分で手を下すことはないので、彼がやっていた現場よりきつくはないと思いますよ」


「参事官ですか!私が代わりたいくらいですね」

 岩瀬常務が笑う。


 送別会であるが、建設系の荒っぽい連中に飲まされて、少し酔った隼人はトイレに立った。会場から出た所で、人がいるなと意識した途端にプシュという音がし、胸に痛みが走った。とっさに胸をみると針のようなものが、刺さっている。


『撃たれた!麻酔銃という奴だ』

 隼人は護衛の宮入からのレクチャーをとっさに思い出し、その針を抜いて捨てる。『しかし、すぐには効かない。まずアラームだ!』

 隼人は腕時計型のアラームを慌てて押し、先ほど意識に残った人を見る。そいつは「やった」という顔でニヤリと笑っている。

 隼人は怒りとともにとっさに突っ込んだ。


 今でも時々プレーをする、ラグビーのNo.8の突進だ。ごく普通のスボンとブレザーの大柄の男は、隼人の突進を受け、後ろの壁に激突して頭を打ってクタッとなる。

 そこに、その男の仲間らしい2人の男が駆けつけてきて「この野郎」と叫び蹴ろうとするが、隼人はとっさに起きあがりその足を掴み、持ち上げ無防備になった股間を蹴り上げる。


 しかし、薬に酔いもあってそこで限界であり、くたっとなろうとする隼人を、最後の男がブラックジャックで殴りつけようとする。しかし、「待て!何をしている。警察だ!」と叫び一人の男が駆け寄ってくるのを見て逃げる。

 それは隼人の護衛の宮入であった。彼は逃げる男は放っておいて床に崩れた隼人を抱き上げる。

「日向さん!しっかりして下さい」


 隼人はうっすら目を開き、「み、宮入さん。ここを麻酔銃で撃たれました。あ、あとはお願い」と言って目を瞑ってしまった。宮入は胸を開いて針が刺さった傷跡を確認して、他に異常はなく眠っているだけであるのを確認するうちに騒いでいた酔っ払いが集まってきた。


「私は、防衛省の警備部の宮入と申します。この日向さんの警備を担当しています」

 そう言って、宮入は集まって来た人々に身分証明書を見せる。その後頭を打って気絶している男と、鼠径部を蹴られて悶絶している男を見張るように頼んだ。また、逃げた男の捜査を警備部に依頼して救急車を呼び、隼人を防衛省の病院に送り込んだ。


 この騒ぎで、隼人の同僚であった前島建設の人々も、隼人とその家族が置かれたいささか危ない状況を理解することができた。隼人は、少し頭痛が残ったものの、翌日には退院して体調には問題がなくなったが、会社の皆に迷惑をかけたことを謝ることになった。



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