4-7 涼の資源探査3
これは間違って消去した作品の復活版です。
宜しくお願いします。
マリッサ・ラズベルは、地方局の人気アナウンサーであり、濃褐色の肌色に黄色ベースのスーツを着ている。彼女は、画面に向かってにっこり笑ってしゃべり始める。
「只今より、緊急記者会見を始めます。これは、ここココポに来ておられる、ネンゴ鉱物大臣の要請によるものです。また、皆さまお馴染みのネゴンゴ州知事もご一緒されています。今日の会見の内容は資源に係わる大変良い話だと伺っています」
そのように言って、順次座っている2人を画面に向かって紹介し、州知事に話を振る。
「ではネゴンゴ州知事、お願します」
「皆さん、こんばんは。お馴染みの州知事ネゴンゴです」
56歳のネゴンゴは半白の頭を軽く軽く下げ、片手を挙げて話を始める。
「本日は我が東ニューブリテン州の皆さんに、大変喜ばしい話をすることができます。今日、日本から地下の資源を探査できる探査スカイカーが到着しました。これは、電磁波を放射しつつ空中を飛ぶことで、その下の地面の地下100m程度までの資源、例えば金や銀、銅などを探ることができます。さらには、その機能によってその鉱床の広がっている範囲、鉱物の種類、その鉱石の金属などの含有率まで知ることができます。
そして、今日の昼に、着いたばかりの探査スカイカーに乗ったネンゴ大臣が、その機能を使って大発見をしました。これは、新しい探査機の機能を使っての荒っぽい測定の結果です。ですから大体の数字と考えて下さい。その調査した鉱床の場所はこの図のここ、西ニューブリテン州との州境から10㎞ほどの位置で、ウラウン山のふもとです」
ネゴンゴは、持っていたニューブリテン島の図を広げて、その1点を指さし、説明を続ける。
「結果を申します。ただ、先ほど申し上げたように現時点での荒い測定結果による計算です。それは、銅の鉱床でありまして、鉱石の量は9億㎡であり、金属として5,900万トンになります。なお、昨日の銅のインゴット価格は2万USドル/トンを超えています」
そう言って黙る知事に、そのスタジオにいたジャーナリスト10人ほど、様々な関係者10人ほどはピンときていないようで、ポカンとしている。
しかし、一人がスマホを取り出して計算し始め、画面を見て叫ぶ。
「約1.2兆ドル!」
それを聞いて、慌てて半数ほどが計算をして、驚いてその数字を見つめる。それを見て、してやったりと片頬に笑みを浮かべた知事は話を続ける。
「そうです。金属としての価格は1.2兆ドルです。ですが、無論採掘の費用や精錬の費用を要します。そう我々は精錬までやろうと思っていますので、その費用を含めて申しましたが、そうした費用が必要です。そして、精錬までやると鉱石で売るより遥かに高く売れます。加えてその経費は、基本的に国内で使われ皆さんの収入になるのです。
だから、それらの費用の多くはこの州に落ちます。どれほどの雇用、消費が生まれるか。話が半分としても大変なことです。そうしたチャンスをもたらしてくれたのが、ジョン・ネンゴ鉱物大臣です。彼が、コーディネイトして日本から探査チームを呼び寄せて、自ら試験的に探査した結果が先ほどの成果です。ではジョン・ネンゴ鉱物大臣。後をお願いします」
笑顔で、マイクをネンゴ大臣に渡して座るネゴンゴ知事に盛大な拍手が沸く。
「皆さん。こんばんわ。今日の放送は全国ネットだそうですので、私は鉱物大臣として全国の皆さんにお話をさせていただきます。さて、さきほど州知事のネゴンゴ氏から話があったように、私は日本のある会社と交渉して、わがPNGの資源探査をお願いしました。
幸い、彼らは資源探査を試験的に行うということで、我々は通関などの便宜供与を行っているのみです。ただ、実際に発見があった場合には、その資源の値打ちの1パーセント程度が向こうの権利という約束です。昨日、私とネゴンゴ知事は、ハイパーライナーの小型機版でやってきた、その日本の調査隊の先乗り隊のリーダー達を歓待しました。
さらに私は、遅れて今朝やってきた探査スカイカーによる試験的探査に同乗しました。今日の調査は、昼ごろ探査を始め、まずは2時間ほど地質的に有望と考えられる地点の上空を飛んで、探査を行いました。途中15ヵ所で鉱床の検知が出来ました。ですが、いずれも規模が小さく商業ベースに乗らないということで無視しました。そして、先ほど知事が示した地点で大当たりを引いたのです。そこでは、当該鉱床の長さが3㎞を越え、厚みも100mほどのものということで、再度調査を行いました。
その結果を申しますと、鉱床は面積約5㎢に渡っており、調査点はやや少ないですが、層の厚さの平均が180mということで、容量は9億㎥になります。さらに、鉱床は銅に間違いなく、これも測定数は少ないのですが平均重量比2.5%です。
ですから、鉱石の比重は2.6程度ありますので、銅金属として5,900万トンになります。
ただ、この計算のベースの測定は荒っぽいものですので、数字は増減すると思います。さらに、現在の価格ではさきほどネゴンゴ知事が示した金額になりますが、これは相場によって異なってきます。しかし、この調査結果については、自ら係わった者として私は信じています」
そこで、ネンゴ大臣は言葉を切り、画面を通して視聴している人々に呼び掛けた。
「本日発表した内容は、一機の探査機によるほんの半日の結果です。今後、我々はニューブリテン島のまだ2/3、さらにニューギニア島の我が国領土の全てを5機の探査機で調べます。今日の結果はまぐれの大当たりだったのかもしれません。
しかし、確率的に言えば、今後も今回程度の結果が出るほうが普通なのです。我々は今後1ヶ月にわたり調査を行います。是非大いに期待して下さい。また、こうした資源については、我々は過去海外資本に開発を任せ、精錬も行っていませんでした。
だが、今回の発見のみの権利による利権で、自国での採鉱や精錬を行うための投資の原資は出来たと思います。ですから、私は、是非ともこの発見を、我が国が工業国になるための基礎としたいと思っています。そのためには、適切な組織に人材が必要です。
ですから、今ある組織を抜本的に見直し、教育制度の改善も行って我が国が近代国家になるようにしたいと思います。我々ははっきり言って、遅れた存在でした。また国は治安が悪く貧しい人々が暮らしている遅れた国でした。これを打破して豊かになるためには、原資つまりお金が必要です。
私は今回のもののみでは十分ではないと思っています。ですが、今後の調査によってさらに資源を積み上げれば、わが国が充分豊かになる程度のお金は得られるでしょう。そして、そのお金を賢く使えば我が国も他に尊敬されるような国になれると思っています。どうか、皆さん私のこの言葉を噛み締めてください」
そのスタジオにいた者達は、ネンゴの話に熱心に拍手はしたが、真面目な顔で考え込むような様子であった者も多かったという。
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この放送は、PNG国内は無論、世界中に大反響を呼んだ。ネンゴ大臣の大臣室には、PNGのみならず世界中から面会要請や連絡が殺到し、秘書が対応できず雲隠れしてしまった。仕事のできるものは、ジャーナリストを中心にココポにやってきて大臣に会ってインタビューをしている。
無論、ネゴンゴ知事はニューブリテン島ベースで同じような立場に立った。その中で、日向クリエイティブの調査チームは、ネンゴ大臣らの動きに拍手を送りつつも、涼も含めて探査活動に励んでいた。だが、東京本社には世界中から探査の依頼が殺到して、それの対応をした社長の綾子が怒りまくっていた。
「なんなのよ。英語の電話は美恵ちゃんが大使館を通せと言ったら、大使がもう12人私に電話をかけてきたし、8人も大使館の連中が押しかけてくるし。私は関知していないっていうのよ!」
綾子の剣幕に秘書の成瀬美恵が穏やかに返す。
「ええ、ですから社長。資源探査部は現在全員がPNGに行っていますと返事をしましたし、桐山さんのメールアドレスに問い合わせるように申しています」
美恵の言葉に、綾子が目を細めて皮肉交じりに言う。
「ふーん。美恵は涼にやさしいね。涼のアドレスを教えればいいのに」
「ええ、勿論、私は涼さんに対して一番やさしいですよ」
戯言は置いておいて、綾子は真面目な顔になって言う。
「それにしても、PNGの今度見つけた銅資源は、1.2兆ドルだって言ってたわね」
「ええ。すでに規模と鉱石の含有率は、調査密度が少し荒いですが調べています。ですので、現在の相場では大体正しいでしょう」
「産出額の1%程度というと、全部で1兆3千億円を20年で採掘すると年間650億円か。大したことは、……。あるじゃない!本当にそれが取り分?」
「そうですね。わが社の取り分です。それに、まだまだ、PNGのほんのわずかしか調べていません。これの数倍いや10倍になってもおかしくないですよ」
綾子がジト目で美恵を見て恨めし気に言う。
「あなた、美恵ちゃん。ちょっと社長の私への労わりと尊敬に、なにより愛が足りないのでは?」
「でも、社長。1%をなにも受け取る必要はないと思います。あるいは、受け取っても、その国の何等かの事業に寄付すればよいのですよ」
「まあ、確かにそうだね。向こうだって、喜んで払いたい訳ではないでしょうからね。でもこれを世界中でやると大変なことになるわよね。うーん。そうだ!もう資源の%取りは止めて、手間賃と機材費だけ貰うのよ。基本的には相手国から人を出させて指導のみする。
機材は大体リースね。そうしたら、会社の規模も大きくなるし、あまり大きな金は入って来ないし、いいんじゃない?」
「そうですね。涼さんも別に儲けようとは思っていないのです。そして相手のために、資源を見つけてやりたいということですから、今言われた方法でよろしいと思います」
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ネンゴ大臣は、首都のポートモレスビーの大統領府に呼ばれて、その執務室にいる。部屋の主である大統領のレビン・オスワクに首相のケン・オクズレ及び、大統領の腰巾着の財務大臣キース・カモイラも同席している。
「どういうつもりだ、ネンゴ。あれは?」
オクズレ首相が怒りの表情で怒鳴るように言うが、ネンゴはしゃあしゃあと言い返す。
「あれ、って何でしょうね。何か怒っているようですが、なにか私がしましたか?重要な調査を監督しているのを呼び出して、なにか喚問という言葉も使っているようでしたが」
「無論、私に偽りを申した件だ。君はその銅鉱床をまだはっきりしないという表現を使ったが、放送では確かなものだと言ったな。また、あれほど重要な発表は大統領府からするべきであった」
「確かなものだとは言っていませんよ。方法自体が新しいものと言いました。新しい方法が確かである訳はないでしょう。また、数値もまだ変わる可能性があると言いました。まあ、そのようなことはどうでもよろしい。
私が2日前に発表したのは、あなた方に先に言えば、必ず隠蔽して自分達の取り分を考え、多分中国にでも売りつけることになる、と思ったからです。違いますか?」
「なんという無礼なことを!大統領閣下に対して何という言葉を!」
カモイラ財務大臣が太ったほおを振るわせて言うが、ネンゴは冷笑して返す。
「ふん、違うとは言わさんぞ。私から連絡したら、必ず私から取り上げて、金をくれる外国企業に売り渡したはずだ。カモイラ、お前には前科がある。アクラの件だ!
本来、国に入るべき金が、お前らの交渉のお陰で、目腐れ金になってGRY社に利益の大部分を取られてしまった。お前らはその時いくらもらって、今は年間いくらもらっているんだ?」
「「「ぶ、無礼な!」」」
大統領はじめ3人とも顔を真っ赤にして怒鳴るが、ネンゴな尚も言う。
「今回はそうはいかんぞ。すでに銅鉱床のことは、国際的に明らかになっている。街に繰り出して踊っていた人々を見たか?あれに対して、下手なことをすれば、お前らの命はない。それに、これを見ろ」
ネンゴが、ブリーフケースに入った書類を、机の上にばさりと投げる。書いている文字を見た、カモイラが顔色を変えて取り上げて読むが、掴んだ手が震えている
「これは、アクラの件でのお前ら及びその一党の金の流れだ。本来国に30億ドル入るべきが、10億足らずだ。そして、お前らが合計約5千万ドル取っている。安売りしてくれたものだな!」
「うむ。衛兵!入ってこい。ネンゴ大臣が乱心だ。逮捕しろ!」
オクズレ首相がドアに向かって叫ぶがネンゴは平気だ。
「無駄だ。この資料をくれたのは、情報局長のジミー・アナーラだ。それに、これはもうマスコミに渡っている」
そして、ドアを開けて入って来たのは、まさに情報局長のジミー・アナーラであった。冷たい目で見下ろされた3人は、一旦立ち上がったがガクリと膝をついた。




