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転生者が変える人類の近未来史  作者: 黄昏人
第2章 争いの顕在化と変化する世界
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2-12 北方領土返還とシベリア共和国建国

この作品は間違って消去した作品の復活版です。

 こうして、シベリア共和国建国はサリミカヤによって宣言され、首都はハバロフスクとなった。ハバロフスクは北緯48度で東経135度であるから北海道の最北端の45度より北であるが、日本標準時間の明石と同じ東経である。つまり、日本と同じ時間帯ということになる。


 意外に時差というのは人の体には応える。だから、距離こそ東京から1,500㎞離れているが、航空機で行き来するなら、大した距離ではなく、行き来がしやすい国と言えよう。


 シベリア共和国建国は、2030年の11月1日に行われることになった、これは間もなく冬が来るので急いだという事情がある。10月10日建国宣言で、11月1日までの間には、すでに67ヵ国が独立を承認している。


 無論、ロシアと中国は承認していないが、先進国で国際的影響力の強いアメリカにイギリス、フランス、ドイツに日本が主導しての独立に賛同者が多くなるのは当然である。日本も無論だが、アメリカやイギリス、フランス、ドイツはサリミカヤの演説の後にそれぞれ声明を出した。


『シベリアの地は、ロシアが武力で奪ったものであり、原住の人々が望めば独立する権利がある。この地区の問題は、ロシアがその地を適切に開発して来なかったため、遅れた地方として取り残されている。一方でこの地は、寒冷であるが広大かつ資源が豊富で可能性に満ちた所であるが、ロシアにはその地を適切に開発する能力がない。そこで、我々は本来の持ち主がこの地を持つことに賛成する。

 さらに、その開発によって住む人々が豊かになり、その資源を持って人類の幸福に寄与することを手助けするつもりだ」


 概ね各国とも同じ論調であり、示し合わせてのことである点は明らかである。ロシアからみれば飛んでも理論であるが、後半の話は反論できない部分もある。ウクライナのみならず旧ソ連の国を取り戻すような努力をシベリア開発に向けよ、ということだ。


 ロシアは無論反発し、翌日にはスホーイ34戦闘爆撃機20機を送り込んできた。しかし、シベリア共和国には、アメリカやイギリス・フランスから『そら』型5機、『しでん』型30機が貸与されて送り込まれていた。『しでん』と『そら』は四菱重工が幹事会社として生産している。


 四菱重工は、7月の時点で自衛隊とアメリカやイギリス・フランス・ドイツからのみで『そら』50機、『しでん』300機の受注を抱えており、月産それぞれ2機と10機の生産を行っている。『そら』もそうだが『しでん』は機体が鋼製ということもあり、それなりの造船所であれば作れるのだから機体の製造は早い。


 しかし、肝心なのは重力エンジンと電子抽出型発電機にレーダー他の計測機器に電磁砲の設置であり、これはそう簡単にはいかない。それでも、特に『しでん』については量産体制が整いつつあり、年内には月産30機の能力に増やす予定だ。


 これ等は、極東ロシアの独立とその阻止のために、ロシアが軍事的に動くことに対する対抗する機材としてとして生産を急いでいる面がある。このように、独立宣言の前から日本として軍事的な準備も進んでいた。


 独立宣言の祝いに、ロシアが空爆にかかるのは確実と見られていたから、当然そのお迎えが必要であるのだ。その手段はミサイルか又は戦闘機しかない。しかし、極東軍はウクライナ戦争時に新型のミサイルは供出させられていたので、使いものになるものは殆どなかった。


 迎撃できる戦闘機も同様であり、支援する国が出すしかなかったのだ。その頃には『そら』は一定数揃い、『しでん』の量産体制が整ってきていた。そこで、サリミカヤの息がかかったパイロットを10名選抜して、アメリカに送りこんで訓練をさせたのだ。


 足らないパイロットはアメリカやイギリス・フランス・ドイツから有志として出した。パイロットも緊急事態ということで早めに『そら』と『しでん』に乗れて喜んだ。機材は、アメリカやイギリス・フランス・ドイツに輸出して、そこからシベリア共和国に抽出して送り込んでいる。ヨーロッパからは、直接高度200㎞に上昇してロシアを横断しているので、ロシアには検知できない。


 ロシアからの攻撃機は一旦モスクワ周辺の基地からイルクーツクに飛び、給油して再度飛び立っている。これらの攻撃機の行動は米軍に完全に掴まれていて、現地時間20時のハバロフスク上空に入る時間に合わせて『しでん』20機が迎撃に向かっている。


 スホーイ34は高度15,000mで飛んでいたが、重力エンジンを制御するAIによってその位置を完全に掴まれている。AIは時速900㎞で接近するスホーイに対して、同じ高度の15,000mを時速800㎞で迎え、武器は25㎜電磁砲を選んだ。敵は18機でこちらは20機である。スボーイ2機は故障で引き返したようだ。


 S-12号機に乗っていたシベリア共和国軍のカミヤスカ少尉は、隊長機の連絡を受けた。

「こちらS-1号、S-12 目標を確認したな?」

「こちらS-12号へ敵ボギー8を確認しました」


「よし、AIが撃破可の診断を下したら、適宜撃墜せよ。これは、爆撃を受けて死ぬかも知れない君の父母、兄弟、クラスメートを守るためだ」

「こちらS-12、了解しました。迷いません!」


 隊長のミゲルは敵機を撃つことで殺すことに、怯むことを気遣っているのだ。しかし、自分は迷わない。敵はハバロフスクを無差別爆撃するため来ているのだ。それに、この『しでん』を使う限りミスをすることはない。それはこの機の性能の良さとAIによる操縦のお陰だ。


 自分はミグ29で訓練を受けたが、何度もGで意識が飛びそうになった。そして、その中で操縦桿を必死に操ったのだ。まさに極限であったが、この『しでん』は全く違う。まず、常に1Gであり、その方向は常に床を向いている。さらに、自動車のようなハンドルがあるが、それを使うのは非常時のみだ。 

 自分の機と回りの状態はスクリーンに写されているが、状況をAIが脳波(?)で伝えてくれる。だから敵がいても見逃すことはない。


 後はAIが自分の割り当てられた相手を撃破可能の判定を下し、それに俺のGOを出すだけだ。今まで学んだことからすれば、外すことはない。銃はレールガンだから、直進性が極めて高く、しかも高空だから空気の乱れによるずれは殆どない。


『距離12㎞、敵8号撃破可能です!』AIの念波(?)である。カミヤスカは反射的に念じる。

『GO』

『了解!撃ちます』AIの強い念波が帰ってきて機体にショックが走るが、瞬間後AIが報告した。

『敵8号撃破しました、すでに敵2号撃破、敵5号撃破………』



『敵19号撃破。以上で全ての敵機を撃破しました』

『ああ、ご苦労。脱出できた敵はいるか?』

『はい、18機中6機の脱出装置が働きましたが、パラシュートが開いたのは4機のものです』

 その語尾に被せて隊長機の連絡が入る。


「こちら隊長機S-1、全機へ。敵の18機は全て撃破した。こちらは無傷で言うことはない。ご苦労だった。帰るぞ!」

「へーい、やったぜ」

 そう叫ぶ奴がいるが、あれはお調子もののガイエフだなと思い、笑みがこみあげてくる。

『生き残った』しかし苦く思う。

『敵は少なくとも14人が死んだ』


 送った戦闘爆撃機の全滅は全くの想定外らしく、その後ロシアが爆撃を試みることはなかった。しかし、イルクーツクの陸兵1万2千がその後、約100両の戦車と共に進軍を始めた。しかし、ハバロフスクまで1,500㎞の距離がある。


 その内の300㎞を進むまでに、この部隊は10回を超える『しでん』と『そら』による爆撃とレールガンの狙い撃ちを食らって、大損害を受けて引き返した。その後は、実力行使は無くなりただ放送で非難するのみとなった。


 爆撃には『そら』を使った1千㎞高空からの岩によるものがあり、安上がりで極めて効果的であることから、後半は『そら』が大いに活躍した。この岩石の積み込みにはマイティが使われて活躍しているが、このことでシベリア共和国の人々に知られ多数輸入された。


 ただ、こちらの人々は、日本の安全基準などは守られず定着した。彼等からすれば、日本のやり方は過剰安全だということだ。結果、それなりに負傷者が出て死者も偶にでたが、「そんなものだ」ということで、改める様子はなかった。


 11月1日に行われた建国式は、幸い晴天で雪は降らなかったが、暫定大統領のサリミカヤの演説のあった午前11時半で、3℃であり少々寒かった。各国の来賓も数多く、日本からは首相、アメリカは国務長官、イギリス、フランス、ドイツは外務大臣が出席したのだから気合が入っている。


 なお、高井首相は、式典後に北方領土4島の返還条約を締結した。実に80年越しの悲願であったので高井は期するものがあったが、残念ながら国内はさほど湧かなかった。それは、シベリア共和国建国が日本では大きく捉えられ、北方4島返還はその陰に隠れたという面があったためだ。


 なにしろ、寒冷地と言いながら700万㎢で日本の19倍もの面積があり、そこを領有する国が友好国になるのだ。日本国民は、近年の国内で進みつつある新技術による改革が、どのような意味があるかよく理解している。


 日本の国民は、平均的に知的レベルが高いと言われるがその通りで、マスコミもそれに応えるために、様々な面から近年の動きを伝えている。とは言え、日本人のエリートは一般人と差がないとも言われ、国など大きな組織を動かす中枢の能力が怪しいとも言える。


 しかし、すでに世界でも広まっているが、『アクティ』の効果は日本では顕著に表れてその効果が定着している。つまり、平均の知的レベルはさらに上がり、トップクラスも相応して上がったが結局差が縮まった。このため、一般国民が物事を俯瞰してみることが可能になっている。


 このことで、一部のもの、特にマスコミが世論を誘導して一定の方向に導くなどということが出来なくなった。過去において、たいしたことのない政治資金の問題を針小棒大に騒ぎ、政権交代を企てたことがあったが、近年ではこのような動きはすぐに『世論』に叩き潰される。


 この点では、インターネットの発達で、一般人も自分の意見を表明できることが、大きな要因である。結果として、施政者はより国民の意見を聞く必要が生じ、より敏感に『世論』を伺うようになった。また、マスコミすでに世論をリードするという姿勢は無くなっている。


 このような日本の世論は、自国に起きつつある大きな変化を良く把握している。例えば、日本はすでに鉱物由来のエネルギー源が不要になって、今後困ることはなくコストも大きく下がる。さらに、重力エンジンの活用によって空を通った交通が容易に可能になる。


 身近なところでは、重力エンジン駆動の(スカイカー)飛行車の試験機が運用されている。空を飛べるメリットは、道路のような一定のルートを飛ぶとしても、立体に交差できるので渋滞がないことがある。また、ショートカットが可能であるため地図上の距離がさらに縮む訳だ。

 とは言え、この実現には利用のルールの確立、インフラの整備などまだかなりの時間を要する。


 さらに、現在すでに大型貨物機のプロトタイプ機が出来て試験運行をしている。これの意味するところは、一般市民には直接関係ないが世界にとって極めて大きいことである。つまり、物流の面で地球がさらに小さくなりかつ、直線で飛べるので素直に地図上の距離がそのまま適用できる。


 加えて、現代では旅客機による移動が一般であるが、亜宇宙を通って移動する重力エンジン旅客機がすでに出来つつある。このことで、地球上どこでは2~3時間で移動できる。このことで、ますます地球は小さくなるのだ。


『だから、そういう交通手段ができて、かつ寒冷地だって電力が使い放題だったらシベリアだって、十分住めるじゃない。また何も一年中住む必要はないし、冬は帰ってくればよい。しかも日本と同じ時間帯というのもいいね。友好国、シベリア共和国いいね! それにエネルギーが満たされたら今度は資源だよ!』


 そのようなノリで、シベリア共和国の建国は日本で大きな注目を集めたが、ちっぽけな島であるとして、北方領土の返還への関心は低かった。とは言え、何で樺太も分捕らないんだという意見もあったが、経済原則に照らして殆ど意味はないとの『民意』であった。


 同時に、式典において、シベリア共和国へは日本から総額10兆円、さらにアメリカやイギリス、フランス、ドイツから合計で同額の大規模な借款と、総計1兆円の無償援助の調印がなされ、共和国国民の喝さいを浴びた。


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