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転生者が変える人類の近未来史  作者: 黄昏人
第2章 争いの顕在化と変化する世界
18/43

2-2 核兵器の無効化実施(1)

この作品は間違って消去した作品の復活版です。

 ロシアの迎撃システムの機能は西側に比べ劣ってはいたが、それでも国の全方向から殺到するミサイルの多くを探知した。しかし、ロシアの軍は西側が予測したように、官僚的で怠惰な組織になっている。その原因は、ウクライナ戦争の結果100万以上の死傷者を出して、実質何も得られなかったという無力感が大きい。


 ボロドフ大統領の声明に伴って、軍に対しては大統領直々の激が入れられ、全核ミサイル及び迎撃ミサイルの発射準備に加えて、高射砲等の準備も命じられた。ロシアは核弾頭を5千発以上持っていることになっている。しかし、実際に機能するのは精々半分以下と見られている。さらに、中には戦術核や爆弾もあり、ミサイルの弾頭で他国へ打ち込める機能を持つものは1千発に満たないと想定されている。


 また、軍中央で把握している限りで、実際に発射できるのはその半数であり、各基地の操作員が使えると思っているのは、そのまた半数である。つまり、他国の脅威になり得るのは2百数十発のミサイルということで、本当の脅威は、20の基地に配備した、新しい極超音速ミサイルに積んだ100発余りである。


 それでも、これらの弾頭は1~5メガトンであるので、都市に落とされたら大変な被害が生じる。今回のミッションにおいて米軍とNATOは役割を分担している。NATOも使っている米軍のトマホークは最大2,500㎞の射程距離がある。


 だから、米軍は日本海とインド洋へはミサイル駆逐艦を配備し、氷が解け始めた北極海には潜水艦を配備して中央から東よりのロシア本土を狙っている。NATOは、欧州本土とトルコの地上基地からモスクワ周辺の基地を中心に狙っている。


 また、問題はロシアの地上基地のミサイルのみならず潜水艦、海上艦に積んだミサイルである。しかし、人工衛星により地上の写真が撮り放題な現在において、海上艦は完全にその位置を掴まれている。このため、核無効化の対処は地上基地と変わらない。


 問題は潜水艦であるが、現在ロシアの戦力になる112隻のうち、航海に出ているのは12隻に過ぎない。予算不足のロシア軍にとって、多大な経費を要する潜水艦の航海は最小限になっている。ボロドフ大統領の声明に伴って慌てて潜水艦は出航しようとしたが、物資の不足のために実際に出航できたのは2隻である。


 米軍とNATOは、ロシアの核兵器搭載可能な潜水艦と艦船については、過去1年間全てにコードネームをつけてその行方を追っており、データベースを構築している。彼らは、航空機による攻撃については、ウクライナ軍にも劣ったその実力からすでに脅威とは見ていない。


 結局、55ヵ所のロシア本土の軍港を含む基地と、33隻の海上艦、12隻の潜水艦が処理すべき対象となった。潜水艦については、浮上するごとにマーキングされており、その大体の位置は把握されているが、最後まで数隻は脅威として残ると目されている。


 これは、潜水艦が目標に近い位置まで接近してミサイルを発射した場合には、1型や3型は対処が困難であり、地上配置で探知と同時に機能する2型のみが頼りになる。だから、潜水艦に積んだ核は危険が残る。


 一方で、本土の核兵器を『処置』した場合、これは人々が殺されるわけでもなく、国土が荒廃するわけでもない結果となる。しかし、すでに通常戦力の凋落は隠せない今、核という戦力を失うことになる。その事態を受けて、復讐のために潜水艦から核兵器を撃ち込むような理性のない行動はしないという意見が強い。


 これは、すでに守る術のない無力な国が、敵とした多数の国民を虐殺すれば、どういう結果になるか考えればそういう行動はできないということだ。だが悪名高き政治将校が配備されているロシアでは、一抹の不安はある。


 これらのロシアに向けて配備されたトマホークミサイルは、2030年4月12日、ロシア時間12時に一斉に発射された。各対象に対して2~4発を撃った。そのミサイルの群れを、ボロドフ大統領が知ったのは1時間後である。その時点では、1/4のターゲットの核弾頭はすでに無力化されており、狂乱したボロドフは全部のミサイルの発射を命じた。


 しかし、彼の命令により発射の準備が整っていたのは、彼が当面の目標と言った、ドイツとフランス、イギリスにイスラエルと日本相手の各2発であった。弾頭は5メガトンである。


 一方で、ポーランドの国境に近い距離のEU向けと、トルコの国境に近いイスラエル向けのミサイルの弾頭はすでに無効化されていた。さらに、日本向けも日本海に近かったために、同様に無効化されていた。

 それらの基地の者には、近傍を西側のミサイルが通過したことは把握した者もいたが、自分の基地のミサイルの弾頭が、すでに無効化されていることを知るすべはなかった。


 だから、大部分の者は多くの者を殺すことで陰鬱な思いで、少数は敵を殺せることに喜々として、ミサイルの発射を見守った。発射された10発の核ミサイルの内、発射できたのは6発であった。ロシア製の製品としては中々の品質である。しかし、内3発は明後日の方向に飛んでいき信号で爆破された。


 正常に飛んだ3発のミサイルが目指したのは、それぞれベルリンに1発、ミュンヘンに1発、パリに1発であった。迎撃側は、核弾頭が無効化されていることはすでに認識しており、目標となった国に緊急的に公表して市民の混乱を防ごうとした。


 しかし、いずれの都市も、元から社会の不安定要素になっていた移民を中心とした若者層が、不安を煽り自身も暴れまわった。そのため、商店の略奪、投石放火など合計で死者5人、重傷者25人を出して逮捕者は125人を数えた。


 しかし、迎撃の方はレーダーによる探知技術の発達と、飛散型迎撃ミサイルの配備で極超音速ミサイルと言えどほぼ迎撃可能な段階になっていた。飛散型というのは、最接近時にミサイルが破裂して、数百mの範囲で破片を飛散させるタイプということである。


 さらには、1発のミサイルに5発の迎撃ミサイルを撃ったこともあって、全てのミサイルの迎撃に成功した。しかし、合計で15発の迎撃ミサイルによっては、ミサイルの飛散による破片による被害があり建物への数百件の被害に加え、死者2名と負傷者21名が生じた。


 日本へのミサイルも同様に2発発射された。そのうち1発は発射されたが、北海道の北方沖に向かい落ちた。しかし、1発は仙台に向かっており、その対処が必要になった。日本は、飛散型迎撃ミサイルを落下による被害を恐れて採用しなかった。このために、核ミサイルへの防備は欧米に比べ劣るとされていた。


 日本では“マイティ”効果であらゆる部門での改善や開発が進んだが、それはレーダー技術とその関連技術についても見られた。従って、飛んでくるミサイルの落下点は、100m以内の範囲で特定されて早速半径500mの範囲の人々の避難誘導が始まった。


 なにしろ、1トンを超えるミサイルが秒速5㎞で落ちてきて、しかも残余燃料の爆発も考えられる。幸い現地の半分は広い市民公園であり、概ねは一戸建ての地区だったので人口密度は低い。それでも避難する住民は320人に及び、避難の混乱のさなかミサイル撃墜の報が入って避難は中止となった。


 ちなみに、日本では首相の会見以来、情報を広く開示したこともあり、穏やかな国民性もあって市民は冷静で暴動などは起きなかった。これは、被害の可能性のある対象地区が、早々に特定されたことも大きい。要は自分に影響がないとなると狼狽える理由はないのだ。


 ちなみに2029年春に最初の重力エンジンが完成された。すぐさま量産化が始まる中で、数基の既存のF4Fに積み込んで機動試験が行われた。重力エンジンと電子バッテリーが搭載されて既存のエンジンは外された。翼はどのような機動をするか見るためもあって残され、内臓の燃料タンクはそのままである。


 この機体の加速は、ジェット機の最大加速に比べ鈍いが、極めてアクロバティックな機動が可能であることが分かった。ただ、元の機体は完全な気密ではないので、高高度には登れない。その点は最大のメリットが消えていると言えよう。


「おい、長嶋3佐。どうだ、重力エンジンを備えたこの機体は?」

 航空幕僚長の宮坂空将が、機体から降りてきた長嶋3等空佐に聞く。彼は35歳で鋭い目つきの中背、筋肉質の自衛隊切ってのエースである。このため、このキメラ機体のテストパイロットを任されたのだ。


「ああ、宮坂閣下ですか。うーんこれはまあ面白いのかなあ。しかし、ドライバーとしては余り面白くはないです。なにせ『このような機動をしろ』とイメージすれば可能ならそのままやってくれます。だめならダメともイメージで伝えてくれます。それにGがかからないはむしろ頼りないですね。

 だけど、操縦は楽だから訓練は簡単ですよ。多分1人前にするに、1年はかからないでしょう。でも、空間把握の能力のある者が必要ですね。でないと、混乱してどうにもならないでしょう」


「ただ、それは君のように変態的な動きをしようと思う人間でなきゃ、そんな能力は要るまい。しかし、いずれにせよ、ブースターなど推進機をつけなくても戦闘機としても使い物になるな。どうだ?」


「ええ、最大加速が負ける点は、現時点の戦闘では問題にならないでしょう。それより新しい機体による高高度性能が効きますよ。このバッテリーによって加速が3時間程度続けられますからね。地球の周回でも1時間足らずで簡単にできます。それでこれに合わせた機体は作っているのでしょう?」


「ああ、半年前から作ってあと、3ヶ月で出来る。これは電子抽出型の発電機を積んで、切った張ったが簡単にできる鋼製の機体だ。また、トイレはあって、2日位は問題なく暮らせる生命維持装置は設置した。どうだ、これでロフテッド軌道のミサイルを落とせるか?それで言えば、極超音速ミサイルもそうだが」


「ふむ。ミサイルの迎撃ですか?まあ核は無効化しても、ミサイルは落ちてきますからね。秒速5㎞を超える速度の1トン越えのミサイルに残った燃料、また場合によっては高性能爆薬か。核爆発ほどではないですが、とんでもない被害がでますね」


「ああ、それでさ、亜宇宙に昇って速度を合わせれば、落とすのは簡単だろう?」

「うーん。まあ、そうかもですね。機体が出来て乗ってみてからですね」


 重力エンジン装備を最初から計画したプロトタイプ機は『そら』と名付けられ、2030年の4月の時点で、すでに6ヶ月の試験飛行が行われている。これは、長さ10m、幅4mで胴体の高さ3mの大きさで、地上にある時は高さ調整のできる鋼製のそりを使う。25㎜高張力鋼板に覆われたこの機体は総重量65トンに達する。


 これには、重力エンジンを備え、10万㎾の電子抽出型発電システムを積んでおり、パルス噴射機を備えている。パルス噴射機とは、重力の働きが弱い場合に、積み込んだ3㎘水を噴射して推力を得る装置であり、毎秒3㎞の水の噴射により10トンの推力を得る。F=MC^2であるので、噴射速度が高いほど同じ質量で大きな推力が得られるのだ。


 この噴射器を使うことで、重力の弱い宇宙空間でもある程度自由に運動が可能である。この噴射器による最大推力の噴射の持続時間は2時間が限度である。とは言え、これはあくまで予備扱いであり、基本的には重力エンジンでの運転を行う。


 待機状態に入っていた長嶋3佐に連絡が入ったのは、4月12日の16時10分ボロドフ大統領の声明の直後である。

「長嶋3佐、行ってくれるか?」

「ええ、覚悟はしていましたから。コパイロットは置いていきます。時間はどう考えても半日はかからんでしょう。情報のために哨戒機のE-2Cは飛ばしてくれるのですよね?」


「ああ、現在はP-1が飛んでいる。E-2Cは今命じたからすぐに離陸するよ」

「では、管制よろしく、敵に高度と速度を合わせて接近すれば、撃墜は難しくありません。機銃でも撃墜できますよ」


「まあ、ミサイルを使ってくれよ。04式改で宇宙空間でも間違いなく機能する」

「はい、行ってきます」

「長嶋3等空佐の健闘を祈る!」


 長嶋はAIに命じて、どんどん高空に上昇する。敵ミサイルは、多分5千㎞程度まで上昇するはずだ。当面、その高度まで昇って、速度を殺さないように円弧を描きミサイルに軌道を同調して1㎞以内に接近して撃ち落とす。E-2Cから敵ボギー1,2の軌道の信号が入り始めた。


「ああボギー2は明後日に逸れたか。となると残るはボギー1だな」

 長嶋は、マイクのスイッチを切った状態で声に出して言う。高度を合わせて、ボギー1に向けて円弧を描いて接近する。離陸して2時間後、レーダーに捕らえていたボギー1が、スクリーンにミサイルとしてのその姿を現す。


「こちら『そら1号』、敵のボギー1と速度を同調した。距離は0.8㎞、只今から撃墜する」

 マイクにしゃべると声が返って来る。

「こちらE-2C-2号。今から撃墜、了解した」


 それを受けて、自らそら1号と認識しているAIに呼び掛ける。

『では、そら1号。排除してくれ』

『イエス・サー。排除します』


 このAIはいわば念話でコミュニケーションが出来るが、会話を交わすほどの知能はない。しかし、イメージを伝えることで命じられるので細かい指示は不要である。有機電子脳であれば、会話も可能で明確な人格めいたものが現れるという。


 軽いショックがあって、直径15㎝のミサイルが火を噴いて飛び出だしていく。それは、すぐさま直径40㎝、長さ4mのミサイルにまともに当たり爆発して、相手の中心部をばらばらにする。本当は当てなくても近接信管がついているので、最接近時に爆発してその爆発力で破壊することができる。

 しかし、1㎞以下の距離であれば、胴体に当てることもできるほどの精度だなと思う長嶋であった。


「こちら長嶋、今敵ミサイルを破壊した」

 長嶋は緊張から解放されて脱力しながら報告した。

「こちらE-2C-2号、敵ミサイル破壊完了を了解した。そら1号、長嶋3佐へ、帰り付くまでが任務だぞ。気を抜くな」

 E-2C-2号の管制官は、長嶋の先輩の瀬山2佐である。


「はい、無論。でも、こっちには『そら1号』という気を抜くことない相棒がいますから」

「うん、AIとは言え、イメージで意思が伝わるらしいな、亜宇宙での最初の任務ご苦労だった」

「有難うございます。では帰還します」


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