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第9話:司徒・王允の呼び出し! 若き龍の才覚と「龍の血脈」の謎

第9話:司徒・王允の呼び出し! 若き龍の才覚と「龍の血脈」の謎


洛陽に入って数日。的斗たちは、周倉の古いツテを頼って場末の宿に身を落ち着け、情報収集に努めていた。洛陽の荒廃は想像以上で、董卓の悪政に対する民衆の不満は日に日に高まっているようだった。


(このままじゃ、本当に国が滅びちまう…何かしないと…でも、今の俺たちに何ができる…?)


的斗は焦燥感を募らせるが、具体的な行動を起こせずにいた。

そんなある日、的斗たちの宿に、一人の男が訪ねてきた。身なりの良い、いかにも役人といった風体の男だった。


「趙子龍殿とお見受けいたします。我が主、司徒の王允様が、是非ともお会いしたいと申しております」

(王允…!三国志演義で、連環の計を仕掛けたあの王允か!)

的斗の心臓がドクリと高鳴った。歴史の重要人物からの、突然の呼び出し。これはチャンスか、それとも罠か。

「司徒様が、俺のような若輩に何の御用で…?」

的斗が尋ねると、男は意味ありげな笑みを浮かべた。

「常山より来たりし若き龍が、屈強なる三人の手下を従え、近頃洛陽の巷を騒がせているとの噂は、司徒様のお耳にも達しております。何やら、その武勇も並々ならぬとか…。司徒様は、董卓の専横を憂い、密かに行動を起こせる有能な士や、特別な力を持つ可能性のある者を探しておられましたのでな。貴殿の噂は、我々の情報網にもすぐに届きました。」

どうやら、的斗たちが洛陽に入ってからの行動や、周倉たちの存在、そして何よりも、的斗が市場で董卓兵の横暴を諌めた際に(周倉たちの助けを借りてではあったが)見せたという尋常ならざる気迫と武勇が、王允の密偵の目に留まり、彼の興味を引いたらしい。


緊張しながらも、的斗は周倉たちを伴い、王允の壮麗な屋敷へと向かった。絹の布が飾られた廊下、煌びやかな調度品…その華やかさは、洛陽の民の惨状との対比で、的斗の胸を締め付けた。通された広間には、初老ながらも矍鑠とした、威厳のある男が座っていた。彼こそが、漢王朝の重臣、司徒・王允だった。

「よくぞ参られた、趙子龍殿。遠路遥々、ご苦労であった」

王允の声は穏やかだが、その眼光は鋭く、的斗の内面まで見透かすようだ。

「司徒様直々のお呼び出し、恐縮に存じます」

的斗は、剣道で培った礼儀作法を思い出し、深々と頭を下げた。

王允は、的斗と、その背後に控える周倉たちを一瞥し、ふむ、と頷いた。

「噂に違わぬ、見事な従者たちをお連れですな。そして、貴殿自身も…**我が密偵からの報告によれば、**常山趙家に伝わるという『龍の血脈』の輝きを、その瞳の奥に宿しておられるように見受けられる。そのような特異な血筋については、古今の書物を漁り、多少の知識はあるつもりだ。 天命を動かす力の一端を秘めているのかもしれぬな」

(龍の血脈…!?この人が、なぜそんなことを…!密偵の報告だと?それに、書物を漁った…? この俺の身体能力の異常さ、あの感覚…これと関係があるのか!?確かに、故郷の家の竹簡にそんな記述があった気がする…でも、一体どこでその情報を…?ここで下手に動揺を見せれば、この男に足元を見られる。今の俺は、趙雲としての知識も常識も持ち合わせていない。警戒しなければ)


的斗は内心の激しい動揺を抑え、平静を装って尋ねた。


「『龍の血脈』…と申されますと?恐れながら、私には何のことか…私はただの田舎者で、そのような大層なものとは縁もゆかりもございません。もしよろしければ、司徒様がご存知のことをお聞かせ願えませんでしょうか?」


彼は、この機会を逃さず、自らの出自や力の謎に迫ろうとした。王允がただの噂話をしているとは思えなかったからだ。

王允は、的斗の真っ直ぐな問いかけに、わずかに目を細めた。


「ふむ…その若さで、これほどの武勇と、そして何やら常人ならざる雰囲気をお持ちだ。そなたの趙家には古くより、特別な力を持つ者が現れるという言い伝えがあるらしい。お主がその血を引いていても何ら不思議はない。今はまだその力が完全に覚醒しておらぬとしても、な。(完全に覚醒…?つまり、まだ俺の力は、あんなものじゃないってことか…?)」


王允は、それ以上詳しいことは語らなかったが、その言葉には、的斗の持つ何らかの特異性を確信している響きがあった。そして、それは的斗にとって、自分の力の正体を探る上で無視できない手がかりとなるかもしれなかった。


(この人は、何かを知っている…今は無理でも、いつか必ず聞き出さなければ…)


的斗は心に誓った。


「さて、子龍殿。今のこの洛陽の有り様を、貴殿はどう見ておられるかな?」


王允は、探るような視線を的斗に向け、話題を変えた。試すような質問。的斗は一瞬言葉に詰まったが、正直に答えることにした。


「…見るに堪えません。董卓の専横により、帝の権威は失墜し、民は塗炭の苦しみを味わっております。このままでは、漢王朝の命運も尽き果てるかと…。民衆の不満は爆発寸前ですが、組織的な反抗には繋がっていません。それは、彼らの心の拠り所となる『大義』が欠けているからでしょう。漢室の権威を取り戻すことができれば、民は立ち上がるはずです」


「ほう…なかなか手厳しいご意見だ。では、貴殿がもし力を持つならば、この国をどうしたいとお考えかな?」


王允はさらに畳み掛ける。的斗は、自分の理想――民が安心して暮らせる世――を語るべきか迷ったが、ここではまず、王允が求めるであろう答えを返すことにした。


「まずは董卓を排除し、帝の権威を回復させることが肝要かと。そして、法を正し、民の生活を安定させること…言うは易しですが…」


的斗は、ゲームで培った戦略知識の断片を織り交ぜながら、自分なりの考えを述べた。時折、現代的な言葉遣いが混じってしまうが、王允はそれを咎めることなく、興味深そうに聞き入っている。


「ふむ…見事な見識だ。特に、董卓を排除するためには、呂布の力を利用すべきという点は、慧眼と言えよう。(この若者、単なる武人ではない。まるで、この乱世の行く末を予見しているかのようだ…)」


王允は満足げに頷いた。どうやら、的斗の答えは彼の意に沿ったものだったらしい。


「趙子龍殿、貴殿のような若者が、まだこの漢王朝にいることに希望を感じる。貴殿のその武勇と知恵、そして何よりもその『龍の血脈』に秘められた力を、この国のために役立てる気はないかな?」


王允の言葉は、的斗にとって大きな誘いであった。しかし、同時に、その言葉の裏には、何か大きな企みが隠されているようにも感じられた。彼の瞳の奥には、漢室への忠誠だけでなく、私利私欲にも似た、何か冷たい光が宿っているように見えた。彼は俺を、董卓と呂布を分断するための「駒」の一つとして見ているのかもしれない。


(この人、俺を利用しようとしてるのか…?でも、董卓を倒すっていう目的は同じだ…そして、もしかしたら、この人から俺の力の秘密を聞き出せるかもしれない…)


的斗は、王允の真意を測りかねながらも、この申し出を断る理由はないと判断した。


「司徒様のお役に立てるのであれば、この趙子龍、微力ながら力を尽くさせていただきたく存じます。そして…もし叶うならば、先ほどの『龍の血脈』について、司徒様のお知恵をお借りできれば幸いです」


的斗は、最後の言葉に、自らの力の謎を解き明かしたいという切実な想いを込めた。


「うむ、頼もしい言葉だ。血脈の件については、いずれ時が来れば話すこともあるやもしれぬ」


王允は深く頷き、その口元にわずかな笑みを浮かべた。しかし、その瞳の奥には、期待と共に、まだ拭きれない警戒の色も宿っているように、的斗には見えた。

歴史の重要人物との、最初の駆け引き。的斗は、自分がとてつもなく大きな渦の中に足を踏み入れてしまったことを、改めて実感していた。同時に、自らの出自と力に関する謎への興味が、彼の胸中で一層強く燃え上がり始めていた。

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