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第61話:天下統一! 白龍王朝の樹立と、民衆の新たな希望

第61話:天下統一! 白龍王朝の樹立と、民衆の新たな希望

燃え盛る襄陽の宮殿で、覇王・曹操孟徳が、若き龍・趙雲子龍の槍の前に倒れた。その死は、中原の趨勢を決定づけた。

しかし、戦乱が完全に終わったわけではなかった。曹操の息子である曹丕や曹彰、そして各地の曹操派の太守たちは、なおも抵抗を続けた。だが、主君を失い、士気を喪失した彼らが、天下の勢いをその身に宿す白龍軍の敵ではなかった。関羽、張飛、太史慈らが率いる各方面軍は、破竹の勢いでこれらの残党を掃討していく。


そして、白龍軍の威光は、まだ平定されていなかった辺境の地にも及んだ。

西の涼州に割拠していた馬騰・韓遂は、曹操の滅亡を知るや、戦わずして降伏の使者を送ってきた。北の遼東で機を窺っていた公孫康もまた、白龍軍の圧倒的な国力の前に野心を諦め、帰順を誓った。南方の未開の地、交州の士燮ししょく一族も、貢物を携えて臣従を申し出た。

こうして、中華は、最後の血を流すことなく、ついに一つの旗の下に統一されたのだ。


「戦は…終わったのだ…!」

「我らは…救われたのだ…!」

その報は、平定された都や村々から燎原の火のように広がり、民衆の間に歓喜の渦を巻き起こした。飢えと恐怖、そして絶え間ない争いに疲弊しきっていた人々は、ようやく訪れた平和に涙し、新たな時代の到来を心から祝福した。

的斗の元には、各地から感謝の言葉と共に、平和への切実な祈りが、数えきれないほど届けられた。その一つ一つに、民衆の苦しみと、そして未来への希望が込められているのを、的斗はひしひしと感じていた。


洛陽――かつて董卓によって焼き払われ、その後も戦乱の中心地の一つであり続けたこの古都は、新たな王朝の始まりの地として選ばれた。それは、破壊からの再生、そして中華の中心から再び平和を築き上げるという、的斗の強い意志の表れだった。

白龍王朝樹立の儀式は、これまでの王朝交代に見られたような、権威と武力を誇示するものではなかった。むしろ、質素でありながらも荘厳で、何よりも民衆と共に新たな時代の始まりを祝う、希望に満ちたものだった。

広場には、身分を問わず多くの民衆が集い、固唾を飲んでその瞬間を見守っている。


高い壇上に、純白の龍が刺繍された深紅の礼服をまとった的斗――趙雲子龍が、ゆっくりと姿を現した。その顔には、長年の戦いの疲れも見えたが、それ以上に、天下泰平を成し遂げた者だけが持つことのできる、深い安堵と自信、そして民への慈愛に満ちた表情が浮かんでいた。

彼の隣には、同じく純白の美しい衣を纏い、髪には簡素ながらも気品のある玉の簪を挿した貂蝉が、静かに、しかし凛とした気品を湛えて立っていた。その姿は、戦乱の世に咲いた一輪の清らかな花のようであり、また、全てを優しく包み込む慈母のようでもあった。彼女の微笑みは、これから始まる新しい王朝の、輝かしい未来を象徴しているかのようだった。

民衆の間から、自然と感嘆のため息が漏れる。


「天に代わり、地に代わり、そして何よりも、この中華に生きる全ての民のために、趙雲子龍は、ここに新たな王朝の樹立を宣言する!」

的斗の声は、決して大きくはなかったが、不思議な力強さと威厳をもって、広場全体に響き渡った。

「王朝の名は、『白龍』!白は、穢れなき正義と公平を。龍は、天に昇り、民に豊穣と安寧をもたらす吉兆の象徴なり!この白龍王朝は、武力によって民を支配するのではなく、仁義と法によって民を守り、民と共に歩む国となることを、ここに固く誓う!」

その宣言と共に、白地に金色の龍が勇壮に舞う、新しい王朝の旗が、青空高く掲げられた。


「「「白龍王朝、万歳!!白龍帝陛下、万歳!!皇后陛下、万歳!!!」」」

広場を埋め尽くした民衆から、地鳴りのような歓声が沸き起こった。それは、長きにわたる苦難の時代が終わり、ようやく訪れた平和と、新たな希望への心からの叫びだった。

的斗は、その歓声に包まれながら、隣に立つ貂蝉の手をそっと握った。貂蝉もまた、的斗の手を優しく握り返し、涙を浮かべながら微笑んだ。その瞳には、「ついに、ここまで来ましたね…」という、言葉にならない想いが溢れていた。


儀式の後、宮殿の一室で、的斗は貂蝉と二人きりになった。窓の外には、まだ民衆の歓声が遠く聞こえている。

「…終わったんだな、本当に」

的斗は、どこか夢見心地のような表情で呟いた。

「はい、子龍様。あなたの、そして皆の力で、この国に平和が訪れました」

貂蝉は、的斗の頬にそっと手を添えた。その手は、温かく、そして優しかった。

「ありがとう、貂蝉。君がいてくれなかったら、俺はきっと、ここまで来れなかった」

「いいえ…私こそ、あなた様に出会えたから、こうして生きているのです。そして、こんなにも素晴らしい未来を、あなた様と共に迎えることができました…」

二人は、言葉少なながらも、互いの目を見つめ合い、これまでの苦難と、そしてこれから始まる新たな日々への想いを分かち合った。

白龍王朝の樹立。それは、的斗にとって、そして貂蝉にとって、長い戦いの終わりであると同時に、真の「国づくり」という、新たな、そしてより大きな挑戦の始まりでもあった。

しかし、今の二人には、どんな困難も乗り越えられるという、確かな自信と、揺るぎない愛があった。

新しい時代の太陽が、今まさに、中華の大地を照らし始めようとしていた。

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