第50話:電光石火の入蜀! 法正の奇策と、裏切りを逆手に取る陳宮の策
第50話:電光石火の入蜀! 法正の奇策と、裏切りを逆手に取る陳宮の策
張松処刑――その衝撃的な報は、白龍軍の陣営に重くのしかかった。益州攻略の鍵となるはずだった内応者の死は、計画そのものの頓挫を意味するかに思われた。
「やはり、益州攻略は無謀だったのでは…」
「内応者がいなければ、あの天険の地をどうやって…」
軍議の席では、再び反対論が噴出し、的斗自身も、一度は固めた決意が揺らぎ始めていた。
(張松殿を、死なせてしまった…俺のせいなのか…?)
その重苦しい空気を破ったのは、法正の鋭い声だった。
「趙子龍殿!いつまで下を向いておられるのですか!ここで我々が退けば、張松殿の死は完全に無駄になりますぞ!そして、劉璋は必ずや我々への警戒を強め、益州の民はさらに長い間、あの暗君の下で苦しむことになるのです!今こそ、彼の死を乗り越え、我々の覚悟を示す時!電光石火の速さで事を起こし、劉璋の度肝を抜いてやるのです!」
法正の瞳は、怒りと、そして不退転の決意で燃えていた。その気迫に押され、的斗はハッと顔を上げた。
(そうだ…ここで諦めたら、何も変わらない…!)
「法正殿の言う通りだ」
静かに口を開いたのは、陳宮だった。
「張松殿が漏らした情報…例えば、我々が特定のルートから侵入しようとしていたというようなものは、逆に利用できます。劉璋は、そのルートの警備を固めるでしょう。我々は、そこに少数の陽動部隊を向かわせ、敵の主力を引きつけます。さらに、『趙雲は益州攻略を諦め、荊州方面へ転進した』という偽情報を流し、劉璋の油断を誘うのです」
陳宮の策は、張松の裏切りという絶望的な状況を、逆に好機へと転じさせる大胆なものだった。
的斗は、二人の軍師の言葉に、再び闘志を奮い立たせた。
「分かった!陳宮先生、陽動はお任せします。法正先生、我々を益州へ導いてください!」
法正は、力強く頷いた。
「お任せください。劉璋軍も知らぬ、険しい間道がございます。そこを抜ければ、益州の喉元である葭萌関の背後を突くことができます」
数日後、陳宮の陽動作戦が開始された。白龍軍の一部隊が、張松が漏らしたとされるルートへ大々的に進軍を開始し、劉璋軍の主力をそちらへ引きつける。同時に、「趙雲、益州攻略を断念」という噂が、益州各地に流された。
その裏で、的斗は周倉、太史慈、裴元紹といった選りすぐりの精鋭五千と、案内役の法正、孟達と共に、夜陰に乗じて密かに出発した。彼らが進むのは、地図にも載っていないような、険しい山道や断崖絶壁が続く、まさに獣道だった。
落石、悪天候、毒虫、そして兵士たちの疲労。幾多の困難が彼らの行く手を阻む。しかし、法正の的確な案内と、的斗の不屈のリーダーシップが、兵士たちを鼓舞し続けた。
的斗が先頭に立ち、自ら難所を切り開く姿は、兵士たちに勇気を与えた。そして、不思議なことに、的斗が強い意志を持って進む時、彼の身体から発せられる温かいオーラ(龍の血脈の力)が、兵士たちの疲労を和らげ、彼らに超人的なまでの持久力を与えているようだった。
そしてついに、十数日間に及ぶ想像を絶する困難な行軍の末、的斗率いる精鋭部隊は、益州の重要な関所である葭萌関の背後に到達した。
「見えたぞ!あれが葭萌関だ!」
裴元紹の報告に、兵士たちから歓声が上がる。
陳宮の陽動作戦は見事に成功し、葭萌関の守備は手薄になっていた。さらに、法正が事前に内応工作を行っていた関所内部の将校たちが、城門を開ける手筈を整えていた。
「今夜、決行する!一気に葭萌関を制圧し、益州攻略の狼煙を上げるのだ!」
的斗の号令一下、白龍軍の精鋭たちは、夜陰に乗じて葭萌関に音もなく迫った。
内応者の手引きにより、城門は静かに開かれた。的斗を先頭に、白龍軍の兵士たちが雪崩れ込む。
「敵襲ーっ!敵襲ーっ!」
油断しきっていた劉璋軍の兵士たちは、突然の奇襲に大混乱に陥った。
的斗の槍が、闇を切り裂き、敵兵を薙ぎ払う。その姿は、まるで天から舞い降りた白い龍のようだった。その圧倒的な武勇と、神々しいまでの威光(龍の威光)を前に、多くの劉璋兵は戦意を喪失し、武器を捨てて降伏した。
周倉、太史慈、裴元紹もまた、獅子奮迅の働きを見せ、瞬く間に葭萌関は白龍軍の手に落ちた。
夜明けと共に、葭萌関の城壁には、白地に龍の紋章が染め抜かれた白龍軍の旗が、朝日を浴びて誇らしげにはためいていた。
電光石火の入蜀作戦の成功。それは、的斗の決断力、陳宮と法正の知略、そして何よりも、困難を乗り越えた兵士たちの勇気と、「龍の血脈」の力が成し遂げた奇跡だった。
この勝利は、益州全土を震撼させ、劉璋を恐怖のどん底に突き落とす。そして、白龍軍の天下統一への道が、大きく開かれた瞬間でもあった。




