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第46話:河北平定と戦後処理、そして新たな脅威の胎動

第46話:河北平定と戦後処理、そして新たな脅威の胎動


袁紹の死と袁家の滅亡により、河北の広大な大地は、ついに白龍軍の旗の下に統一された。的斗は、軍を率いて袁家の本拠地であったぎょうの城へと入城した。

その道のりは、民衆からの熱狂的な歓迎で迎えられた。袁紹の圧政と、その息子たちの醜い後継者争いによる混乱に長年苦しめられてきた河北の民にとって、的斗と白龍軍はまさに解放者であり、救世主だった。子供たちは的斗の馬の周りに集まって花を投げ、老人たちは道端にひざまずき、涙ながらに感謝の言葉を捧げた。


「趙雲様!よくぞ来てくださいました!」

「これで我らも、安心して暮らせますじゃ!」


的斗は、馬上から一人一人に優しく声をかけ、彼らの手を取り、その労をねぎらった。その姿は、威圧的な覇者ではなく、民に寄り添う温かい指導者のそれだった。的斗が民衆の前に立つ時、彼から発せられる「龍の威光」は、威圧ではなく、不思議な安堵感と信頼感を人々に与え、その心を深く掴んだ。人々は、彼の姿を、まるで天から降りてきた救世主のように見つめた。


鄴に入城した的斗は、休む間もなく戦後処理と民心の安定に着手した。

まず、陳宮の厳格な指揮のもと、軍律を徹底し、兵士によるいかなる略奪行為や私闘も厳しく禁じた。違反者には、身分を問わず厳罰を科し、その姿勢を明確に示した。これにより、鄴の治安は驚くべき速さで回復していった。

次に、徐庶の助言に従い、袁家が溜め込んでいた莫大な食糧や財産を民衆に開放。飢えた者には食料を配給し、重すぎた税を大幅に軽減することを布告した。的斗は現代の税制の概念を参考に、公平で持続可能な税率を導入し、土地の再分配も計画的に進めた。これらの仁政は、河北の民衆の心を瞬く間に掴み、「趙雲様こそ、真の仁君なり」という声が、河北全土に広まっていった。

降伏した袁紹軍の将兵に対しても、的斗は寛大な処置を取った。希望者は白龍軍に編入し、その能力に応じて役職を与えた。特に、張郃、高覧、麴義といった元袁紹軍の有力な武将たちは、その武勇と経験を高く評価され、河北の防衛や治安維持の任に就けられた。彼らは、的斗のその寛容な器量に心から感服し、新たな忠誠を誓った。故郷へ帰りたいと願う兵士には、十分な路銀を与えて解放し、彼らは的斗の恩義に涙して去っていった。

河北の統治体制の構築も急ピッチで進められた。徐庶が中心となり、河北の各郡県に新たな太守や県令を任命し、中央集権的な統治システムを確立していく。その際、的斗は、現代の行政組織を参考に、機能別に部署を分け、各部門の連携を密にするよう指示した。これにより、行政の効率化が飛躍的に進んだ。的斗は、河北出身の名士や、旧袁紹軍の中でも良識派として知られていた文官たちを積極的に登用し、地元勢力との融和を図ることも忘れなかった。これにより、河北の統治は比較的スムーズに進み、新たな秩序が築かれつつあった。


しかし、河北平定の喜びも束の間、的斗たちの元には新たな脅威の影が忍び寄っていた。


「申し上げます!北方の烏桓うがん族が、袁家滅亡に乗じ、我が領土の北辺への侵入と略奪を活発化させているとの報せを!」

「さらに、遼東の公孫康こうそんこうが、河北への領土的野心を露わにし、烏桓族と連携して南下を企てているとの情報も入っております!公孫康は、公孫瓚の仇を討つと称して、袁家の旧領を狙っている模様です!」


斥候からの報告は、的斗と仲間たちに新たな緊張をもたらした。袁紹は生前、巧みな外交手腕で烏桓族を懐柔し、北方の抑えとしていたが、そのたがが外れた今、彼らは再び牙を剥き始めたのだ。そして、遼東の公孫康もまた、この混乱を好機と捉え、漁夫の利を得ようと画策している。


(やはり、戦いはまだ終わっていないのか…)


的斗は、地図に記された北方の広大な土地を見つめながら、深くため息をついた。


「皆、聞いてくれ」


的斗は、集まった仲間たちに向き直った。その顔には、先ほどまでの穏やかさはなく、再び厳しい指導者の表情が戻っていた。


「我々は河北を平定した。しかし、それは新たな戦いの始まりでもある。北の民が、異民族の脅威に晒されているのを見過ごすわけにはいかない。そして、公孫康のような野心家が、この地の平和を乱すことも許さない。我々の戦いは、真の天下泰平を築き上げるまで、決して終わることはないのだ!」


その力強い言葉に、仲間たちは皆、固い決意の表情で頷いた。


「趙雲様のお言葉、肝に銘じました!」「どこまでも、お供いたします!」


河北平定という大きな節目を乗り越え、的斗と白龍軍は、次なる試練に向けて、その結束をさらに強固なものにしていくのだった。

北の空に、新たな戦雲が立ち込めようとしていた。

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