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第45話:袁紹との決戦! 河北の野に龍虎吼える、そして袁家の滅亡

第45話:袁紹との決戦! 河北の野に龍虎吼える、そして袁家の滅亡

陳宮の奇策によって曹操軍の先鋒を退け、白龍軍は束の間の安息を得た。しかし、軍議の席で陳宮が発した言葉は、将たちの気を再び引き締めるものだった。


「皆、勝利に酔っている暇はありませぬ。曹操は確かに退いたが、その根幹を叩いたわけではない。彼が体勢を立て直し、再び大軍を率いて現れるのは時間の問題です。その前に、我々は背後に残る最大の脅威――袁紹を完全に排除し、河北を我らの揺るぎない地盤としなければなりません」


陳宮の瞳は、冷徹な光を宿していた。

「幸い、我らが曹操と死闘を繰り広げている間も、袁家の内紛は止むことなく、むしろ悪化しております。彼らは自らの手で力を削ぎ落としている。まさしく、天が我らに与えた好機。今こそ、疲弊した身体に鞭打ち、一気に河北を制圧するのです」


その言葉は、まさに正論だった。背後を気にしながら曹操と戦うことの危険性を、誰もが理解していた。的斗は、陳宮の策に強く頷くと、すぐに行動に移した。まず、徐盛と甘寧に命じ、一万の兵を黄河南岸の官渡かんと延津えんしんといった、曹操領との最前線に配置。強固な防衛線を再構築し、いつでも許都を急襲できるかのような陣構えを見せることで、「我々は次なる攻撃の準備をしている」と曹操に思わせる牽制を行った。


一方、的斗自身が率いる本隊は、河北へと進軍を開始。曹操との戦いを生き延びた兵と、河北戦線を維持していた張郃、高覧、そして陳宮を迎え入れた後に急ぎ帰還していた太史慈らの部隊を合流させ、その総兵力は五万にまで回復していた。


対する袁紹軍は、河北四州からかき集めた十万の大軍を擁していた。数では圧倒的に白龍軍を上回る。だが、その内実は全く異なっていた。


「袁紹軍は、内から崩れ始めております。田豊や沮授といった忠臣も冷遇され、残るは私利私欲に走る佞臣ばかり。今こそ、我らが河北に義の旗を立てる時です」


陳宮の謀略は、袁紹軍の内部をさらに蝕んでいた。偽の書状、巧妙に流される噂、そして沮授ら内通者からの情報。それらが複雑に絡み合い、袁紹の息子たちや側近たちの猜疑心は限界に達していた。

そして、その効果は絶大だった。既に白龍軍に加わっていた張郃、高覧に続き、勇将として名高い麴義きくぎもまた、袁紹の暗愚さに見切りをつけ、的斗の元へと馳せ参じたのだ。彼らは、的斗の『仁義』と、彼の内から発せられる『龍の威光』に真の希望を見出したのである。彼らに続くように、河北の多くの名士や将兵たちが、次々と袁紹を見限り、白龍軍の旗の下へと集い始めた。


「全軍、出陣!目指すは袁紹の本拠地、ぎょう!河北の民を、暴君の手から解放するのだ!」


的斗の号令一下、白龍軍五万は、河北へと進軍を開始した。その行軍は、少数ながらも精鋭揃いで、その士気は天を衝くばかりだった。


袁紹は、的斗軍の侵攻を知り、慌てて十万の兵を率いて迎撃に出るが、その軍はもはや烏合の衆と化していた。指揮系統は乱れ、兵士たちの士気も低い。彼の傲慢な命令は、もはや兵士たちの心を動かすことはなかった。


河北の広大な平原で、両軍はついに激突した。土煙が舞い、銅鑼の音が鳴り響き、数万の兵士たちの怒号が大地を揺るがす。兵力で劣る白龍軍であったが、その一人一人の瞳には、揺るぎない覚悟と、自らが掲げる『仁義』への誇りが宿っていた。


「者ども、続け!我らが白龍の力、天下に示せ!」

的斗は、槍を高々と掲げ、自ら先陣を切って袁紹軍の本陣へと突撃した。その瞬間、彼の身体から金色の龍のオーラが迸り、天を衝くような雄叫びが戦場に響き渡った。その覇気は、白龍軍の兵士たち一人一人に伝播し、彼らの潜在能力を極限まで引き出す。まるで、兵士たち自身も龍と化したかのような、凄まじい勢いで袁紹軍に襲いかかった。的斗の瞳に宿る「龍の眼」の光は、袁紹軍の将兵たちの心胆を寒からしめ、多くの者を戦意喪失へと追い込んだ。


その時、まるで的斗の内に秘められた「龍の力」が天にまで感応したかのように、空を覆っていた暗雲がにわかに割れ、一条の眩い光が的斗と、彼が掲げる白龍軍の旗を神々しく照らし出した。そして、どこからともなく突風が巻き起こり、袁紹軍の掲げる数多の旗指物をなぎ倒し、白龍軍の「仁義」の旗だけを、まるで天命を示すかのように天高く押し上げたのだ。


「見よ!天も、趙雲様に味方しておられるぞ!」「これぞ龍の威光!我らに勝利あり!」


白龍軍の兵士たちは、その超常的とも言える光景を目の当たりにし、神がかり的な指導者への信仰にも似た熱狂と共に雄叫びを上げた。彼らの士気は天を衝き、一方の袁紹軍の兵士たちは、その不可思議な現象と白龍軍の猛威に完全に戦意を喪失し、恐怖のどん底に突き落された。


もはや、勝敗は明らかだった。袁紹軍は総崩れとなり、兵士たちは武器を捨てて逃げ惑う。袁紹自身も、僅かな手勢と共に鄴へと敗走するが、その途中、長年の心労と敗戦のショックから病が悪化し、道端で倒れてしまう。


「わ、わしの…河北が…天下が…夢だったのか…」


かつての栄華も、息子たちの醜い争いも、全てが走馬灯のように脳裏を駆け巡る。そして、最後に見たのは、天高く翻る白い龍の旗だった。その旗は、彼の夢を打ち砕き、新たな時代の到来を告げていた。彼は、自らの愚かさによって、この最期を招いたのだと、薄れゆく意識の中で悟ったのかもしれない。

袁紹は、無念と絶望の中で、静かに息絶えた。彼の死と共に、河北に一大勢力を誇った名門・袁家は、事実上滅亡の道を辿ったのだった。

その報は、すぐさま的斗の元にもたらされた。


(袁紹…お前もまた、この乱世の犠牲者だったのかもしれないな…)


的斗は、敵将の死に一抹の哀れみを感じつつも、感傷に浸る暇はないことを知っていた。

河北平定。それは、白龍軍にとって大きな勝利であると同時に、新たな戦いの始まりでもあったのだ。

的斗は、鄴の城門を見据え、次なる一手へと意識を集中させるのだった。

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