第38話:官渡激震! 曹操敗走、袁紹の驕り、そして白龍の次なる一手と「龍の威光」
第38話:官渡激震! 曹操敗走、袁紹の驕り、そして白龍の次なる一手と「龍の威光」
烏巣の夜襲は、曹操にとって悪夢そのものだった。的斗と袁紹軍の一部による完璧な伏兵の前に、曹操軍の誇る精鋭部隊は壊滅的な打撃を受けた。虎豹騎の一部も奮戦したが、太史慈の正確無比な弓が指揮官を射抜き、周倉の猛然たる突撃が陣形を切り裂き、ついには総崩れとなった。それは、歴史上では曹操が勝利したはずの官渡の戦いが、的斗の介入によって全く異なる結末を迎えた瞬間だった。
さらに、この混乱の中で、袁紹軍の将であった張郃と高覧が、郭図の讒言と袁紹の暗愚さに絶望し、「我々は真の英雄にお仕えしたい!」と、驚くべきことに的斗の白龍軍に降伏を申し出てきたのだ。彼らは、的斗の武勇と、その戦いぶりに見られる「仁義」の光、そして何よりも、的斗が発する常人離した威光に強く惹かれていた。彼らは、的斗の中に、真の「王の器」と、この乱世を終わらせるだけの「天命」を感じ取っていた。
一方、甘寧率いる白龍軍の別動隊は、曹操の本陣に電光石火の奇襲をかけていた。
「野郎ども!曹操の首は俺が取る!続け!」
甘寧の咆哮と共に、白龍軍の兵士たちが雪崩れ込み、曹操の本陣は瞬く間に大混乱に陥った。曹操自身も、まさか本陣が襲われるとは夢にも思っておらず、慌てて剣を抜いて応戦するも、数の上では圧倒的に不利だった。
「孟徳様!ここは危険です!早くお逃げください!」
荀彧や程昱といった軍師たちが、必死に曹操を説得し、数少ない手勢と共に辛うじて本陣を脱出させた。その際、混乱の中で放たれた白龍軍の一兵卒の槍が、曹操の頬を浅く切り裂いた。血が滲むその傷は、曹操にとって生涯忘れることのできない屈辱の「爪痕」となった。彼は逃走する馬上で、血を拭いながら低く唸った。
(趙子龍…!あの若造、ただの武勇だけの男ではない…あの戦いぶり、そしてあの異常なまでの兵の統率力…許褚や典韋ですら、あれほどの威圧感は感じなかった…。まるで、龍が天に昇るかのような…何か、得体の知れぬものを持っている。必ず、この借りは返す…!)
曹操の胸には、単なる敵意を超えた、趙雲子龍という存在への強烈な警戒心と、いつか必ず超えなければならない壁としての認識が、深く刻み込まれた。
曹操軍は、烏巣での大敗と本陣への奇襲という二重の打撃を受け、もはや戦線を維持することは不可能だった。曹操は、残存兵力をかき集め、許都へと無念の敗走を開始した。
官渡の戦いは、袁紹軍と白龍軍の圧倒的な勝利に終わったのだ。
しかし、この歴史的な大勝利の後、袁紹の態度は的斗の予想以上に傲慢なものだった。彼は、自らの威光だけで勝利を得たかのように振る舞い、連日盛大な戦勝祝いの宴を開いては贅沢三昧にふけった。的斗の功績や、張郃・高覧が白龍軍に降ったことに対しても、表向きは称賛しつつも、その内心では嫉妬と警戒心を隠そうとしなかった。彼の短慮と傲慢さは、官渡の勝利でさらに増長した。田豊や沮授といった忠臣たちが、的斗との連携の重要性や、曹操の再起への備えを説いても、袁紹は「曹操など、もはや恐るるに足らず。この袁本初の威光の前に、ひれ伏すのみよ」と、全く耳を貸そうとしなかった。
(これが…名門の驕りというやつか…こんな器の小さい男に、天下の覇者など務まるはずがない。これでは、いずれ曹操に再びやられるぞ…あるいは、俺が先にこの男を…)
的斗は、袁紹の器量の小ささに失望しつつも、今はまだ彼と事を構える時ではないと冷静に判断していた。
的斗は、袁紹の宴にはほとんど顔を出さず、自軍の陣営で戦後処理と、民心の安定に力を注いだ。
降伏した曹操軍の兵士たちに対しては、一切の虐待を禁じ、希望者には食料とわずかな路銀を与えて故郷へ帰した。その寛大な処置は、多くの兵士たちの心を打ち、「趙雲様こそ、真の仁君だ」という声が自然と上がった。
また、戦乱で負傷した兵士たちに対しては、敵味方の区別なく、貂蝉が指揮する野戦病院で手厚い看護を施した。貂蝉の献身的な姿は、多くの人々に感動を与え、彼女は「慈愛の女神」とまで呼ばれるようになっていた。
さらに、戦場となった近隣の村々には、積極的に食料や物資を援助し、荒廃した田畑の復興にも協力した。
的斗のこれらの行動は、計算されたものではなかった。それは、彼が心から民を思い、平和な世を願う気持ちの表れだった。そして、その純粋な「仁義」の心と、戦場で時折見せる、まるで天命を帯びたかのようなカリスマ的な威光――人々が「龍の威光」と噂するそれ――は、袁紹軍の兵士たちや、戦乱に疲弊した民衆の心をも、確実に掴み始めていた。
「趙雲様こそ、我らが待ち望んだ真の英雄だ!」「あの方なら、きっとこの乱世を終わらせてくれる!」
そんな声が、さざ波のように中原に広まりつつあった。張郃や高覧といった元敵将までもが、的斗の器量と「龍の威光」に心服し、忠誠を誓う姿は、その噂をさらに強固なものにした。
官渡の戦いは終わった。しかし、それは新たな戦いの始まりでもあった。
的斗は、驕り高ぶる袁紹の姿を見て、静かに心に誓う。
(いずれ、彼とも雌雄を決する時が来るだろう。だが、今はまだその時ではない。曹操は必ず再起してくる。その前に、俺たちはもっと力をつけ、この中原に確固たる地盤を築き、民のための国を創り上げなければならない…!)
若き龍・趙雲子龍の目は、すでに次なる目標――中原の安定と、その先にある天下泰平の世――を捉えていた。彼の「天下泰平」への道は、まだ長く、そして険しい。しかし、その瞳には、揺るぎない決意と、仲間たちへの信頼が満ち溢れていた。




