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第37話:烏巣奇襲を逆手に! 白龍軍、歴史を塗り替える奇策、そして許攸の密告

第37話:烏巣奇襲を逆手に! 白龍軍、歴史を塗り替える奇策、そして許攸の密告


許都からの勅使がもたらした「逆賊・袁紹を討て」という天子の勅命は、的斗と白龍軍に重くのしかかった。曹操の策略であることは明白だったが、勅命に背けば朝敵となる。かといって、袁紹を討てば曹操を利することになる。


(どうすればいいんだ…天子様のお言葉は重い…だが、曹操のやり方は決して許容できない…袁紹もまた、信用できる相手ではないが…)


的斗は、数日間にわたり苦悩した。食事も喉を通らず、不眠が続いた。彼の心は、まるで泥沼にはまったかのように、抜け出せないでいた。軍議でも意見はまとまらず、白龍軍の進むべき道が見えない。

そんな的斗の姿を見かねた貂蝉が、静かに言った。


「子龍様…どのような道を選ばれるにしても、どうか、これ以上民を苦しめることのない戦い方を選んでくださいませ…それが、私の心からのお願いです」


貂蝉の言葉は、的斗の心に深く響いた。そうだ、俺の戦いは、民のためでなければならない。

的斗は、ついに決断を下した。


「皆、聞いてくれ。我々は、袁紹に加勢し、曹操を討つ。ただし、それは袁紹のためではない。曹操の勢力拡大を阻止し、中原の混乱を少しでも早く収拾するためだ。そして、その戦いの中で、我々白龍軍の力を天下に示し、新たな時代の到来を告げるのだ!」その苦渋の決断は、彼の顔から血の気を奪っていたが、その瞳には、かつてないほど強い光が宿っていた。


苦渋の、しかし戦略的な判断だった。勅命には表向き従う姿勢を見せつつ(袁紹もまた漢室をないがしろにしているという理屈で)、実質的には曹操を叩く。そして、その後の展開次第では、袁紹とも対峙する覚悟だった。


的斗の決断を受け、徐庶は具体的な作戦の立案に入った。そして、廖化がもたらした情報が、その作戦に大きな影響を与えることになる。


「趙雲様、袁紹軍の軍師である許攸きょゆうが、近頃袁紹に冷遇されており、曹操に寝返ろうとしているという噂を掴みました。どうやら、袁紹軍の兵糧が集積されている烏巣うそうの情報を手土産にするつもりのようです」


(許攸の裏切り…そして烏巣!ゲーム通りだ!これこそが、歴史を変えるチャンスだ!)


的斗は、歴史の歯車が大きく動こうとしているのを感じた。


「先生、これこそ好機です!曹操は必ず許攸の情報を信じ、烏巣を奇襲してくるでしょう。我々は、その裏をかくのです!」


的斗は、徐庶と共に、曹操の奇襲を逆手に取る大胆な策を練り上げた。的斗は、徐庶に「歴史の転換点」と「烏巣の重要性」、そして「許攸という人物の裏切り癖」を、ゲームで得た知識を元に、それとなく語った。徐庶は的斗の言葉の真意を読み解き、その情報から「烏巣を囮にする」という、常識破りの奇策を立案した。


まず、的斗は袁紹軍の軍師であり、比較的良識派として知られる田豊でんほうに密かに接触した。


「田豊殿。近々、曹操軍が烏巣の兵糧庫を奇襲するとの情報を得ました。我ら白龍軍は、袁紹公に協力し、これを撃退する所存。つきましては、烏巣の防備をあえて手薄に見せかけ、曹操軍を誘い込んでいただきたい。そして、我らが伏兵となって、奇襲部隊を包囲殲滅いたします」


田豊は、的斗の策の大胆さと的確さに驚きつつも、その有効性を認めた。しかし、袁紹がこの策を正しく理解し、的斗軍と十全に連携できるかという点に、大きな不安を抱いていた。


「趙子龍殿…貴殿の策、確かに見事だ。しかし、我が主君は…」


「分かっています。袁紹公には、烏巣防衛の重要性を説き、我々が援軍として駆けつけるとだけ伝えてください。あとは、我々にお任せいただければ」


田豊は、的斗の自信に満ちた言葉に、一縷の望みを託すことにした。


そして、運命の日がやってきた。

許攸は、的斗たちの予測通り、袁紹を見限り曹操に寝返り、烏巣の兵糧庫の情報を密告した。曹操は、この千載一遇の好機を逃すまいと、自ら軽騎兵を中心とした精鋭部隊を率い、夜陰に乗じて烏巣へと奇襲をかけた。


「よし、かかった!」


烏巣周辺に伏兵として潜んでいた的斗は、曹操軍が現れたのを確認し、静かに号令を下した。その瞳は、暗闇の中で微かに金色に輝いていた。それは、彼が「龍の眼」を最大限に活用し、曹操軍の動きを完璧に捕捉している証だった。

曹操軍が烏巣の兵糧庫に火を放ち、勝利を確信したその瞬間、四方八方から鬨の声と共に、白龍軍と袁紹軍の一部隊が姿を現した。


「な、何だと!?伏兵か!罠だ!」


夏侯恩は驚愕するが、時すでに遅し。狭い谷間で身動きが取れなくなった曹操軍は、白龍軍の決死の猛攻の前に混乱に陥る。的斗が放つ「龍の威光」は、曹操軍の兵士たちの戦意を削ぎ、恐怖心を煽る。彼らは、的斗の姿を、まるで地獄から現れた龍のように見えた。

的斗もまた、囮の役目を終え、反転して夏侯恩の本隊に突撃した。彼の槍捌きは、徐庶の策への信頼と、仲間たちへの想いが乗り移ったかのように、冴え渡っていた。


「夏侯恩!覚悟!」


的斗の槍が、夏侯恩を馬上から突き落とした。その一撃は、夏侯恩の鎧を粉々に砕き、彼の命を奪った。大将を失った曹操軍は総崩れとなり、白龍軍は奇跡的な大勝利を収めた。


さらに、この混乱に乗じ、もう一つの部隊が動いていた。甘寧率いる白龍軍の別動隊だ。彼らは、徐庶の指示通り、水路を巧みに利用して曹操軍の本陣背後に回り込み、手薄になった本陣に奇襲をかけたのだ。


「がっはっは!派手にいくぜ、野郎ども!曹操の首は俺が取る!」


甘寧の咆哮と共に、白龍軍の兵士たちが曹操の本陣になだれ込み、放火と略奪(ただし、民衆への被害は出さないよう厳命されていた)を開始した。その炎は、烏巣の炎と呼応するかのように天を焦がし、曹操軍に二重の絶望を与えた。

烏巣での敗報と、本陣への奇襲。二重の衝撃に、曹操軍は完全に浮き足立つ。

的斗は、この歴史的な戦いの流れを、自らの手で大きく変えようとしていた。その胸には、ゲーマーとしての興奮と、リーダーとしての責任感、そして、新たな時代を切り開くという確かな手応えが満ち溢れていた。

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