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第34話:長江の覇者を目指して! 水軍の必要性と錦帆賊・甘寧の情報、そして徐盛の苦労

第34話:長江の覇者を目指して! 水軍の必要性と錦帆賊・甘寧の情報、そして徐盛の苦労


反曹操連合の結成は、中原の情勢を一変させる可能性を秘めていた。白龍軍は、反曹操の旗頭として、その名をさらに轟かせた。しかし、それは同時に、白龍軍がより広範な戦線に関与し、複雑な戦略を要求されることをも意味していた。

軍議の席で、徐庶は広げられた地図の一点を指し示した。それは、中原を東西に貫く長大な河、長江だった。


「趙子龍殿。連合軍が陸路で曹操の本拠地である許都を攻める際、我々がこの長江水路を抑え、許都の背後や、あるいは荊州の曹操領の側面を脅かすことができれば、戦略的に非常に大きな効果が期待できます。そのためには、強力な水軍の創設が急務となります」


徐盛もまた、力強く頷いた。


「徐庶先生の仰る通りです。長江を制する者は、中原の物流を制し、ひいては天下を制すると言っても過言ではございません。水運は物資輸送の大動脈であり、水軍は敵の背後を突く奇襲の要。もし強力な水軍を擁することができれば、それは我らの大きな力となりましょう。逆に、これを敵に握られれば、我々は常に側面からの脅威に晒されることになります。将来、曹操や孫権といった勢力と戦う上で、水軍は避けて通れません」


的斗は、二人の言葉に深く納得した。


(確かに…これからの戦いを考えると、水軍は必須だな…ゲームでも、水軍の強い勢力は厄介だった。制海権、制空権なんて概念はまだないけど、この時代では『制水権』がそれに当たるのかもしれない…!)


早速、徐盛の指揮のもと、白龍軍は長江の支流で水軍の訓練を開始した。しかし、その道のりは険しかった。白龍軍の兵士の多くは北方出身で、水に不慣れな者が大半だったのだ。


「うげえっ…船はもう勘弁してくだせえ、趙雲様…」


周倉は、真っ青な顔で船べりに突っ伏している。慣れない揺れに、彼の屈強な身体も耐えられなかった。裴元紹もまた、バランスを崩して川に落ち、ずぶ濡れになりながら必死に岸にしがみついていた。多くの兵士が同じように船酔いに苦しみ、水に怯えていた。


「こらっ!だらしがないぞ!船上で足腰がふらつくようでは、まともな戦などできん!もっと下半身に力を入れろ!」


徐盛の厳しい檄が飛ぶ。彼は、泳ぎ方から始まり、小舟の操縦、そして簡単な水上戦の陣形まで、根気強く兵士たちに叩き込んでいく。時には、自ら水に飛び込み、泳ぎを教えてやることもあった。兵士たちは、慣れない船上での訓練に悲鳴を上げながらも、徐盛の熱心な指導と、的斗からの激励を受け、少しずつではあるが水軍としての体裁を整え始めていた。その進捗は決して早くはなかったが、着実に力はつき始めていた。


そんな中、情報収集の任を帯びて長江流域に派遣されていた廖化が、興味深い情報をもたらした。


「趙雲様、長江筋で『錦帆賊きんぱぞく』と恐れられている水賊の一団がおります。その頭領は甘寧かんねい、字を興覇こうはといい、腰に鈴をつけ、派手な羽飾りを好む、まことに型破りな男だとか。しかし、その武勇は凄まじく、水上戦においては右に出る者はいないとまで言われております」


廖化は、元賊のコネクションや、長江流域の商人や漁師たちから丹念に情報を集め、甘寧の根城のおおよその場所や、その人となりまで掴んでいた。


「聞けば、甘寧は役人の船を襲っては金品を奪うものの、貧しい者には施しをすることもあるとか。単なる無法者というよりは、義侠心に厚い、一本気な男のようですぜ。かつては豪族に仕えたこともあると聞きますが、その型破りな性格ゆえか、長続きはしなかったようで…」


(甘寧興覇…!あの暴れん坊か!ゲームでも、仲間にするとめちゃくちゃ強かったな…!特に水上戦では無類の強さを誇ったはずだ…!)


的斗の心は、俄然色めき立った。甘寧のような傑物が仲間になれば、白龍軍の水軍は一気に強化されるに違いない。


「よし、廖化、よくやった!その甘寧に、俺が直接会ってみたい」


的斗の言葉に、周倉が慌てて反対した。


「趙雲様!なりませぬ!錦帆賊といえば、長江で最も凶暴な水賊と聞いております!そんな無法者を仲間にするなんて、危険すぎますぜ!いつ裏切るか分かったもんじゃありません!奴らは血も涙もないと聞いております!」


「周倉の言う通りだ」的斗は頷きつつも、その瞳は好奇心と挑戦の光を宿していた。「確かに危険な賭けかもしれない。だが、俺はあの男の器を見極めたい。もし彼が本当に義侠心を持つ男なら、そして、この乱世を憂う心があるなら、必ずや我々の力になってくれるはずだ。それに…」


的斗はニヤリと笑った。


「あいつなら、俺の突飛な作戦にも、面白がって乗ってくれるかもしれないからな。それに、彼の水上戦の経験と知識は、今の俺たちには喉から手が出るほど必要なものだ」


その言葉には、甘寧という型破りな人物への、的斗自身の共感と期待が込められていた。


「俺が責任を持って彼を使いこなす。彼の力は、必ず我々の大きな武器になる。そう信じている。この天下統一の道を歩む上で、どんな個性も無駄にはしない」


的斗の揺るぎない決意を前に、周倉もそれ以上は何も言えなかった。彼の心配を払拭するには、的斗自身の行動で示すしかないことを、周倉も理解していた。

こうして、的斗は、長江の暴れ龍・甘寧との出会いを求め、危険を承知でその根城へと向かうことを決意したのだった。

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