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第33話:反曹操連合の胎動! 袁紹、劉表との複雑な同盟、そして漢室への忠義

第33話:反曹操連合の胎動! 袁紹、劉表との複雑な同盟、そして漢室への忠義


陳留を拠点とし、太史慈、徐盛という新たな力を得た白龍軍。その武名と仁政の噂は、徐々に中原にも広まりつつあった。的斗こと趙雲子龍の名は、新たな時代の英雄として、人々の口に上るようになっていた。

しかし、そんな彼らの前に、中原の覇権を狙う最大の障壁が立ちはだかろうとしていた。許都に献帝を擁し、急速にその勢力を拡大しつつあった曹操孟徳である。彼は、漢室復興という大義名分を掲げ、各地の有能な人材を積極的に登用し、その勢力は日に日に強大となっていた。

ある日、白龍軍の陣営に衝撃的な報せがもたらされた。曹操が、父・曹嵩そうすうを殺害されたことへの報復として、徐州で大規模な虐殺を行ったというのだ。数十万の民が犠牲となり、泗水しすいの流れが死体で堰き止められたという、凄惨な内容だった。その報を聞いた的斗は、怒りに震え、思わず握りしめた拳から血が滲んだ。彼の脳裏には、焦土と化した街、焼け爛れた家々、そして餓えと恐怖に怯える民の顔が鮮明に浮かび上がった。それは、ゲームのグラフィックでは決して伝わらなかった、血と肉の匂いがする現実の地獄だった。


「な…なんだと…!?罪のない民を、そんな…!」


的斗は、報告を聞き、激しい怒りに身体を震わせた。その脳裏には、序章で出会った常山の村の子供たちの笑顔や、これまでに助けてきた名もなき民衆の顔が浮かんでいた。


(あのような悲劇を…二度と繰り返させてはならない…!)


的斗の全身から、あの「龍の咆哮」を思わせるような、微かな金色のオーラが立ち上った。それは、的斗の義憤が極限に達した時に現れる、「龍の血脈」の片鱗だった。

貂蝉もまた、その報に顔を青ざめさせ、固く唇を噛んでいた。周倉や廖化、そしてかつて黄巾の乱で家族を失った経験を持つ兵士たちは、曹操への剥き出しの憎悪を露わにした。


「曹操…許すまじ!これは、もはや人間の所業ではない!」


的斗は、固く拳を握りしめた。


「皆の者、聞け!我ら白龍軍は、これより徐州の民のために、弔い合戦を挑む!国賊・曹操を討ち、この世に真の義を示すのだ!」


その言葉は、単なる正義感からだけではなかった。それは、この乱世で生きる全てのか弱き者たちを守りたいという、的斗の心の底からの叫びだった。


「趙子龍様、お気持ちは痛いほど分かります。しかし、曹操は強大。我々だけで正面から挑むのは無謀と言わざるを得ません」


軍議の席で、徐庶は冷静に的斗を諌めた。


「では、どうすれば…!このまま曹操の暴虐を黙って見過ごせというのか、先生!」


「いいえ。曹操を討つ好機はあります。今こそ、中原の諸侯と手を結び、広範な『反曹操連合』を結成すべきです。曹操の非道は、他の諸侯にとっても看過できぬはず。我々がその先駆けとなるのです」


徐庶の瞳には、確かな勝算が宿っていた。彼はすぐさま、曹操の非道を糾弾し、共に立ち上がることを呼びかける檄文を作成した。その内容は、各勢力の利害やプライドを巧みに刺激する、見事なものだった。徐庶は、的斗から聞いた「現代の外交術」や「情報戦の重要性」を深く理解し、この時代の言葉と状況に置き換えて、巧みに策を練り上げた。


「この檄文を、袁紹、劉表殿、そして北平の公孫瓚殿など、曹操と対立する可能性のある全ての勢力に送ります。特に袁紹は、その才を過信するあまり、有能な軍師である許攸のような者たちを冷遇しているとの噂もあります。その不和を突けば、内から曹操に対抗する動きも生まれるでしょう」


的斗は、徐庶の策に同意し、自らも使者の一員として、最大の勢力を誇る冀州の袁紹の元へと向かった。


袁紹は、名門・袁家の当主としてのプライドが高く、成り上がり者である曹操を快く思っていなかったが、同時に、急速に名を上げてきた的斗のことも警戒していた。


「ふん、趙雲子龍とやら。呂布を討った手並みは認めてやらんでもない。だが、貴様のような若造が、このわしに指図するとは片腹痛いわ」


袁紹は、的斗に対し尊大な態度で接し、連合への参加にも難色を示した。無理な条件を提示し、的斗を試そうとする。

的斗は、怒りを抑え、徐庶から授けられた交渉術を駆使した。彼は、現代社会で学んだ「交渉術」と、趙雲としての「威厳」を巧みに使い分け、荀彧の真意を探りながら、決して譲歩しすぎない姿勢を貫いた。


「袁紹公。我々の目的は、決して私利私欲のためではございません。全ては、漢室の安寧を取り戻し、天下に泰平をもたらすため。曹操の専横は、もはや漢王朝そのものを脅かす存在。今こそ、我々が力を合わせ、共に国賊・曹操を討つべき時ではないでしょうか。貴公のような名門の筆頭が立ち上がれば、天下の諸侯も必ずやそれに呼応するでしょう」


時にはへりくだり、時には大義名分を掲げ、時には袁紹のプライドをくすぐる。粘り強い交渉の末、袁紹は渋々ながらも、対曹操での協力と、連合への参加を承諾した。

しかし、その表情には、依然として的斗への不信感と警戒心が色濃く残っていた。郭図や審配といった袁紹の側近たちもまた、的斗を危険視するような眼差しを向けていた。


(一筋縄ではいかないな…この連合、本当に一枚岩になれるのか…?)


的斗は、一抹の不安を抱えながらも、反曹操連合という大きな流れを作り出すことに成功した。

劉表や公孫瓚もまた、徐庶の檄文や、的斗と袁紹の動きに呼応し、連合への参加を表明した。

中原に、巨大な嵐が巻き起ころうとしていた。その中心には、曹操という強大な敵がいる。そして、その嵐に立ち向かおうとする若き龍、趙雲子龍の姿があった。

彼の「義」の戦いは、今、新たな局面を迎えようとしていた。

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