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第32話:大きくなる責任と心の隙間! 貂蝉の優しさと的斗の成長、そして仲間たちの変化

第32話:大きくなる責任と心の隙間! 貂蝉の優しさと的斗の成長、そして仲間たちの変化


白龍軍は、太史慈、徐盛という頼もしい将を加え、その勢力を着実に拡大しつつあった。兵力は日を追うごとに増え、練度も向上。陳留の支配も安定し、民衆の信頼も深まっていた。しかし、軍の規模が大きくなるにつれ、新たな問題もまた生まれてくる。それは、組織を維持するための「規律」と「人心」の均衡という、的斗が今まで直面したことのない課題だった。

ある日、古参である周倉の部下と、新参である太史慈の部下との間で、些細なことから大きな揉め事が発生し、軍規を破っての私闘にまで発展してしまった。彼らは、互いの隊の功績を自慢し合い、酒の勢いも手伝って殴り合いになったという。

報告を受けた的斗は、頭を抱えた。古参の兵士たちは、自分たちが初期から的斗を支えてきたという自負があり、新参の者たちに対してどこか尊大な態度を取ることがあったのだ。一方、新参の兵士たちも、的斗の「仁義」に惹かれて来ただけに、古参の不当な振る舞いを許せなかった。


「趙雲様、これは見せしめが必要です。軍規は軍の礎。これを軽んじれば、いずれ組織は内から崩壊しますぞ。特に、身分の区別なく公平な裁きを下すことが、後の世にも範を示します」


徐庶は、厳格な処罰を進言した。しかし、的斗は古参の兵士たちへの情もあり、なかなか決断できずにいた。周倉の部下を厳罰に処すれば、彼自身の信頼を損ねるかもしれない。だが、太史慈や徐盛、そして新参の兵士たちの不満が爆発する可能性もある。


(周倉の部下だからといって甘い処分をすれば、太史慈や徐盛の顔が立たない…かといって、厳しすぎれば古参の連中が不満を抱くかもしれない…リーダーって、本当に難しいな…ゲームなら、最適な選択肢がいくつか表示されるけど、現実はそうじゃない…)


数日悩んだ末、的斗は徐庶の言葉の重みを理解し、双方の主な責任者を呼び出し、公平に処罰を下した。私闘を起こした兵士には、禁足と一定期間の給料没収を命じ、それを指揮した下級将校には、降格と謹慎を命じた。そして、全軍の兵士たちの前で改めて軍規の重要性を説き、「法は万人に平等である。身分や功績に関わらず、これを破る者は許さない。これより白龍軍は、武力だけでなく、規律と法によって天下を治める軍となる!」と宣言した。

その毅然とした態度は、兵士たちに「趙雲様は本気だ」という認識を植え付け、軍全体の規律を引き締める効果をもたらした。的斗自身もまた、この一件を通じて、リーダーとしての厳しさと、法の重要性を痛感することとなった。


軍議の席では、的斗が時折口にする現代的な言葉や発想が、徐庶を感嘆させることもあった。


「先生、この作戦の進捗管理ですけど、もっとこう…物事を『計画し、実行し、結果を評価し、改善を繰り返す』。この考え方は、どのようにすればこの時代の戦に活かせるでしょうか?例えば、兵糧の消費量、兵士の練度、情報の伝達速度などを、より客観的に捉えて管理していくことはできないでしょうか?」


徐庶は、的斗の言葉に目を見開いた。その発想は、これまでの兵法にはない、根本的な視点の違いを示唆していたからだ。徐庶は、的斗の言葉の奥にある本質を即座に見抜いた。その言葉は、まるで千年も先の未来から紡がれたかのように斬新であり、徐庶の知的な好奇心を激しく刺激した。


「ほう…子龍殿の言う『物事を計画し、実行し、評価し、改善を繰り返す』。そして『客観的に捉えて管理する』…そのような考え方には、確かに効率と合理性の妙を感じますな。これは、我々がこれまで感覚的に行ってきたことを、より客観的かつ体系的に捉えることを可能にする。これを各部隊の練度や、兵站の管理に応用できれば、より的確な指揮を執れるでしょう。まさに、貴殿は『天』から与えられた知恵をお持ちのようだ」


徐庶は、的斗の言葉尻を捉えるのではなく、その思考の意図を深く探ろうとした。そして、その問答の中から、新たな軍事・行政の仕組みが生まれることも少なくなかった。


(このお方…時折、常人では思いもよらぬ視点から物事を捉えられる。その発想の端々には、まるで未来の戦を知っているかのような鋭さがある。やはり、ただ者ではない…彼の『龍の血脈』は、単なる武力だけでなく、彼の思考そのものにも影響を与えているのかもしれない。この知恵を、いかにこの乱世に活かすか…それが、私の使命だ)


徐庶は、的斗の持つ未知の可能性に、ますます期待を寄せるようになっていた。


しかし、そのような非凡さを見せる一方で、的斗はリーダーとしての重圧や、自身の力の不安定さ(龍の力を使った後の消耗など)、そして誰にも言えない転生者としての孤独感に、人知れず悩むこともあった。特に、董卓や呂布を討った際に感じた、あの圧倒的な力の反動は、未だに彼の心と身体に重くのしかかっていた。彼は、自分の能力がいつ暴走するかも知れぬという不安を、常に胸の奥に抱えていたのだ。

そんな的斗の心の隙間を埋めてくれるのは、いつも貂蝉の存在だった。

ある夜、的斗が一人、月を見上げながら物思いに耽っていると、貂蝉がそっと隣に寄り添った。彼女の手には、的斗のために煎じた温かい薬湯が握られていた。


「子龍様…また何か、お悩みですか?」


貂蝉は、的斗の疲弊した顔を心配そうに見つめた。


「ああ、貂蝉さん…いや、大したことじゃないんだ。ただ、俺は本当に、みんなを導いていけるだけの器なのかなって、時々不安になるんだ。軍が大きくなるにつれて、悩みも増える。それに、俺の中にあるこの力…まだ全然使いこなせないし、いつ暴走するかも分からない…もし、そのせいで誰かを傷つけてしまったら、どうすればいいんだ…?」


的斗は、転生者であることまでは明かさなかったが、珍しく弱音を吐いた。彼の言葉には、人知を超えた力を操る者の、深い苦悩が滲んでいた。

貂蝉は、そんな的斗の手を優しく握った。彼女の指先は温かく、的斗の不安な心をじんわりと癒していくようだった。


「あなたは、一人ではありませんわ。私たちがいます。あなたの苦しみも、喜びも、全て私たちが共に分かち合います。そして、あなたの中にあるそのお力は、きっと天があなたに与えた、民を救うためのもの。焦らず、ゆっくりと向き合っていけば、必ずや使いこなせる日が参ります。私も、微力ながら、そのお手伝いをさせてください」


その言葉は、まるで聖母のような慈愛に満ちており、的斗の荒んだ心を温かく包み込んだ。彼女の瞳は、月光を宿し、的斗の心に深く響いた。


「ありがとう…貂蝉。君がいてくれるから、俺はまだ頑張れるよ。君は、俺の…いや、この白龍軍の光だ」


二人は、言葉少ながらも、夜空の下で互いの存在を確かめ合い、心の絆を深めていった。それは、単なる主従の関係を超え、夫婦として、そして魂の伴侶としての、揺るぎない絆だった。


そして、的斗だけでなく、最初の仲間たちもまた、新たな環境の中で着実に成長を遂げていた。

周倉は、単なる力自慢の猛将から、的斗の理念を深く理解し、部下たちの面倒見も良く、的斗の意図を汲んで的確に行動できる、頼れる部隊長へと変わりつつあった。彼は、的斗の「仁義」を最も純粋な形で体現する存在となっていた。

廖化は、その豊富な人生経験と知恵で、若い兵士たちの良き相談役となり、時には軍内部の潤滑油のような役割を果たし、徐庶からも一目置かれる存在となっていた。彼の持つ情報網は、白龍軍の目と耳として、常に的確な情報をもたらした。

裴元紹は、斥候としての腕をさらに磨き、その俊敏さと正確な情報収集能力は、白龍軍の「目」として欠かせないものとなっていた。彼の負傷は癒え、以前にも増して鋭敏な五感と、隠密行動の達人としての才を発揮していた。

彼らの成長もまた、的斗にとって大きな喜びであり、力となっていた。


貂蝉や仲間たちの支えによって、精神的に大きく成長した的斗。その瞳には、もはや以前のような迷いはなかった。彼は、自身の「龍の血脈」の力を、単なる武器としてではなく、民を守り、国を豊かにするための「恵み」として捉え始めていた。


(俺は、この仲間たちと共に、必ずやり遂げる…!この『龍の力』も、必ず俺の意志で完全に御してみせる!)


改めて「打倒曹操」、そしてその先にある「天下泰平」という壮大な目標を見据え、的斗は次なる戦いへの覚悟を固めるのだった。

白龍軍の伝説は、まだ始まったばかりだ。

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