表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/64

第31話:江東の猛虎、徐盛推参! 白龍軍、さらに強固に、水軍の萌芽と的斗の器

第31話:江東の猛虎、徐盛推参! 白龍軍、さらに強固に、水軍の萌芽と的斗の器


太史慈という希代の弓の名手を加え、白龍軍の士気はますます高まっていた。北海での勝利は、彼らの名声をさらに中原に広める結果となり、的斗こと趙雲子龍の名は、新たな時代の英雄として、人々の口に上るようになっていた。

そんなある日、白龍軍が新たに確保した拠点(陳留近郊の小さな城)に、一人の武将が少数の供回りを連れて訪ねてきた。年の頃は三十前後、日に焼けた精悍な顔つきで、飾り気のない実直そうな男だった。その鎧は質素だが、手入れが行き届いており、その姿からは堅牢な「盾」を思わせるような、揺るぎない気配が漂っていた。


わたくしは、揚州曲阿きょくあ徐盛じょせい、字を文嚮ぶんきょうと申す者。近頃、貴軍に仕官された太史慈殿とは旧知の間柄。趙子龍将軍の義名と、太史慈殿がそこまで惚れ込まれたというそのお器量を、この目で確かめたく参上いたしました」


徐盛と名乗った男は、多くを語らず、ただ真っ直ぐに的斗を見据えた。その瞳には、確かな自信と、冷静な観察眼が宿っている。


的斗は最初、そのあまりにも地味な風貌と朴訥な口調に、どこか拍子抜けしたような印象を抱いた。(ゲームではもっと目立たないキャラだったよな…)しかし、隣にいた徐庶は、徐盛の纏う落ち着いた雰囲気と、その言葉の端々に滲み出る実直さから、彼がただ者ではないことを見抜いていた。


「これは徐盛殿、遠路ようこそお越しくださいました。まずは旅の疲れを癒してください。白龍軍は、貴殿のような才ある方を常に歓迎いたします」


的斗は、徐庶の目配せを受け、丁重に徐盛を迎え入れた。


数日後、的斗は徐盛に、白龍軍の陣営や訓練の様子を案内した。徐盛は、黙ってそれらを見て回っていたが、やがて、的斗が新たに築こうとしている拠点の防御施設の前で足を止めた。


「趙子龍殿、失礼ながら申し上げます。この拠点の守り、些か心許ないように見受けられまする」


徐盛は、率直にそう指摘した。彼の目は、まるで城壁のわずかな亀裂まで見通すかのように、的確に弱点を見抜いていた。


「と、申されますと?」


「はい。地形の利が十分に活かされておらず、敵の侵入経路も複数考えられます。特に、南側の丘陵地帯からの攻撃には脆弱であり、このままでは、寡兵の敵にも容易に突破されるやもしませぬ」


的斗は、徐盛の的確な指摘に内心驚いた。自分では気づかなかった弱点を、彼は一目で見抜いたのだ。


「もしお許しいただけるならば、この徐盛が、この砦の改修をお手伝いいたしましょう。三日のうちに、今よりも遥かに堅固なものにしてみせます」


的斗は、徐盛の自信に満ちた言葉に興味を抱き、彼に改修の指揮を任せてみることにした。

それからの徐盛の働きは、目覚ましいものだった。彼は自ら図面を引き、兵士たちに的確な指示を与え、地形を巧みに利用した罠や障害物を配置していく。その指揮ぶりは無駄がなく、兵士たちの役割分担も的確で,みるみるうちに砦の防御力は向上していった。彼は兵士たちと共に泥まみれになりながら、細部にまでこだわり、まるで生き物のように砦を強化していくその姿は、的斗に、この男が真の職人であると確信させた。

そして三日後、そこには以前とは比べ物にならないほど堅牢で、機能的な砦が完成していた。的斗は、そのあまりの変化に、思わず息をのんだ。


「素晴らしい…!徐盛殿、貴殿の築城術、まさに神業だ!」


的斗は、心からの称賛を徐盛に送った。太史慈もまた、「さすがは文嚮殿。その手腕、相変わらず見事なものよ。江東では、彼に並ぶ築城の名手はおらぬ」と旧友の活躍を喜んだ。

徐盛は、照れたように頭を掻いた。


「いえ…これしきのことは…」


その夜、的斗は徐盛を自室に招き、改めて礼を言うと共に、彼の見識を問うた。


「徐盛殿、貴殿は揚州のご出身とか。長江流域の地理にもお詳しいのでは?」


「はい。幼き頃より、長江の岸辺で育ちましたゆえ、水賊の動きや水運の重要性は、身をもって承知しております。特に、呉の地で水軍の訓練を積んでまいりました」


徐盛は、そこで熱っぽく語り始めた。彼の瞳には、長江への深い愛情と、水軍の重要性を説く情熱が宿っていた。


「趙子龍殿。天下を制するには、中原の陸路を抑えるだけでなく、この長江の水運を掌握することが不可欠にございます。水運は物資輸送の大動脈であり、水軍は敵の背後を突く奇襲の要。もし強力な水軍を擁することができれば、それは我らの大きな力となりましょう。逆に、これを敵に握られれば、我々は常に側面からの脅威に晒されることになります。将来、曹操や孫権といった勢力と戦う上で、水軍は避けて通れません」


徐盛の言葉には、確かなデータと長年の経験に裏打ちされた説得力があった。

的斗は、その言葉の重要性を即座に理解した。


(確かにそうだ…ゲームでも、水軍の強い勢力は厄介だった…!特に、これから曹操や孫権と渡り合うためには、強力な水軍は必須だ!現代の戦争でも、制海権や制空権の重要性は変わらないしな…!)


「徐盛殿、貴重なご意見、感謝する。その通りだ。我々も、強力な水軍を創設しなければならない!」


的斗は、決然と言った。


「つきましては、徐盛殿。貴殿に、その水軍創設の一翼を担っていただきたい。貴殿の知識と経験は、必ずや白龍軍の大きな力となるだろう。是非とも、この趙雲子龍の助けとなってくれ!」


徐庶もまた、的斗の言葉に深く頷いた。


「徐盛殿の申される通り。水軍の強化は、今後の我々の戦略において死活問題となりましょう。是非とも、お力をお貸しいただきたい。貴殿の堅実な才は、白龍軍に不可欠です」


徐盛は、的斗と徐庶の真剣な眼差しを受け、しばし黙考した後、力強く頷いた。


「…分かりました。この徐文嚮、趙子龍将軍のそのお器量と、国の未来を見据えるそのお考えに感服いたしました。そして、この徐盛の才を正しく評価してくださることに感謝いたします。微力ながら、白龍軍の水軍創設のため、この身命を賭して尽力させていただきます!」


こうして、また一人、頼もしい仲間が白龍軍に加わった。徐盛の加入は、白龍軍の守りを固めるだけでなく、将来の長江進出への大きな布石となるのだった。

太史慈の弓、徐盛の盾。そして、的斗の槍。白龍軍は、着実にその陣容を整え、中原の覇権へと歩みを進めていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ