第30話:義の武人、太史慈見参! 熱き魂の共鳴と弓術の披露、そして母への想い
第30話:義の武人、太史慈見参! 熱き魂の共鳴と弓術の披露、そして母への想い
的斗率いる白龍軍本隊が北海に近づいた頃、先行していた周倉、廖化、裴元紹の部隊は、管亥軍の別動隊と激しい戦闘を繰り広げていた。敵は数で勝り、周倉たちの奮戦もむなしく、徐々に追い詰められつつあった。周倉の大薙刀が敵兵を薙ぎ払うが、次々と新たな敵が押し寄せ、裴元紹の俊敏な動きも、敵の数の前に限界を見せ始めていた。廖化は冷静に指示を飛ばすが、兵士たちの疲労は蓄積され、士気は低下しつつあった。彼らの顔には、焦りと絶望の影がよぎり始めていた。
「くそっ、キリがねえぜ!このままじゃ、援軍が来る前にやられちまう!」
周倉が悪態をついたその時、地響きと共に新たな軍勢が現れた。白地に龍の紋章を染め抜いた旗印――的斗率いる白龍軍本隊の到着だった。その旗を見た瞬間、白龍軍の兵士たちの間に、新たな活力が漲った。彼らは「趙雲様だ!」と歓声を上げ、疲労を忘れ、再び戦意を高めた。
「皆、大丈夫か!加勢するぞ!」
的斗の力強い声が響き渡り、白龍軍の兵士たちが一斉に管亥軍に襲いかかった。的斗の全身からは、微かな金色のオーラ(龍の威光)が発せられ、それが白龍軍の兵士たちの士気を最大限に高め、管亥軍の兵士たちには恐怖を植え付けた。
その乱戦の最中、的斗は信じられない光景を目にした。
戦場の片隅から、たった一騎の武者が、まるで怒涛のように管亥軍の本隊へと突撃していくではないか。その武者は、漆黒の鎧に身を固め、手には精巧な戟を握りしめている。背には巨大な弓を背負い、腰には無数の矢が収められた矢筒が揺れていた。その姿は、まさしく「一騎当千」という言葉が相応しかった。
「母上の恩義に報いるため、そして孔文挙様を救うため、この太史子義、一命を賭して参る!」
その叫び声は、戦場の喧騒の中でも、的斗の耳にはっきりと届いた。
(太史慈…!間違いない、あの人が太史慈だ!まさか、こんな形で出会うとは…!しかも、単騎で敵陣に突っ込むなんて、無謀すぎる!この男…義のために、命を惜しまないのか…!その心は、俺の『仁義』と通じるものがある…!)
ゲームで知る、義に厚く弓の名手としても名高い武将。彼が、なぜこんな無謀な突撃を…?的斗は、彼の行動に驚きと、同時に深い感銘を受けていた。
太史慈は、単騎で敵陣深くに斬り込み、次々と敵兵を薙ぎ倒していく。その武勇は凄まじいが、さすがに多勢に無勢。徐々に敵兵に囲まれ、その動きが鈍り始めた。矢が鎧に突き刺さり、剣が彼の肉を掠める。
「まずい!助けなければ!」
的斗は、即座に馬首を返し、太史慈の救援へと向かった。
「貴殿は!?一体なぜこのような無謀を!」
的斗は、太史慈の傍らに駆けつけ、槍を振るって敵兵を蹴散らしながら叫んだ。彼の槍捌きは、まさに竜が舞うかのようだった。
「趙子龍殿か!かたじけない!私は太史慈!孔文挙様にかつて受けたご恩をお返しするため、馳せ参じた!この命、惜しくはな…い!」
太史慈は、汗まみれの顔でニヤリと笑った。その瞳には、まだ消えぬ闘志が宿っていた。
「ならば、そのお手伝いをさせてもらおう!俺たちの旗は、仁義の旗だ!」
「恩に着る!」
二人の英雄は、言葉少なながらも互いの魂を通わせ、背中合わせで戦い始めた。的斗の変幻自在な槍術が敵を穿ち、太史慈の豪快な戟術が敵を薙ぎ払う。時折、太史慈が背負った弓から放たれる矢は、正確無比に敵将の眉間を射抜き、敵兵の指揮を乱した。
共に戦う中で、的斗は不思議な感覚を覚えていた。太史慈の放つ、どこまでも真っ直ぐで熱い「義の気」のようなものが、自分の内なる「龍の気」と共鳴し、互いの力を高め合っているような感覚。身体が軽く、槍が冴え渡る。それは、まるで自分と太史慈の「気」が、一本の線で繋がったかのようだった。
「貴殿の槍捌き、見事!まるで、天を舞う龍のようだ!」太史慈が叫ぶ。
「そなたの弓術こそ神業だ!百発百中、神の領域だな!」的斗も応える。
二人の連携は完璧で、周囲の敵兵はなすすべもなく打ち破られていった。
やがて、管亥軍の本陣が崩れ始め、賊の頭目である管亥自身も、この二人の英雄の前に姿を現した。管亥は、かつて黄巾の乱に身を投じ、その理想に燃えた男だったが、今はその理想を見失い、ただ暴虐を繰り返すだけの存在となっていた。その目は血走り、全身から下劣な殺意を放っていた。
「小僧どもめ!この俺を誰だと心得える!黄巾の旗の前にひれ伏せ!」
管亥は喚き散らしながら大斧を振るうが、もはや的斗と太史慈の敵ではなかった。太史慈が放った矢が管亥の肩を正確に射抜き、怯んだところを、的斗の槍がその胸を正確に貫いた。
「ぐ…ふ…太平の…世は…」
管亥は、何かを言いかけたまま、どさりと地面に崩れ落ちた。その瞳は、最期に一瞬だけ、かつて抱いていた理想の光を宿したように見えた。それは、彼もまた、乱世の犠牲者であったことを示唆していた。
管亥を討ち取ったことで、残党は蜘蛛の子を散らすように逃げていき、北海の包囲は解かれた。
城門が開き、孔融がやつれた姿で的斗と太史慈の前に現れ、涙ながらに感謝の言葉を述べた。
その夜、城内で催された祝宴の席で、的斗は改めて太史慈に礼を言った。
「太史慈殿、今日の貴殿の勇猛果敢な戦いぶり、誠に見事であった。我が白龍軍に、貴殿のような義の武人が加わってくれれば、これほど心強いことはない。どうか、我らと共に、この乱世に仁義の旗を掲げ、民のための世を築いてはいただけませんか?」
太史慈は、的斗の真っ直ぐな瞳を見つめ、深く頷いた。その目には、的斗の「仁義」の心と、その内に秘められた「龍の威光」への深い共鳴が宿っていた。
「趙子龍殿…私もまた、貴殿の武勇、そして何よりもその『仁義』の心、民を思う姿勢に深く感銘を受けました。貴殿のその瞳の輝きは、この乱世の闇を照らす光。この太史子義、喜んで貴殿にお仕えし、その理想の実現のお手伝いをさせていただきたい!」
こうして、太史慈は正式に白龍軍の一員となった。
祝宴の最中、的斗の計らいで、太史慈がその弓術の腕前を披露することになった。彼は、百歩以上離れた場所に立てられた柳の葉を見事に射抜いてみせ、さらに風の強い中で、空を飛ぶ鳥の眼を射抜くという神業を披露し、的斗や周倉たち、そして白龍軍の将兵全てを驚嘆させた。
「素晴らしい!太史慈殿がいれば、百人力だ!」
仲間たちの称賛の声に、太史慈は少し照れくさそうに微笑んだ。
その夜、太史慈は故郷の母に手紙を書いた。「母上、私は本日、趙雲子龍という、真に民を思う素晴らしい主君に巡り会うことができました。彼の掲げる『仁義』は、決して偽りではない。私はこの方の元で、天下泰平のために力を尽くす所存です。どうぞ、ご安心ください…」
新たな仲間を得て、白龍軍はさらにその力を増した。彼らの次なる目標は、中原の覇権を確立すること。しかし、そのためには、さらなる強敵との戦いが待ち受けているのだった。




