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第26話:一騎打ち! 趙子龍VS呂奉先、因縁の再戦!

第26話:一騎打ち! 趙子龍VS呂奉先、因縁の再戦!


徐庶の神算鬼謀は、天下無双と謳われた呂布軍を、確実に死地へと追い込んでいた。

兵糧は焼け落ち、諸将の心は離れ、頼みの陥陣営も的斗と周倉の連携によって打ち破られた。かつて董卓をも震え上がらせた呂布の武威は、見る影もない。残された兵士たちの顔には、絶望と恐怖が浮かび、呂布の指揮にもはや従う者などごく僅かだった。


「おのれ…おのれ、趙子龍!よくもこの俺を…!」


呂布は、焼け落ちた兵糧庫から立ち上る黒煙を、自らの本陣から忌々しげに見つめていた。その顔は怒りと屈辱に歪み、獣のような唸り声を上げている。彼の目に映るのは、自身の裏切りを正当化してくれる「都合の良い現実」だけだった。自身の愚かさによって自滅した過去への後悔と、それを全て的斗たちの策略のせいにするかのような、歪んだ執念が彼の心を支配していた。もはや彼に従う者は、ごく僅かな手勢しか残っていなかった。

陳宮は、そんな呂布の姿を遠巻きに見ながら、深く長いため息をついた。彼の瞳には、かつて理想を託した男が、その愚かさゆえに自滅していく悲哀が映し出されていた。


(ああ、呂布様…もはやこれまでか…貴方様は、結局、真の覇者にはなれなかったのだな…)


その嘆きは、誰にも届くことはなかった。


完全に孤立し、絶望的な状況に追い込まれた呂布。しかし、その瞳の奥には、まだ消えぬ狂気じみた光が宿っていた。天下無双の武人としての、最後のプライド。それは、もはや勝利への執着ではなく、己の武の尊厳だけを賭けた、自暴自棄にも似た最後の足掻きだった。


「趙子龍!聞こえるか、趙子龍!!この呂奉先が、貴様との一騎打ちを望む!雌雄を決しようではないか!もし俺が勝てば、貴様らは全軍撤退しろ!もし貴様が勝てば…この呂布の首、くれてやるわ!!」


呂布の咆哮が、戦場に響き渡った。それは、追い詰められた獣の、最後の足掻きのようでもあった。

その挑戦を、的斗は白龍軍の本陣で聞いた。彼の表情は、一瞬にして引き締まった。


「…受けて立ちましょう」


的斗は、静かに、しかしきっぱりと言った。その声には、一切の迷いがなかった。それは、王允の死、貂蝉の苦しみ、そしてこの乱世の理不尽に対する、的斗の全身全霊を込めた「NO」の意思表示だった。

徐庶が、心配そうに声をかける。


「趙子龍殿、お身体はまだ万全ではありますまい。先の『龍の咆哮』の反動がまだ残っているはず。それに、呂布は追い詰められております。どのような罠があるやも…」


「分かっています、先生。ですが、ここで俺が逃げるわけにはいきません。それに、これは俺自身の戦いでもあるのです。王允様の無念を晴らし、貂蝉さんの苦しみを終わらせる…その全てを、この一撃に込める!(今度こそ、俺の力で…この手で、全てを終わらせるんだ!)」


的斗の脳裏には、過去の出来事が鮮明に蘇っていた。王允の無念の死、貂蝉の悲しみ、そして、呂布の圧倒的な力の前に何もできなかった自分。その時の悔しさと、この乱世に義を示すという強い覚悟が、彼の全身を突き動かしていた。

もはや、的斗の心に迷いはなかった。それは、単なる雪辱や功名心ではない。この乱世に義を示し、平和な世を築くという、リーダーとしての確固たる決意だった。


「趙雲様!今度こそあの化け物を叩きのめしてくだせえ!」周倉が拳を握りしめる。

「趙雲様、油断めさるな。呂布は追い詰められた獣と同じですぞ。何をしてくるか分かりません」廖化が冷静に忠告する。

「趙雲様の武運を、この裴元紹、心から祈っております!」裴元丈が力強く言った。


そして徐庶は、的斗の揺るぎない決意を見て取ると、深く頷いた。


「…分かりました。趙子龍殿、貴殿のその力と、そして我々のこれまでの全てを信じております。必ずや、勝利は我らにありましょう。この戦いをもって、白龍軍の名を天下に轟かせるのです!」


仲間たちの激励が、的斗の背中を強く押した。

遠く離れた白龍軍の後方では、貂蝉が、的斗から預かったお守りを胸に、固く目を閉じて祈りを捧げていた。


(子龍様…どうか、ご無事で…あなたの目指す世を、私も…そして、あなた様と共に、この地獄を…)


彼女の頬を、一筋の涙が伝った。


やがて、両軍が見守る広大な平原の中央に、二人の英雄が馬を進めた。

呂布は、燃えるような赤兎馬に跨り、その手には天下無双の方天画戟が握られている。その姿は、まさに戦神。全身から溢れ出る狂気じみた覇気は、周囲の兵士たちを威圧した。

対する的斗は、雪のように白い愛馬「白龍」に跨り、銀色の槍を静かに構える。その瞳は、一点の曇りもなく呂布を見据えていた。彼の身体からは、静謐な、しかし底知れない「龍の気」が微かに漂い、呂布の狂気にも似た覇気とは対照的な、清らかな威光を放っていた。

奇しくも、空はにわかに掻き曇り、冷たい風が吹き始めていた。まるで、これから始まるであろう壮絶な戦いを暗示するかのように。


「来たか、趙子龍…!」

「呂奉先…!お前の悪逆非道も、今日で終わりだ!」


言葉はもはや不要。二人の間には、凄まじい闘気が渦巻き、周囲の空気を震わせる。

赤兎馬が天高く嘶き、白龍もまた、それに呼応するように猛々しく首を振る。

天下分け目の一騎打ち。

歴史の歯車が、今、再び大きく動き出そうとしていた。

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