第24話:初陣激突! 張遼・高順との死闘、龍の咆哮と代償、そして成長への道標
第24話:初陣激突! 張遼・高順との死闘、龍の咆哮と代償、そして成長への道標
陳留を目指し進軍する白龍軍の前に、ついに呂布軍の姿が現れた。場所は、陳留へと続く街道筋の広大な平原。風が砂塵を巻き上げ、両軍は互いに数里の距離を置いて対峙した。
初めて本格的な大軍と相対する白龍軍の兵士たちの間には、緊張と武者震いが入り混じったような、独特の空気が流れていた。彼らは、敵の威容に飲まれそうになりながらも、的斗の旗の下に集った仲間たちと、厳しい訓練で培った自信を胸に、固唾を飲んで戦いの開始を待っていた。的斗もまた、高鳴る鼓動を抑えながら、馬上から敵陣を鋭く見据える。
(あれが、呂布軍…!数はこちらが少し上回っているかもしれないが、相手は天下無双の呂布に率いられた歴戦の猛者揃いだ…油断はできない…!だが、勝つのは俺たちだ!)
「全軍、鶴翼の陣を敷け!先鋒は裴元紹隊、続け周倉隊、廖化隊!本隊は中央、徐庶先生は後方で指揮を!」
的斗の号令一下、白龍軍は訓練通りに素早く陣形を展開する。その動きは、烏合の衆とは呼べないほどに統率が取れていた。将兵たちの間には、的斗の「仁義」と徐庶の「知略」への絶対的な信頼が漲っていた。
しかし、呂布軍もまた、歴戦の強者であった。その将兵の顔には、敵への容赦ない殺意が浮かんでいる。
「敵先鋒、突撃してくるぞ!」
見張りの兵士の叫び声と共に、呂布軍の先鋒が一斉に動き出した。その中心にいるのは、銀の鎧に身を固め、長大な矛を構えた一人の将。その精悍な顔つきと、鋭い眼光は、ただならぬ実力者であることを示していた。
「あれは…張遼文遠!呂布軍きっての猛将だ!」
徐庶が、的斗の傍らで呟く。
張遼率いる騎兵隊は、まるで一陣の疾風のように白龍軍の先鋒・裴元紹隊に襲いかかった。その突進力は凄まじく、白龍軍の槍衾をやすやすと突き破り、瞬く間に裴元紹隊の陣形を切り裂いていく。裴元紹は持ち前の俊敏さで応戦するが、張遼の巧みな指揮と騎兵の圧倒的な突進力の前に、徐々に押し込まれていく。
「くそっ、速い!そして強い!」
裴元紹は必死に食い下がるが、張遼の矛の一撃を受け、肩を負傷し落馬しかける。
「裴元紹!」
的斗は思わず叫んだ。
「裴元紹の援護に行くぞ!者ども、続け!」
周倉が、大薙刀を振りかざし、自らの部隊を率いて張遼軍に突撃する。しかし、その行く手を阻んだのは、鉄壁の守りを誇る別の部隊だった。一糸乱れぬ槍衾、寸分の隙もない盾の壁。彼らの進撃は、まるで巨大な鉄の塊のようであり、周倉の猛攻すらも、ことごとく跳ね返される。その部隊を率いるのは、寡黙ながらも、その瞳に鋼のような意志を宿した将、高順。彼の率いる「陥陣営」は、呂布軍最強の歩兵部隊として恐れられていた。
「うおおお!どけええい!」
周倉は力任せに陥陣営の陣形を崩そうとするが、高順の巧みな指揮の前に、その猛攻はことごとく跳ね返される。焦った周倉が深追いしようとした瞬間、廖化が冷静に声をかけた。
「周倉、待て!深追いするな!あれはただの歩兵ではない、罠かもしれん!」
廖化の言葉に、周倉はハッとして足を止めた。
戦況は、白龍軍にとって決して有利とは言えなかった。張遼の騎兵に先鋒が苦しめられ、高順の陥陣営に中央が足止めされている。このままでは、徐々に士気が低下し、押し切られてしまうかもしれない。
(くそっ…!このままじゃ…!徐庶先生との修練で掴みかけた『龍の気』の制御…今こそ、それを試す時だ!)
的斗は唇を噛んだ。リーダーとして、この状況を打開しなければならない。彼は、徐庶と共に修練してきた「龍の気」の制御を意識し、丹田に集中することで内なる力を高め、槍へと流し込もうと試みた。
彼は意を決し、馬を前に進めた。
「張文遠殿とお見受けする!いかにも、白龍軍大将、趙雲子龍なり!尋常に勝負いたせ!」
(中略:張遼との一騎打ち、的斗が追い詰められる場面)
(強い…!これが、呂布軍の猛将…!だが、俺だって…!裴元紹が…仲間が傷ついている…!俺がここでやられたら、みんなが…!貂蝉も、王允様の想いも、全て無駄になる…!こんなところで、終わらせてたまるか!! 練り上げた気を、槍の一点に集中させ、この状況を打開するんだ!)
守りたいという強い想いと、高ぶる感情が、的斗が意識的に制御しようとしていた「龍の気」を、予期せぬ方向へと一気に増幅させた。それは彼が意図した精密な力の集中ではなく、もっと広範囲で、荒々しい力の奔流だった。
「うおおおおおおおおおおっ!!」
的斗の身体から、突如として金色のオーラが迸った。それは、天を衝くような力強い咆哮と共に、周囲の空気を震わせた。そのオーラは、的斗の周囲の砂塵を巻き上げ、小さな竜巻を作り出すかのように渦巻いた。その咆哮は、まるで万雷が轟くかのようで、呂布軍の兵士たちは、その音に思わず耳を塞ぎ、馬は怯えて嘶いた。それは、単なる武人の気迫ではなく、まるで古の龍がその威を示したかのような、超常的な現象だった。
「なっ…!?またあの時の…いや、それ以上の威圧…!」
張遼は、的斗の尋常ならざる変化に目を見張る。董卓誅殺の際に趙子龍が見せたという、伝説じみた力の片鱗を思い起こさせた。彼の愛馬が、その覇気に怯えて嘶き、数歩後ずさった。周囲の兵士たちも、まるで金縛りにあったかのように動きを止め、その場にへたり込む者も現れた。それは、まさに「龍の咆哮」――的斗の内に秘められた龍の力が、仲間を守りたいという激情によって、彼が意図した制御の枠を超えて解放された瞬間だった。
的斗は、その一瞬の隙を逃さなかった。金色に輝く槍を、雷光のように張遼に叩き込む。張遼は辛うじてそれを受け止めるが、その衝撃に体勢を崩し、馬から振り落とされそうになる。
「退け、張遼!ここは一旦引くぞ!」
高順が、冷静に張遼に撤退を指示する。張遼は悔しげに的斗を睨みつけながらも、部隊をまとめて後退していった。
白龍軍の初陣は、辛くもではあったが敵の先鋒を退けることに成功した。それは、歴史上ではこれから始まる呂布軍の蠢動を押し止めたこととなり、本来あるべきだった歴史が少しずつ改変され始めていることを明確に示していた。
「…はぁ…はぁ…ぐっ…!(しまった…!まただ…感情に流されて、力を制御しきれなかった…!)」
「龍の咆哮」を使った後、的斗の身体を激しい疲労感と、内側からの反動のような痛みが襲った。馬上でぐらつきそうになるのを、必死に堪える。全身の筋肉が軋み、頭の奥で強い痛みが脈打つ。喉は焼け付くように乾き、吐き気がこみ上げてくる。董卓を討った時ほどの生命の危機は感じないものの、まるで全身の気力を根こそぎ持っていかれたかのような激しい倦怠感に襲われた。
(今の力…また、感情に任せて使ってしまった…でも、おかげで張遼を退けられた…だが、この消耗は…!このままでは、本当にいつか戦場で倒れてしまう…力の使い方を、もっと根本から見直さないと…!)
徐庶が、心配そうに的斗の元へ駆け寄ってきた。その瞳には、驚きと共に、的斗の持つ力の底知れなさへの畏敬の念、そしてその制御の難しさへの懸念が浮かんでいた。
「趙子龍様!ご無事ですか!?先ほどのあの力は…以前、董卓を討たれた際に拝見した力と似ておりますが、それでもなお強力でした。しかし、お身体への負担も相当なものとお見受けします。もしや、また以前のような高熱が…?」
徐庶の問いに、的斗は首を横に振った。
「分かりません…修練で少しは制御できるようになったと思ったのですが…いざとなると、感情が…っ。董卓様の時ほどの反動ではないと思いますが、それでも…このままでは…。 しかし、俺たちの仲間を守る力になるなら…俺は、この力を必ず完全に使いこなしてみせる…!この力こそが、俺がこの乱世を生き抜くための、そして天下泰平を成し遂げるための、唯一の希望なのだから…!」
徐庶は静かに頷いた。的斗の言葉と、その瞳の奥に宿る決意の光に、彼は深く感銘を受けていた。
「左様ですな。激情は時に強大な力を生みますが、それは諸刃の剣。真の強さとは、その力を御し、必要な時に必要なだけ振るうこと。董卓を討たれた時、貴殿は無意識のうちにその力を解放されましたが、今回は、貴殿が意識的に力を使おうとした結果、感情の昂ぶりに引きずられ、意図せぬ形で発現したように見えました。それは、ある意味で成長の証とも言えましょう。しかし、その力の源泉と正しい制御法を見出さねば、いずれ貴殿自身を滅ぼしかねません。 今回の戦いは、そのための貴重な教訓となりましょう。子龍殿の成長を、私も全力で支えますぞ。この力の源が何であれ、それを正しく導くのが、私の役目です」
徐庶の言葉は、的斗にとって新たな道標となった。
しかし、本当の戦いは、これから始まるのだ。的斗は、この戦いで得た教訓と、徐庶の言葉を胸に、陳留の城を見据え、静かに闘志を燃やすのだった。




