第23話:出陣! 目指すは陳留、飛将呂布の本拠地
第23話:出陣! 目指すは陳留、飛将呂布の本拠地
白龍軍が荊州南部の拠点で着実に力を蓄えていた頃、中原では新たな暴君がその牙を剥き始めていた。再び李傕・郭汜軍に攻め立てられ、長安を追われた呂布が、東の陳留に拠点を築き、そこで再び圧政を敷いているというのだ。呂布は自らを「天下の覇者」と称し、その武威を背景に、各地で略奪と暴行の限りを尽くしていた。彼の兵士たちは、略奪を公然と行い、美しい娘を奪い、逆らう者には容赦なく剣を振るうなど、暴虐ぶりを発揮しているという。
その噂は、荊州の片隅にまで届いていた。そしてある日、的斗たちの元に、その噂を裏付ける悲痛な知らせがもたらされた。
陳留から命からがら逃れてきたという数人の難民が、的斗を頼ってやってきたのだ。彼らは、泥と血にまみれた姿で的斗の前にひれ伏し、呂布の非道な統治ぶりを涙ながらに訴えた。
「呂布は…あの男は鬼です!重い税を取り立て、麦の収穫の半分を奪い取り、逆らう者は女子供であろうと容赦なく処刑するのです!街路には、見せしめに吊るされた死体がぶら下がり、人々は恐怖に震えながら生きております!村の井戸は血で汚され、田畑は荒らされたままだという。それは、単なる略奪ではない。民の希望を根こそぎ奪い去る、許されざる行為でした」
「美しい娘がいれば、無理やり屋敷に連れ去り…抵抗すれば、その家族まで…うっ…」
難民たちの言葉は、的斗の胸に鋭く突き刺さった。特に、美女狩りの話を聞いた時、彼の脳裏には、かつて呂布と董卓の間で道具として扱われた貂蝉の顔が鮮明に浮かび、激しい怒りが込み上げてきた。
(呂布…!董卓と同じか、いや、それ以上に救いようのない外道だ…!王允様の無念を晴らすためにも、そしてこれ以上犠牲者を増やさないためにも、この俺が奴を止めなければ…!あの男には、生きている価値もない!貴様は、民の苦しみが分からぬのか!天下の覇者たる者が、これほどまでに私利私欲に溺れるとは…!貴様もまた、董卓、呂布と同じ、この乱世の癌だ!)
的斗の瞳に、静かな、しかし燃えるような決意の炎が宿った。彼の全身からは、微かな金色のオーラが立ち上り、周囲の空気を震わせた。それは、的斗の怒りが頂点に達した時に現れる、「龍の血脈」の片鱗だった。その場にいた仲間たちは、その不可思議な威圧感に、思わず息をのんだ。
的斗は早速、徐庶をはじめとする主な仲間たちを集め、軍議を開いた。地図が広げられた卓を囲む将兵たちの顔には、共通の怒りが浮かんでいた。彼らの粗野な顔には、呂布への根深い憎悪と、趙雲への忠誠が刻まれていた。
「皆も聞いただろう。呂布の非道は、もはや許されるものではない。我ら白龍軍は、今こそ陳留へ出陣し、呂布を討ち、民を苦しみから解放する!この地の民が、二度とあのような目に遭わないように!」
的斗の力強い宣言に、周倉たちは「おう!」と雄叫びを上げて応えた。彼らの目にも、呂布への憤りが燃えていた。
徐庶は、広げられた地図を指し示しながら、冷静に、しかし確信に満ちた声で戦略を説明し始めた。
「呂布は陳留を拠点としておりますが、その支配はまだ盤石ではありますまい。彼の軍勢は勇猛ですが、その統率は呂布個人の武勇に頼るところが大きく、組織的な動きには弱点があります。我々はまず、陳留周辺の地理を熟知し、地の利を活かした戦いを仕掛けます。正面からぶつかるのではなく、敵の弱点を徹底的に突き、内部から崩壊させるのです。」
徐庶は、白龍軍の進軍ルート、各部隊の役割、予想される呂布軍の動き、そしてそれに対する具体的な対応策を、兵士たちにも分かりやすい言葉で、しかし詳細に説明していく。その言葉は、まるで戦場を上空から見下ろしているかのような、圧倒的な情報量と先見の明に満ちていた。的斗は、徐庶の言葉一つ一つに耳を傾け、彼の知略が、いかにこの乱世を合理的に、そして効率的に攻略できるかを確信した。彼は、徐庶の言葉が、まるでゲームの攻略本に記された必勝法であるかのように、的確であると感じた。
「周倉殿、廖化殿には先鋒として敵の撹乱を。裴元紹殿には斥候として情報収集と奇襲を。そして、趙子龍殿には、本隊を率いていただき、最終的に呂布との決戦に臨んでいただきます」
的斗も、徐庶の説明に熱心に耳を傾け、時折鋭い質問を投げかける。そのやり取りは、もはや単なる軍師と将軍というだけでなく、互いの知恵と信頼をぶつけ合う、真の戦友のようだった。仲間たちもまた、それぞれの任務の重要性を理解し、その顔には緊張と高揚感が浮かんでいた。彼らは、的斗と徐庶という二つの知と武が融合した白龍軍に、絶対的な信頼を置いていた。
出陣の朝。白龍軍の兵士たちは、広場に整然と隊列を組んでいた。その顔には、これまでの訓練で培われた自信と、これから始まる戦いへの覚悟が満ち溢れている。
的斗は、馬に跨り、全軍の前に立った。
「聞け、白龍軍の兵士たちよ!我々の戦いは、決して私利私欲のためのものではない!虐げられた民を救い、この乱世に真の義を示すための戦いだ!我らが掲げる白龍の旗は、仁義の旗!この旗の下、心を一つにして戦おうではないか!」
的斗の演説は、決して巧みなものではなかったかもしれない。しかし、その言葉には、彼の心の底からの想いが込められており、兵士たちの心を強く揺さぶった。彼の全身から発せられる微かな光(龍の威光)が、兵士たちの士気を最高潮に高めていた。
「「「おおおおおーーーっ!!」」」
地鳴りのような雄叫びが、荊州の空に響き渡った。
兵士たちがそれぞれの部隊へと散っていく中、貂蝉が静かに的斗の元へ近づいてきた。その手には、小さな絹の袋が握られている。
「子龍様…これを…」
貂蝉は、少し顔を赤らめながら、その袋を的斗に差し出した。中には、彼女が故郷から持ってきたという、小さな花の香りがする乾燥した花びらと、彼女自身の美しい髪が一筋、大切に納められていた。それは、彼女がどれほど的斗の身を案じ、彼の無事を祈っているかを示す、何よりの証だった。
「これは…お守りです。どうか、ご無事でお戻りください。そして…あなたの目指す世を、私にも見せてください」
その瞳は潤んでいたが、そこには強い信頼と愛情が宿っていた。
的斗は、そのお守りをしっかりと握りしめた。
「ありがとう、貂蝉さん。必ず生きて戻る。そして、君と共に、平和な世を見る。約束するよ」その言葉には、天下統一の誓いだけでなく、君との未来を必ず掴むという、個人的な、しかし揺るぎない愛の誓いが込められていた。
二人の間に、言葉以上の想いが通い合った。
朝日が昇り始め、白龍軍の旗が風にはためく。
的斗は、槍を高々と掲げ、叫んだ。
「全軍、出陣!!目指すは陳留、暴君呂布を討つぞ!!」
その号令と共に、白龍軍は、天下泰平への大きな一歩を踏み出した。彼らの前には、天下無双の猛将・呂布が待ち受けている。しかし、今の的斗と仲間たちには、いかなる困難をも乗り越えられるという、確かな自信が漲っていた。




