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第16話:脱出、そして新たなる敵! 呂布、長安を制圧

第16話:脱出、そして新たなる敵! 呂布、長安を制圧


王允の壮絶な最期を目の当たりにし、的斗の心は怒りと悲しみで張り裂けんばかりだった。しかし、今は感傷に浸っている暇はない。貂蝉を、そして仲間たちを守り、この地獄と化した長安から一刻も早く脱出しなければならない。


「行くぞ!絶対に、生き延びるんだ!」


的斗は涙を振り払い、貂蝉の手を強く引いた。周倉、廖化、裴元紹も、無言で頷き、的斗の後に続く。

燃え盛る長安の街は、まさに阿鼻叫喚の巷と化していた。李傕・郭汜軍の兵士たちは略奪の限りを尽くし、逃げ惑う民衆の悲鳴が絶え間なく響き渡る。建物は次々と崩れ落ち、火の粉が雨のように降り注いでいた。


「趙雲様、こちらです!この道ならまだ安全かと!」


先導するのは、持ち前の俊敏さで斥候役を務める裴元紹だ。彼の的確な判断が、何度も一行の窮地を救う。


「邪魔だ、どけええい!」


追っ手が迫れば、周倉がその怪力で道を切り開く。大薙刀を振るうその姿は、まさに鬼神のようだ。


「趙雲様、落ち着いてください。敵の数は多いですが、統制は取れていません。焦らず、確実に活路を見出しましょう」


廖化は、常に冷静に状況を分析し、的斗に進言する。その老獪な判断が、無謀な突撃を避け、一行の消耗を最小限に抑えていた。

的斗自身も、槍を振るって追っ手を薙ぎ払いながら、貂蝉を庇い続ける。「龍の力」の反動がまだ残っていて身体は重く、体内の熱がまだ燻り、時折視界が揺らぐ。しかし、仲間たちの奮闘と、守るべき存在がいるという強い意志が、彼を突き動かしていた。(王允様…見ていてください…俺は、必ずあなたの想いを…!)

苦難の末、的斗たちはついに長安の城門の一つにたどり着いた。そこでは、呂布の軍勢が、李傕・郭汜軍と激しく衝突していた。


(呂布…!)


的斗は、憎悪に満ちた目で呂布の姿を捉えた。呂布は方天画戟を振るい、凄まじい武勇で敵兵を薙ぎ倒している。しかし、その戦い方は、どこか自己中心的で、民衆のことなど一切顧みていないように見えた。


やがて、呂布は李傕・郭汜軍を一時的に退かせ、長安の主要部を掌握したようだった。しかし、その直後から、呂布は自らに反対する勢力を容赦なく粛清し始め、兵士たちに略奪を黙認するなど、董卓と何ら変わらない、いや、それ以上に非情な本性を露わにし始めた。


呂布の兵士たちは、略奪を公然と行い、美しい娘を奪い、抵抗する者には容赦なく剣を振り下ろしていた。王允が命を懸けて守ろうとした漢室の都は、呂布の手に渡った途端、さらなる血と炎に包まれようとしていた。

ようやく攻撃が終わったかと思ったのも束の間、遠巻きにその様子を見ていた的斗は、怒りに身体を震わせた。


「許せない…!あいつも、董卓と同じだ…!いや、それ以上かもしれない…!(呂布…!貴様は、民のためなどと言いながら、結局は己の欲望を満たすだけの暴君に過ぎない!王允様は、貴様に利用されただけだったのか…!)」


身の危険を感じた一行は、呂布軍の目をかいくぐり、なんとか長安を脱出することに成功した。荒れ果てた街道を、ただひたすら南へと向かう。

数日後、ようやく安全と思われる場所までたどり着き、一行は束の間の休息を取った。

憔悴しきっていた貂蝉だったが、その瞳には、もはや以前のようなか弱さはなかった。多くの悲劇を乗り越え、彼女は強く、そして美しい女性へと成長していた。その瞳の奥には、幾多の苦難を乗り越えた者だけが持つ、鋼のような意志の光が宿っていた。


「子龍様…ありがとうございました。あなた様と、皆さんがいなければ、私は…」


貂蝉は、的斗に深々と頭を下げた。


「顔を上げてください、貂蝉さん。俺は、あなたとの約束を果たしただけです」


的斗がそう言うと、貂蝉は真っ直ぐに的斗の瞳を見つめた。


「いいえ…あなたは、ただ私を助けてくれただけではありません。私に、生きる希望と、戦う勇気を与えてくださいました。私はもう、誰の道具でもありません。これからは、あなたの傍で、あなたの目指すものを見届け、そして、微力ながらも支えたいのです。それが、今の私の唯一の願いです」


その言葉は、的斗の心に温かく、そして力強く響いた。


「貂蝉さん…」


的斗は、彼女の手をそっと握った。


「ありがとうございます。俺も、あなたと共に未来を切り開きたい。必ず、呂布を倒し、王允様の無念を晴らします。そして、あなたと、この国の全ての民が、心から安心して暮らせる世の中を作ってみせます。それが、俺の…いや、俺たち白龍軍の誓いです!」


周倉、廖化、裴元紹も、その言葉に力強く頷いた。

的斗の脳裏には、王允の最期の言葉が蘇っていた。「お主のその龍の力で、新しい時代を切り開け…」。


(龍の力…まだよく分からないけど、これが俺の、趙雲としての宿命なのかもしれない…。この力を完全に制御し、民のために使えるようになること。それが、王允様の託してくれた『天命』…そして、俺がこの世界で生きる意味なのかもしれない)


的斗は、自らの内にある未知の力への意識を、より強く持ち始めていた。


「まずは、安全な場所で力を蓄え、仲間を集めなければ。そして、必ずここに戻り、呂布を討つ!」


的斗は、南の空を見据えた。目指すは、比較的戦乱の影響が少ないと言われる荊州。そこで新たな拠点を築き、天下泰平への第一歩を踏み出すのだ。

燃える都を背に、的斗と仲間たちの、新たなる戦いが始まろうとしていた。

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