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第15話:長安炎上! 王允の最期と託された未来

第15話:長安炎上! 王允の最期と託された未来


董卓が、的斗の一撃によって絶命した。百官たちは涙を流して喜び、呂布は英雄として称えられた。的斗もまた、「董卓にとどめを刺した若き英雄」として、多くの称賛と注目を浴びた。

しかし、的斗の心は晴れなかった。力を使った反動か、身体は鉛のように重く、そして何よりも、これから起こるであろう更なる混乱の予感が、彼の胸を重く圧していた。


(本当に、これで終わりなのか…?いや、歴史はそんなに甘くないはずだ…)


的斗の予感は、的中した。

董卓の死は、確かに一時的な解放をもたらしたが、同時に巨大な権力の空白を生み出した。呂布は自らが董卓に取って代わろうと画策を始めるが、その傲慢で短慮な性格は、早くも周囲の反感を買い始めていた。(この男…董卓を討ち取った英雄気取りで、自分だけが助かろうとしているのか…!)そして何より、董卓が涼州に置いてきた大軍勢が、黙っているはずがなかった。

董卓の死の報が涼州に届くや否や、董卓の残党である李傕りかく郭汜かくしらが、「董卓様の仇を討つ!」と称し、十数万とも言われる大軍を率いて、電光石火の速さで長安へと進軍を開始した。


「何ということだ…!奴らがこれほど早く動くとは…!」


王允は、李傕・郭汜軍接近の報に顔面蒼白となった。彼は必死に朝臣たちに協力を呼びかけ、長安防衛の兵を集めようとするが、多くの者は日和見を決め込み、あるいは自らの保身に走って協力を拒んだ。頼みの呂布もまた、自軍の兵力を温存しようとし、積極的な防衛策を講じようとしない。


「おのれ…!皆、私利私欲に走りおって…!漢王朝の忠臣は、もはやおらぬのか!」


王允は絶望に打ち震えた。

的斗は、王允の苦境を知り、いてもたってもいられなかった。


「王允様!俺たちも戦います!数は少ないですが、必ずお力になります!」


周倉、廖化、裴元紹も、的斗の言葉に力強く頷く。

しかし、王允は静かに首を振った。


「趙子龍殿…その志、誠に忝い。だが、もはや多勢に無勢。長安の陥落は時間の問題であろう。貴殿には、もっと重要な役目がある」


王允は、的斗と、その傍らに寄り添う貂蝉を見つめた。


「貴殿は、貂蝉を連れてここを脱出し、生き延びるのだ。そして、いつか必ず…この乱世を終わらせ、民が安んじて暮らせる世を築いてほしい。お主のその『龍の力』ならば、天命すら動かすことも可能やもしれぬ」


その言葉は、まるで遺言のようだった。


「王允様…!俺は…!(助けたい…!でも、俺の身体はまだ本調子じゃない…!またあの力を使えば、どうなるか分からない…!もし、また倒れてしまえば、貂蝉さんや仲間たちまで危険に晒してしまう…!)」


的斗は、王允を見捨てて逃げることなどできなかった。しかし、貂蝉や仲間たちを守るためには、王允の言葉に従うのが最善であることも理解していた。その葛藤が、的斗の心を激しく揺さぶる。

ついに、李傕・郭汜軍が長安の城門に到達し、猛攻を開始した。城内は瞬く間に大混乱に陥り、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。燃え盛る炎、逃げ惑う人々、そして容赦なく振るわれる凶刃。悲鳴と怒号が混じり合い、焦げ付くような肉の匂いが鼻につく。街路は血と瓦礫で埋め尽くされ、足元は滑りやすかった。長安は、まさに地獄だった。

王允は、わずかな手勢を率い、自ら剣を取って城門の守備に立った。その姿は、老齢ながらも、漢王朝への最後の忠義を貫こうとする、悲壮な覚悟に満ちていた。


「子龍殿!早く行け!貂蝉を頼む!」


王允の叫び声が、的斗の耳に突き刺さる。

的斗は、唇を噛み締め、苦渋の決断を下した。


「貂蝉さん、周倉、廖化、裴元紹!行くぞ!王允様の想いを無駄にするな!」


的斗は貂蝉の手を強く握り、仲間たちと共に、混乱する長安からの脱出を開始した。

的斗たちは、何度も追っ手に阻まれそうになりながらも、必死に活路を開いていく。的斗の額には冷たい汗が流れ、槍を振るう腕は痺れるように重い。しかし、横で貂蝉の手を握りしめ、前を駆ける裴元紹の背中、そして後方で吼える周倉と廖化の頼もしい姿が、彼の意識を繋ぎ止めていた。その途中、彼らは信じられない光景を目撃した。

城壁の上で、王允が李傕・郭汜軍の兵士たちに囲まれ、孤軍奮闘していたのだ。その身体は既に無数の傷を負い、血まみれになっている。しかし、その瞳は、最後まで漢王朝への忠誠の光を失っていなかった。


「王允様!!」


的斗は思わず叫び、助けに戻ろうとしたが、その瞬間、数本の矢が王允の身体を貫いた。

王允は、崩れ落ちる寸前、的斗の姿を捉え、最後の力を振り絞って叫んだ。


「趙子龍…!この国の民を…頼んだぞ…!お主のその龍の力で…新しい時代を…切り開け…!!」


その言葉を最後に、王允の身体は城壁から力なく落下していった。


「う…うわあああああああっ!!」


的斗は、天に向かって絶叫した。その叫びは、天に届けとばかりに魂を込めたものだった。彼の目から溢れる涙は、怒り、悲しみ、無力感、そして王允の命と引き換えに背負わされた、あまりにも大きな責任の重さだった。胸の奥で、まだ癒えぬ反動の痛みが、王允の死の痛みと混ざり合い、的斗を苛んだ。様々な感情が、彼の胸の中で激しく渦巻いていた。

初めて経験する、大切な人の「死」。そして、その死によって背負わされた、あまりにも大きな責任。


(俺が…俺が何とかしなきゃいけないんだ…!王允さんの無念を晴らし、この国を救わなきゃ…!)


的斗の瞳に、涙と共に、新たな、そしてより強固な決意の光が灯った。

それは、ただのゲーマーだった山栗的斗が、真にこの世界の運命を背負う覚悟を決めた瞬間だったのかもしれない。

長安の炎は、まるで新しい時代の誕生を告げるかのように、天高く燃え上がっていた。

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