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第14話:宮中激震! 趙子龍、歴史を動かす一撃!

第14話:宮中激震! 趙子龍、歴史を動かす一撃!


夜明けと共に、長安の宮城はいつものように騒がしさを増していった。朝議のため、百官たちが続々と参内し、そして、この国の事実上の支配者である董卓もまた、厳重な警備に守られながら、未央殿へと向かっていた。その表情は傲岸不遜そのもので、長年にわたる専横と、手に入れた貂蝉という珠玉の存在に、完全に油断しきっているように見えた。

その油断が、命取りとなる。

董卓が未央殿の門をくぐろうとした、その瞬間だった。


「董卓!覚悟!!」


雷鳴のような叫びと共に、門の陰から躍り出たのは、深紅の戦袍に身を包んだ呂布その人だった。その手には方天画戟が握られ、瞳には抑えきれない怒りと殺意が燃え盛っている。


「な、呂布!?き、貴様、何を…!」


董卓は驚愕の声を上げるが、もはや遅い。呂布の方天画戟が、嵐のように董卓の護衛兵たちに襲いかかった。


「うおおおおおっ!!」


呂布の武勇は、まさに鬼神の如し。屈強な護衛兵たちが、まるで木の葉のように薙ぎ倒されていく。宮中は一瞬にして血の海と化し、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

的斗は、王允の指示通り、未央殿の回廊に身を潜め、固唾を飲んでその光景を見守っていた。


(始まった…!本当に、歴史通りに…!)


その隣には、決意を秘めた表情の貂蝉もいた。彼女は、この修羅場を目に焼き付け、自らの役目を果たそうとしていた。

呂布の猛攻は凄まじかったが、董卓の護衛兵もまた精鋭揃い。数の力と、董卓の懐刀である猛将・李粛らの必死の抵抗により、呂布は徐々に体力を消耗し、動きに精彩を欠き始めていた。


「奉先!何をためらっておる!早く董卓を!」


王允が、物陰から呂布を叱咤する。

その時、混乱の中で、数人の董卓兵が貂蝉の存在に気づき、彼女を人質に取ろうと迫ってきた。


「貂蝉様!」


「きゃあっ!」


貂蝉は咄嗟に身をかわそうとするが、多勢に無勢。的斗の脳裏には、貂蝉の笑顔が浮かんだ。しかし、それは瞬時に消え去り、迫り来る死の予感に、的斗の全身が凍りついた。

絶体絶命のピンチに、的斗の全身の血が沸騰した。

(させない…!貂蝉さんだけは、絶対に守る!)

その強い意志が引き金となったのか、的斗の身体に制御不能な変化が起こった。彼の内なる「龍の血脈」の力が、貂蝉を守りたいという強烈な感情に呼応し、まるで堰を切った奔流のように覚醒し、全身を駆け巡った。それは、これまでの「龍の眼」の片鱗すら凌駕する、圧倒的で、そして荒々しい力の顕現だった。 的斗の身体から、まるで白い炎が立ち上るかのような金色のオーラが迸り、周囲の空気を震わせた。その輝きは、兵士たちの目に焼き付き、彼らを恐怖で凍てつかせる。的斗の心臓が、まるで巨大な龍のそれのように激しく、そして不規則に鼓動し、その音が戦場の喧騒を圧して響き渡った。時間そのものが歪んだかのように、敵兵の動きが鈍重に見え、彼の五感は異常なまでに研ぎ澄まされたが、それは的斗自身の意志によるものではなかった。

「貂蝉さーん!!」

的斗の叫びは、もはや人間のものとは思えぬほど力強く、彼の身体から迸る金色のオーラは、周囲に凄まじい威圧を放った。 超常的な速さと、神々しいまでの力。だが、それは的斗自身にも制御しきれていない、まさに暴走する龍の力だった。彼の槍は、もはや彼の意志とは別に、生き物のように敵兵を薙ぎ払う。 一振りで三人、一突きで二人…その動きは、洗練された武術というより、本能のままに振るわれる絶対的な暴力だった。

貂蝉に襲いかかろうとしていた董卓兵たちは、その尋常ならざる気と、的斗から放たれる純粋な殺気に怯み、動きを止める。その隙を突き、的斗の槍が閃光のように煌めいた。槍術の型など、もはや意識していない。ただ、貂蝉を守りたいという強烈な衝動だけが、的斗の身体を突き動かしていた。

「ぐはっ!」「ぎゃああ!」

董卓兵たちは、的斗の神がかり的、いや、魔神的とも言える強さの前に、なす術もなく倒れていく。その様は、まさしく戦場を舞う荒ぶる龍のようだった。

「な…なんだ、あの若者は…!?あれは、人の力ではないぞ…!」

呂布も、李粛も、そして他の兵士たちも、突如として戦場の理を超越した的斗の圧倒的な武勇に言葉を失い、本能的な恐怖を感じていた。

的斗は貂蝉の前に立ちはだかり、彼女を背に庇った。その瞳は金色に爛々と輝き、もはや的斗自身の意識がどこまで残っているのか、傍目には判別できなかった。

「貂蝉さん、大丈夫ですか!?」かろうじて絞り出した声は、彼自身のものとは思えぬほど低く、嗄れていた。

「は、はい…子龍様…!(このお方は…本当に、子龍様なの…?)」

貂蝉は、金色に輝くオーラを纏い、まるで別人のように変貌した的斗の姿に、畏敬と、それ以上の底知れぬ恐怖に近い感情を抱きながら、かろうじて頷いた。

的斗の加勢により、戦況は一変した。呂布も勢いを盛り返し、再び董卓に迫る。追い詰められた董卓は、最後の抵抗として、自ら剣を抜き、呂布に斬りかかろうとした。

その瞬間、的斗の金色の瞳が、カッと閃光を放った。暴走する力の中で、彼の「龍の眼」だけが、異常な精度で董卓の動きを捉えていた。董卓の次の動き、その太刀筋が、まるで未来を予知したかのように的斗の脳裏に映し出される。

(そこだっ!!呂布に殺させてたまるか…!この男は、俺が、俺自身のこの手で終わらせる!民を苦しめた罪を、俺が裁くんだ!)心の奥底で叫ぶもう一人の的斗の声が、暴走する力を一点に収束させた。

的斗は、呂布よりも早く反応し、董卓の懐に飛び込むと、槍の一撃をその胸に叩き込んだ。槍の穂先が董卓の鎧を砕き、その心臓を正確に貫いた瞬間、董卓の巨体がまるで巨木が倒れるかのように、轟音と共に地面に崩れ落ちた。

「ぐ…ふ…ば、化け…物…め…」

董卓は信じられないという表情で、金色のオーラを纏った的斗を見つめ、やがてその巨体をごろりと地面に崩れ落とした。

独裁者の、あまりにもあっけない最期だった。

宮中は、しばしの静寂に包まれた。的斗の周囲に渦巻いていた金色のオーラが、まるで陽炎のように揺らめき、ゆっくりと彼の身体へと吸い込まれていく。 そして、やがて誰からともなく、歓声が上がり始めた。

「董卓が死んだぞー!」「漢王朝は救われたのだ!」

的斗は、荒い息をつきながら、槍を杖代わりにその場に立ち尽くしていた。宮中に歓声がこだまする中、先ほどまでの超常的な力が嘘のように霧散し、的斗の身体は制御を失い、その場に膝から崩れ落ちた。 全身の筋肉が激しく痙攣し、意識が朦朧とする。視界は真っ白に染まり、耳鳴りが止まらない。あの圧倒的な力を引き出した代償は、彼の想像を絶するものだった。全身の血管が破裂しそうなほどの激痛。骨がきしみ、内臓が焼けるような熱さが彼を襲う。まるで肉体がバラバラに引き裂かれ、魂ごと削り取られるような感覚だった。 しかし、彼の心は、歴史を動かしたという確かな手応えと、貂蝉を守り抜けたという安堵感で満たされていた。

だが、本当の戦いは、まだ始まったばかりなのかもしれない。

的斗は、意識が遠のいていく中で、この制御不能な力の恐ろしさと、それを手にしたことの重責を、初めて身をもって感じていた。 油断なく周囲を見渡すことなど、もはや不可能だった。

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