-第六話:集落-
10分ほど連れられて歩かされただろうか。どうやら彼らの集落に到着したようだ。門や柵のようなものはない。学校のグラウンドほどの広さの開けた場所に木材で作られた高床式の家屋が円形に立ち並んでいる。恐らくそこら中に群生している巨木から切り出された角材をもとに家屋は組まれており、屋根は防水性のありそうな大きな葉を草葺として利用しているようだ。家屋にドアや窓はなく風通しの良さそうな作りである。中央は広場のようになっており、白い子供たちが走り回っている。女性らしき人たちもいるがやはり白い肌に髪、そして黒い瞳をしている。ただ不思議なことに中年程度の見た目の人たちはいるが老人が見当たらない。彼らには姨捨山のような文化があるのだろうか?
彼らも連行される俺をやはり怪訝そうな目で見ている。そしてそのまま広場の中央まで連れていかれ、その場に跪かされた。そこに偉そうに顎髭を蓄えた恰幅の良い中年の男が3人の男を連れて近づいてきた。俺を連れてきた男の1人が顎髭男に言う。
「He kanaka ʻē ʻo ia i loaʻa iaʻu ma ka muliwai ʻo Wainu. ʻIke ʻia ʻaʻole hiki iaʻu ke kamaʻilio. A uliuli nā maka o kēia kanaka.」
そして髭男が答える。
「Manaʻo wau ua kipaku ʻia ʻo ia mai ka ʻohana ma muli o kona mau maka. E hāʻawi aku kākou i nā luna e hele mai i kauhale i kēia manawa aʻe. A hiki i kēlā manawa, mālama iā ia i loko o ka hale paʻahao like me ia.」
その会話の後、俺は家屋の円の外側にある高床式の蔵のような建物に連れていかれ、そのまま外から閉じ込められた。
「あぁ、クソ!!最悪だ…。」
そう吐き捨てながら蔵の扉を叩く。
「ʻO wai ʻoe?」
後ろからか細い声が聞こえて振り返ると、そこには怯えた様子の少年がいた。ボサボサに伸び、汚れた白い髪にボロボロの服。服からのぞく四肢は痩せほそり骨のようだ。汗と糞尿の臭いにむせ返りそうだった。そして、彼の紅色の瞳と目が合った。