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異世界でも科学は役に立つ!!  作者: ANK
第三章:竜人族の秘密
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-第三十四話:霧の道しるべ-

 淡い霧の中、遠くで水の滴る音がしていた。目を開けると、視界がぼやけ、頭が割れるように痛んだ。


 「……ここは……?」


 蒼はゆっくりと上体を起こす。床は金属とも石ともつかぬ冷たい素材で、滑らかな曲面を描いている。天井は半球状のドームで、微かな光が縁から差し込んでいた。


 そこはまるで洞窟のようでありながら、自然物ではあり得ない精緻さを持っていた。まるで金属を編み込んで育てたかのような構造。


 「ラウウル……!」


 蒼は慌てて周囲を見回した。視界の端、壁際にうずくまる小さな影があった。少年は服を焦がされながらも、かすかに呼吸している。


 「よかった……生きている。」


 安堵の息をつく間もなく、ドームの一部が音もなく開き、灰色の影が滑るように現れた。


 「目覚めたか。生体反応は安定しているようだ。」


 猿人族の言葉で話しかけてきたその声は驚くほど冷静だった。姿を見せたのは、一人の竜人。背は高く、鋭く角張った顔と黄金の瞳。翼を畳み、鉤爪のついた手には小さな水の球体を浮かべている。


 「……言葉が通じるのか。」


 「理解するだけだ。」


 蒼は身構えた。だが相手に敵意は感じられない。ただ淡々と、観察する者の目をしていた。


 「ここはどこだ?」


 「ヴァース・ノガ=カリユ。我らが一時の拠点。」


 「……なぜ、俺たちを殺さなかった?」


 竜人はしばし沈黙した後、低く呟いた。


 「お前たちには聞きたいことがある。それだけだ。」


 意味を測りかねる言葉だったが、蒼は問うた。


 「お前たちは、なぜ他種族を襲う? ラウウルの集落も……魔力を持つものを皆、殺す気か?」


 その瞬間、竜人の瞳が僅かに揺れた。


 「問うな。お前にはまだ、知るべき時ではない。」


 そう言い残し、竜人は去っていった。ドームの壁が音もなく閉じる。


 蒼は床に手をつきながら息を吐いた。理解できない。不安が胸を締めつける。


 「……聞きたいこと? あの雷は、殺す気じゃなかったのか……?」


 すると、ラウウルがゆっくりと目を開けた。


 「……蒼……ここ、どこ?」


 「竜人族の集落みたいだ。ヴァース・ノガ=カリユっていうらしい。」


 ラウウルは痛む体を押し起こしながら、周囲を見回した。


 「外からは見えない場所……魔力の霧が濃すぎる。ここ、隠されている」


 「ラウウル、お前、雷を浴びたはずなのに……大丈夫か?」


 「なんとかね。」


 その瞬間、ドームの外から振動のような音が響いた。何かが近づいている。


 ふたたび壁が開く。今度は二人の竜人がいた。片方は先ほどの観察者。もう一人は若い竜人だった。金色の瞳が、蒼とまっすぐにぶつかる。


 「ジル=エグニス様が、お前たちとの面会を希望されている。」


 その名に、ラウウルの表情が強張る。


 「雷の……あの竜人だ」


 竜人たちは無言で手を差し伸べる。拒否の余地はなかった。


 蒼とラウウルは導かれるまま、ドームを出た。外に広がっていたのは、まるで森と霧の中に浮かぶ幻の都市だった。地面は苔むし、空には葉脈のように魔力が流れている。球状の巣殻が木々の上に並び、巨大な空洞のある巨木が中央にそびえている。


 「……これが、ヴァース・ノガ=カリユ。」


 ラウウルが呟いた。


挿絵(By みてみん)

※本画像はChatGPTで生成したものです。

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