-第二話:異世界の考察-
この場所に来てから3日経って色々なことがわかってきた。まずここは何処か地球ではない他の惑星であるということだ。この星には地球と同じように昼と夜がある。このことからこの惑星は自転していると考えられる。夜空には星々も見えた。もちろん地球で見た星座はひとつもなかったが…。因みに月は3つあった(正確には月ではなく衛星だが…。)。問題は1日が体感で36時間程度あるということだ。そして空が暗くなってから次に明るくなるまでの夜の時間が6時間程度しかない。地球での生活リズムに慣れきっている自分からするとこの“異星差ボケ”がかなりキツかった。自転の速さ、恒星の数の違いの影響をひしひしと感じていた。
次に分かったことはこの星の重力は地球のそれより弱く、空気中の酸素濃度は高いということだ。根拠は2つある。まず、垂直跳びの高さと浮遊感だ。高さについては肉体が変わっているので単純に比較はできないのだが、それでも跳びすぎだと思う。浮遊感は例えるならアポロ11号の乗組員たちが月面を飛ぶように移動した時のものに似ている。流石に月ほど重力は弱くないだろうが、地球よりは弱いのだろう。次に、動植物が大きすぎる点だ。大きな木々や草花、さらには今まで遭遇した動物たちも、地球のものに比べて桁違いに大きい。木の幹の太さは数メートルに達し、葉っぱ一枚が地球の人間の背丈ほどもある。動物たちも、地球の動物に似た形態をしているが、そのサイズはいちいち大きい。一方で、これまでに出会ったダンゴムシや芋虫はその巨体にもかかわらず、動きが軽快であった。これにも重力の弱さと酸素濃度の高さが関係しているのだろう。生物たちにとって、この星の環境は呼吸をするのに十分以上の酸素が供給され、成長が促進される理想的な場所であると考えられる。
最後にこの体についてだ。3日間この星で普通に生活できたことから、この体は少なくともすぐに死なない程度にはこの環境に適応しているのだろう。そして比較基準となるものが悉く大きいせいで気が付かなかったのだが、どうやらこの体もかなりでかい。目線の高さからなんとなくではあるが、2m以上はあるのではないかと推測している。ただ、皮膚と体毛が真っ白な理由についてはまだ分かっていない。出来るだけ直射日光を浴びないように木陰で生活している。
それにしても、この星は一体何処にあるのだろうか?地球と同じ宇宙に存在しているのだろうか?もし同じ宇宙でなければ地球とは全く別の物理法則に従っている可能性も考えられるわけで、そうだとするとこれまでの考察は全く意味がなくなる。まぁ、そんな可能性まで考えていたら何もできないかぁ…。ひとまず観察できる事象から着実に情報を得ていくしかない。