-第十五話:竜人族-
しばらく休んだあと俺たちは30分ほど歩いてその場から離れたあと、近くに川を見つけてそこで体を洗った。二人とも汚れていたが特にラウウルは汚かった。本当は石鹸があれば良かったが、無いものはない。水だけでも結構汚れは落ちて、ラウウルのボサボサでガチガチだった髪も少しはまとまった。綺麗にして気付いたがラウウルは結構美男子だ。日本だったらモテモテだったろう。
そのあと俺たちは河辺に腰掛けて近くになっていた果実を食べながら「トカゲ」について話した。体も服も濡れたままだったが、蒸し暑いこの環境ではむしろ快適だった。
「トカゲ」たちは竜人族と呼ばれるこの星の知的生命体の一種らしい。寿命は長く500年ほど生きる(ただし、この星の一年は250日で一日は36時間らしい。)。
「竜人族ってどこに住んでいるの?」
「森の奥に集落を作って、何年かおきに移動している。見つけたときにはもう消えていることが多いみたい。」
「竜人族の他にも俺たちと違う見た目の種族っているの?」
「うん、僕が知っているのだと、猫人族と狼人族がいるよ。僕たちは猿人族って呼ばれている。」
いろいろな種族がいるみたいだ。重力が地球よりも弱い分直立二足歩行へのハードルが低いのかもしれない。
ラウウルは果実の芯を川に投げ捨てながら言った。
「300年前までは友好的だったんだって。あいつらが豹変したのは、それから…。」
「何があったんだろう……?」
俺のその問いに、ラウウルは首をかしげるだけだった。竜人族は略奪を目的とはしていないようだった。そもそも集落の人々はその日暮し的な狩猟採取生活を送っており、集落には略奪するような貯蓄物がなかった。土地についても、彼らは森の中で移動しながら生きているなら略奪の対象にはならないだろう。彼らの目的は「虐殺」そのものにあるのかもしれない。
「何か”見えてないもの”があるのかもしれない…。」
いずれにせよ、今はとにかく情報を集める必要があるだろう。
「この近くに人が多く集まる街はある?」
「時々村を訪ねにきた役人は東の方から来ていたよ。」
それじゃあ東に向かってみよう。でも旅立つ前に一つ確認しなきゃいけないことがある。
「俺は街に向かおうと思う。ラウウルも一緒に来ない?」
「うん!!行く!!」




