-第十二話:トカゲと鉄の筒-
トカゲのような生物たちが手にしているのは、銃のような持ち手のついた筒状の武器。両端には鈍く光る鉄球がはめ込まれていた。
「He kilokilo kā lākou….」――あいつらも魔法を使っている…。
ラウウルの震えた声が聞こえる。奴らは「魔法」で武器を操っていた。
トカゲの一匹が筒の後部に嵌められた鉄球に手をかざすと、何かを囁くように低い音が響いた。すると、後ろの鉄球が前方の鉄球を「ドンッ」と音を立てて打ち出した。
ズガァン!
発射された鉄球は空気を裂いて一直線に飛び、木造の家屋を粉砕した。壁ごと人影が飛び散り、鮮血が炎に照らされて宙に舞う。
俺は言葉を失った。
悲鳴があがる。逃げ惑う人々。そのすべてを、トカゲたちは正確に、容赦なく狙っていた。
ある個体は、連続で鉄球を発射していた。腰のポーチに入った鉄球が魔法によって自動的に補充されている。まるでその筒が生きているかのように。
「ʻAʻole hiki iā lākou ke ʻike iā mākou i loko o kēia hale, ʻeā?」――ここにいれば見つからないよね…?
ラウウルが不安げに俺を見た。俺は答えられなかった。理性が、身体が、恐怖に縛られていた。もしこの蔵が目をつけられたら、それで終わりだ。
トカゲたちの目は黄色く光り、まるで夜でもはっきりと見えるかのようだった。火の光が照らす中、次々と放たれる鉄球の一撃が、命ある者を無情に砕いていく。
ラウウルが俺の袖を握る。その手が小さく、温かい。
「Aoi… e noho mālie. E ʻimi lākou i ka neʻe ʻana.」――蒼、動かないで。奴らは動くものを探している。
俺は小さくうなずいた。身を低くして、息を殺す。音も、言葉も、気配も殺す。蔵の中に潜むように。
外ではまだ、地獄が続いていた。




