-第十一話:強襲-
ラウウルの言った通りにしたら魔法を使えた。ラウウルには「魔力」のようなエネルギーが「光」として見えていて、それによって直感的に魔法の使い方を理解し教えることができるのではないだろうか。
「He aha nā mea kilokilo ʻē aʻe?」――他にはどんな魔法があるの?
「Hiki i nā mākua ke pana i ke ahi mai ko lākou mau lima.」――大人は手から炎を出せるよ。
「Pehea ʻoe e hana ai pēlā?」――それはどうやってやるの?
「ʻAʻole hiki iaʻu ke hana, no laila ʻaʻole maopopo iaʻu, akā ua loaʻa i nā mākua nā iniseti make a me nā holoholona ma ka lima hoʻokahi.」――僕はできないから分からないけど、大人は片手に虫や獣の死骸を持っていた。
ラウウルでも炎を出すのは水を出すように直感的にはできなかったのか。というより、ずっとここに入れられていたわけだし、虫や獣の死骸を手に入れる機会がほとんどなかったのかもしれない。死骸が必要だという情報は非常に重要だろう。この世界の「魔法」は無から何かを生み出す訳ではなく、川の水や死骸を「魔力」によって純水や炎に変換しているという仮説が立つ。今ある情報だけではまだ「魔法」の大まかな姿すら掴めていない。ひとまずはもっとラウウルと喋って言葉と魔法について教えてもらうことにしよう。
俺たちはそれから数時間ほど喋った。その中で得られた魔法についての情報は以下の通りだ。
・魔法は色々なことができる
・魔法は誰でも使えるが、各種魔法の使い方は集落や家族などの集団ごとに相伝される
・「光」は空気中に漂っていて意識することで集めることができる
・「光」を集められるのは体表から50cm程度まで
喋っているうちに日が暮れ、短い夜が始まった。「魔法」についての考察などまだやりたいことはあったが、ラウウルはもう寝るみたいだし今日はもう寝ることにしよう。
そう思って横になった瞬間、「キンッ!!」という金属同士がぶつかるような音と建物が倒壊するような音が聞こえた。
「ʻO lākou nō!!!」――アイツらだ!!!
男の叫びと同時に、再び「キィンッ!」という甲高い金属音が響いた。俺たちは思わず顔を見合わせ、蔵の窓から外の様子をうかがった。
そこには、夢にも見たくない光景が広がっていた。
闇夜に浮かび上がる炎の柱。その中に黒くぬめるシルエット――直立二足歩行の、トカゲのような生物たち。背丈は人間と同じ程度だが、全身が鱗で覆われ、尾を振るわせながら動く様子は俺の背筋を凍らせた。




