第91話:「仲間か未来か」
――隼風は、ついにたどり着いた。
巨大な空間の中心、そこに辰月志楼が佇んでいた。
背後には、脈動するように輝く“無限石の核”が浮かび、融合の儀は最終段階を迎えつつあった。
その場には既に、葵生、千紗、夕音の姿があった。
隼風が駆け寄ると、葵生が振り返り、静かに頷いた。
「……作戦通り、だね」
隼風も深く頷き返す。
その手には、あの重たい斧――巌谷の無限石武装がしっかりと握られていた。
だが千紗がすぐに尋ねる。
「末政さんは……? 一緒じゃないの?」
その問いに、隼風は言葉を詰まらせた。
あの場で何があったのか、自分は知らない。
末政が勝ったのか、負けたのか。生きているのか、もう――
「……わからない。俺も……見届けられなかった」
空気が重くなる中、夕音が低く問いかける。
「じゃあ、“その作戦”って……結局、どういう――」
その瞬間。
「やぁぁっと全員揃ったみたいだねぇ?」
甲高く、冷笑を含んだ声が辺りに響いた。
皆が振り向くと、暗がりの先から八谷泠香が姿を現す。
彼女の手には縄のような拘束具に縛られた陽がいた。
陽の顔には苦痛が滲んでおり、立っているのがやっとの様子。
八谷は楽しそうに、ナイフを陽の首元に当てる。
「いい? その斧、今すぐ手放さなければ……この子、喉元からスパッといっちゃうけど?」
隼風はすぐに構えを解こうとはしなかった。
ぎり、と歯を噛み締め、判断を迷う。
「やめろ……!」
千紗が叫ぶ。夕音も鋭く睨みつけるが、手出しはできない。
その斧は、この空間に立ち向かう“唯一の突破口”なのだ。
葵生が冷静に言う。
「……罠だね。彼女の狙いは“その斧”」
そして、今。
静かに辰月が語り始める。
「もう、いいだろう。もう諦めろ、隼風」
その言葉は、どこまでも静かで、どこまでも決定的だった。
「お前は“選択”を迫られている。仲間を取るか、“希望”を取るか――」
「どのみち、俺の“未来”はもう止まらない」
隼風は、全身に汗を滲ませながら、ただひたすらに思考を巡らせる。
逃げ道はない。選択肢もない。
だが、何かを犠牲にしなければ、何も救えない。
握る斧の感触が重くなる。
その重さは、仲間の命、これまでの戦い、そして――未来、全てを背負っていた。




