第83話:「炎の壁」
乾いた石の廊下を駆け抜ける4人の足音が、静まり返った空間に響いていた。
「あと少しで……!」
葵生が前方を睨みつけながら息を切らせる。
だが、そのとき――
「おーい、お待ちかねぇ!」
突如、進路を塞ぐように現れたのは、白いローブに身を包んだ少女――八谷泠香だった。
「……!」
全員が立ち止まり、すぐさま構える。
「末政は、アカコスと戦い始めたよ。隼風は巌谷迅とね。……つまり、約束は破られた。普通に。」
八谷はいつもの調子で、楽しげに首をかしげる。
「“真っ直ぐ進む”って条件、守られなかったんだもん。もう、君たちに“終焉”を見せる価値はない。……だから、ここで始末するね?」
そう言った瞬間、八谷の周囲に空気が揺らぎ、殺気が立ち込めた。
緊迫した空気が走る中――
「ふざけんな……!」
陽が小さく呟いた。
次の瞬間、陽の体が燃え上がるように赤く光る。足元から噴き上がった炎が一気に背中を押し上げると、陽は勢いよく前へ跳び出した。
「うおおおあああっ!!」
そのまま、炎を纏った跳躍蹴りが八谷の腹に直撃する。
「……えっ、ふつ――」
吹き飛ばされた八谷は、言葉を言い終える間もなく遠くの壁まで吹っ飛ばされ、ゴンッと鈍い音を立てて沈んだ。
「行って!! ここは私がやる!!」
陽が振り返り、炎を纏った瞳で叫ぶ。
「絶対、たどり着いて! 塚居さんや、みんなの仇を無駄にしないで!!」
葵生は一瞬ためらうが、陽の決意を感じて頷いた。
「……お願いする。でも無理はするな!」
「無理しかしない! 負ける気もしないからね!」
そう叫ぶ陽の背中を残し、葵生、千紗、夕音の3人は再び走り出した。
燃え上がる炎の向こうで、八谷泠香がゆっくりと立ち上がる。
「……へぇ。やるじゃん。ちょっとだけ、気に入ったかも。普通に」
陽は目の奥で炎を灯し、睨み返す。




