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第77話:「拘束と通告」

――夜明け前の湿地帯。


宮河は、結界の中央で膝を抱えて座っていた。無限石の力によって形成された緑色の光は、まるで冷たい檻のように彼女を閉じ込めている。


もう何度も試した。能力を使って喰い破ろうとしたり、隙間を探したり、力尽くで破壊しようとしたり――だが、すべて徒労に終わった。


「……ちっ」


苛立ちを吐き出すように舌打ちするも、すぐに脱力する。


(今は……下手に動くより、待つしかない)


体力の温存、それに、無駄な消耗は最悪“本当に殺される”可能性に繋がる。

魔族である自分すら封じる“無限石”の存在は、確かにただの脅しではないのだ。


そんな沈黙の中――


「ふふ、いい子だね。大人しくしてるなら、それでいいのよ。普通に」


結界の外側に姿を現したのは、やはり八谷 泠香だった。

白いローブを風に揺らしながら、まるで見世物を見るように微笑んでいる。


「でも、ほんと――あなたのせいで、予定が狂っちゃったんだから。九鬼と是津、両方やられるなんて、普通にありえないっての」


宮河は答えない。視線すら向けず、ただ静かに目を閉じた。


「……だから、辰月様の融合は、前倒しになったの。もう、世界の終わりはすぐそこ。あなたが“少しでも見ていられるように”してあげるわ、特等席でね。普通に」


八谷の声は軽やかで冷酷だった。





――その頃、第20班本部・朝方


静けさの中で、隼風はふと違和感を覚えた。


(……宮河がいない)


朝の点呼も兼ねて各部屋を回っていた隼風だったが、どこにも彼女の姿はなかった。眠っているわけでもなく、外にも出た形跡がない。


「……みんな、集まってくれ!」


呼びかけに応じて、班員たちが集まり、本部の中を手分けして探し始めたが――


宮河リィズ・テヘダの姿は、どこにもなかった。


重苦しい空気が漂い始めたその時だった。


「ねぇ、そんなに探さなくていいんじゃない?」


不意に――空気が変わる。


振り返ると、廊下の奥に立っていたのは、白いローブの少女――八谷 泠香だった。


「……また、あんたか」


隼風が低く睨みを利かせると、八谷は手をひらひら振りながら歩み寄る。


「報告に来ただけだよ、普通に。辰月様の“融合”ね、前倒しになったの。いよいよ完成間近、ってわけ」


その言葉に、全員が緊張を強めた。


「……理由を言え」


末政が詰め寄るように一歩踏み出すと、八谷は小さく肩をすくめて答えた。


「宮河が幹部2人を殺したからよ、九鬼と是津。ほんと、あの子やりすぎ。困るんだけど?普通に」


八谷の声には、怒りよりもむしろ“困惑”に近い軽さが混じっていた。


「だから、宮河は今、辰月様の命令で閉じ込めてる。無限石の力でね。助けたいなら勝手に来て。でも――条件は変わらないから。第20班と、あの女だけ。破ったら……即・終焉」


そう言い残すと、八谷はまるで風に溶けるように姿を消した。


本部には、再び重たい沈黙が落ちる。


隼風は拳を握りしめた。


(宮河……必ず、助けに行く)


そう誓うように、静かに目を閉じた。


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