第72話:「刃を研ぐ者たち」
残り4日――。
静まり返る第20班本部。
その一室で、隼風は葵生を呼び出していた。
「……見せたいものがある。新技だ」
そう言うと、隼風は手を軽く前に出し、風を一瞬だけ旋回させる。
だがその場では何も起きない。葵生は眉をひそめた。
「……今の、何?」
隼風は笑みを浮かべながら、その場から数歩歩いて元の位置に戻る。
そして――次の瞬間、
ドンッ!!
背後で突如として爆風が炸裂した。
「っ……!?」
爆風は的確に一点を狙ったもので、周囲に被害は出さない精密な範囲技だった。
「“風の罠”ってとこかな。風を“置く”んだ。一度通った場所に風を留めて、そこを誰かが通ると起動する。……その場にいる必要はない」
葵生は驚きに目を見張る。
「……遠隔発動? 今までの兄さんのスタイルとは違う……でも、使い方次第でとんでもない武器になる」
「そのつもりさ。もう、目の前で風をぶつけるだけじゃ足りないからな」
⸻
その頃、訓練スペースでは、夕音が黙々と動いていた。
その手には――今まで見たことのないナイフ。
「……装備、変えたの?」
近づいた千紗が問いかけると、夕音は無言で頷く。
「今回は“素早い敵”が相手になるかもしれない。近距離も、やれるように」
ナイフの柄を握る手はぶれない。
静かな彼女の中にも、確かな“戦意”が宿っていた。
⸻
一方――屋上では、陽が一人で訓練を重ねていた。
「……っ、はぁ……!」
彼女の身体から、ふわりと立ちのぼる炎。
次の瞬間、それが弾けるように周囲を包む。
「“炎守”……!」
陽の周囲に、火の壁が形成される。
それは攻撃にも防御にも応用できる、まさに“盾”のような炎。
「誰かを守るための力を、もっとつけたい。だから……私も、進化しなきゃ」
その瞳は、まっすぐに“決戦”を見据えていた。
刻一刻と近づく“その日”。
だが、第20班の仲間たちは、
確かに――それぞれの“武器”を、手にし始めていた。




