第7話:「休息」
任務が続き、緊張感のある日々を送っていた第20班に、久しぶりの自由時間が与えられた。
「今日は特別にオフだってさ」
隼風は、軽い調子で班員たちに告げた。彼自身、珍しく肩の力を抜いているように見える。
「本当? やったー!」
千紗が椅子から勢いよく立ち上がる。
「最近の任務、ちょっと重たかったから、ありがたいね」
白瀬はほっと息をつきながらソファにもたれかかった。
「……兄さんがそんなこと言うなんて珍しい」
妹の紗彩は腕を組んで、兄をじっと見つめた。
「たまにはいいだろ? 俺だって休みたいときぐらいある」
隼風は肩をすくめて答えた。
「せっかくだし、みんなでどこか出かけようよ!」
千紗が勢いよく提案する。
「いや、私は静かに過ごしたい。最近騒がしいのが続いてたし」
白瀬が本を手にしながら答えた。
こうして、班員たちはそれぞれ好きな過ごし方をすることにした。
紗彩と隼風の兄妹散歩
「久しぶりに、二人でどこか行かない?」
紗彩が提案すると、隼風は少し驚きながらも「いいぞ」と答えた。
二人はシンセシティの中央区にある商店街を歩いていた。屋台の焼き鳥や綿菓子が立ち並び、賑わいを見せている。
「兄さん、最近ちょっと変わったよね」
紗彩がふと漏らす。
「そうか? 俺はずっとこんな感じだと思うけど」
隼風は首をかしげながら答える。
「ううん、少しは班長らしくなったっていうか……まあ、それでもお兄ちゃんだけど」
紗彩は微笑むと、近くの屋台でたこ焼きを二人分買った。
「覚えてる? 昔、紙飛行機で遊んだときのこと」
「ああ、風の力で無理やり飛ばして、母さんに怒られたやつか」
隼風が苦笑いを浮かべると、紗彩も笑い出した。
「楽しかったなあ、あの頃」
懐かしい思い出を語り合いながら、二人は穏やかな時間を過ごした。
白瀬由莉の静かな時間
一方、白瀬は20班本部内の庭園にいた。彼女は膝の上に分厚い本を広げ、穏やかな時間を満喫している。
「こういう静かな時間が一番よね」
彼女の隣では、ペンギンの相棒がちょこんと座っている。
だが、その平穏はすぐに破られる。ペンギンが庭園の池に興味を持ち、飛び込もうとし始めたのだ。
「ちょっと待ちなさい! 池はダメ!」
慌ててペンギンを抱きかかえると、水面が揺れる音が止んだ。
「もう、少しはおとなしくしてくれないかな」
白瀬はため息をつきながらペンギンを膝の上に戻す。彼女の顔には微かな笑みが浮かんでいた。
「まあ、これも悪くないかもね」
本をめくりながら、彼女はそうつぶやいた。
千紗のボウリング挑戦
「自由時間だし、体を動かさなきゃね!」
明石千紗はボウリング場に足を運んでいた。
彼女は一人でレーンに立ち、ボールを持つ。隣のレーンでは家族連れや友人同士が賑やかに楽しんでいる。
「よーし、見ててよ! 次はストライク取っちゃうから!」
と誰に向けるでもなく叫ぶ千紗。ボールを力いっぱい投げると……見事にストライクが決まった。
「やったー! 最高!」
ガッツポーズをする千紗の笑顔は、子どものように無邪気だった。
「みんなも連れてくればよかったな」
そうつぶやきながら、彼女は次のゲームに挑む。
再会と鍋パーティー
夕方になり、それぞれが過ごした時間を胸に抱えて、第20班は本部に戻った。
「みんな、楽しかった?」
千紗が満面の笑みで問いかけると、紗彩は「まあまあね」と軽く答える。
由莉は少し疲れた様子だったが、ペンギンと一緒に庭園で過ごした時間を満喫したようだ。隼風はそんなみんなを見て、ほっとした表情を浮かべた。
「よし、今日は特別に鍋をしよう。全員でな」
隼風が言うと、千紗が「いいね! 私、具材切る!」と張り切り、紗彩は「火の加減は任せて」と手を挙げた。
白瀬は「あんまり騒がしくしないでよ」と言いつつも、どこか楽しげだ。
鍋を囲む班員たちの会話は尽きることなく、笑い声が絶えない。任務に追われる日々の中で、彼らにとって貴重なひとときだった。
「たまにはこういうのも悪くないな」
隼風が呟くと、全員が笑顔でうなずいた。
夜が更け、班員たちはそれぞれの部屋に戻る。隼風は窓の外を見ながら、次の任務への思いを馳せていた。
「また明日から頑張らなきゃな」
こうして束の間の休息の一日が終わり、彼らは再び日常の喧騒へと戻っていく。