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第5話:「反撃の刃」

廃鉱山での戦闘は激化していた。厳谷迅の無限石の力により、柄本たちは完全に追い詰められていた。

白瀬はドミヌスのペンギンが負った傷を共有し、胸を押さえながら地に伏す。明石の虎もすでに力尽きており、立ち続けているのは柄本隼風ただ一人。だが、その顔には疲労の色が濃く浮かんでいた。


「…くそっ、これ以上は…!」

隼風が息を切らしながら声を絞り出す。


「見苦しい抵抗だ。」厳谷は冷たく言い放った。「いい加減、諦めろ。」


巨大な斧が振り下ろされようとした、その瞬間だった。

鉱山の中に冷たい風が吹き込み、辺り一面が白銀に染まる。凍てつく空気が肌を刺すように漂い、現れたのは一人の少女だった。肩に宿る氷の結晶が輝き、眩い光を放っている。


「まだ終わらせないわよ。」

彼女の静かな声が戦場に響く。


隼風の目が大きく見開かれた。

「紗彩…!?」


少女、柄本紗彩は彼に鋭い視線を向ける。

「お兄ちゃん、しっかりして!ここは私が何とかする!」


厳谷が斧を肩に担ぎ、彼女を見下ろした。

「貴様、何者だ?」


「柄本紗彩(さや)。」少女は名乗りを上げた。

「柄本隼風の妹よ。それで十分でしょ?」


厳谷は鼻で笑う。

「妹ごときが、何をするつもりだ?」


紗彩は応えず、ただ手をかざす。その瞬間、周囲の空気が一気に冷え込み、厳谷の足元から鋭利な氷の柱が突き上がる。


「…!?」

厳谷は驚愕しつつも斧を振り、柱を砕いて体勢を立て直した。だが、紗彩の攻撃は止まらない。氷の刃が次々と作り出され、厳谷を包囲する。


「お兄ちゃん、今は休んでて。」紗彩が背後の隼風に言った。

「私が片付けるから。」


隼風は肩で息をしながら、無言で頷く。


厳谷の反撃は素早かった。

「面白い力だな。だが、この無限石の力には敵わない!」


斧が旋風のように振り回され、氷の刃を次々と砕いていく。しかし、紗彩は全く怯むことなく攻撃を続けた。冷静さを保ちながら、彼女は厳谷の鎧に傷をつける一撃を放つ。


「くっ…!」厳谷の眉間に険しい皺が寄る。


「無限石の力に頼るだけじゃ、私には勝てない。」

紗彩の声には確信が宿っていた。厳谷の動きが次第に鈍くなり、紗彩の攻撃はより鋭さを増していく。


そして、彼女は最後の一撃に力を込めた。氷の槍が形作られ、それを厳谷に向かって放つ。

「これで終わりよ!」


厳谷は槍を防ごうと試みたものの、その力に圧倒され、吹き飛ばされる。そして、地面に膝をついた。


「…貴様らがここまでとは。」厳谷の言葉は悔しさに震えていた。


紗彩は厳谷を見下ろし、冷たく言い放つ。

「これ以上動かないで。無駄な戦いはもうやめて。」


戦いが終わり、紗彩はすぐに白瀬の元へ駆け寄った。

「白瀬さん、大丈夫?今、手当てするから。」


白瀬はかすかな微笑みを浮かべた。

「ありがとう…助かったわ。」


紗彩は氷の力で傷口を凍結させ、止血を施す。その手際により、白瀬の容態は落ち着きを取り戻した。


隼風が紗彩の方へ歩み寄る。

「紗彩、ありがとう。お前が来なかったら、俺たちは…」


紗彩は微笑みながら首を横に振った。

「お兄ちゃんが諦めなかったから、私も力を出せたんだよ。」


明石が息を整えながら顔を上げた。

「さすが隼風さんの妹ですね…いや、本当に頼りになります。」


紗彩は再び真剣な表情に戻り、鉱山の奥を見据える。

「でも、これで終わりじゃない気がする。奥に、まだ何かが隠されてる。」


隼風たちは体勢を整え、鉱山の奥へと足を踏み入れた。冷たい風が吹き抜ける先には、さらなる危険が待ち受けているのだった。




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