第40話:「静寂を裂く声」
夜の静寂が戦略班の臨時施設を包む中、葵生は深く息を吐き、簡易ベッドに腰を下ろした。
「わかりました。官野さん達も休息を取ってください。」
そう言って通信を切ると、近くにいた天宮に視線を向ける。
「とりあえず今日は行動ができない。ここで寝る。」
天宮は目を見開き、思わず声を上げた。
「えっ!?ここで寝るんですか…?」
滝内が腕を組み、呆れたように肩をすくめる。
「そうだ。説明を聞いていなかったのか?」
「す、すいません…でも、ここで寝るのも危険じゃないんですか?」
天宮の不安げな声に対し、葵生は静かに答えた。
「大丈夫だ。この場所にはストレイロンドがいる。何かあれば守ってくれる。」
それを聞いた天宮はほっと息をつき、少し緊張を緩めた。
夜の作戦続行は不可能。だからこそ、今はしっかりと休むことが重要だった。
葵生たちは、それぞれの寝床につき、静かに目を閉じるのだった。
夜の異変
天宮は寝ぼけたまま、そっと布団から抜け出した。
「トイレ…」
皆が眠りについた後、静かに立ち上がり、外へ向かう。窓の外を見ると、天気はさらに悪化し、冷たい空気が肌を刺した。
身震いしながらトイレへ向かうと、床が妙に濡れていることに気づく。最初はトイレの水が漏れているのかと思ったが、手持ちのスマホで床を照らした瞬間、息を呑んだ。
—それは血だった。
ぎょっとして目線を上げると、すぐ先にストレイロンドの兵士が倒れている。
「だっ…大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄ろうとした瞬間、背後に気配を感じた。
—次の瞬間、悲鳴が響いた。
迫る足音
突如響いた悲鳴に、葵生は飛び起きた。
「なんですか今のは……?」
同じく目を覚ました滝内が周囲を見回し、険しい表情を浮かべる。
「天宮がいない。今の悲鳴はおそらく……」
葵生の胸に不安が広がる。
「葵生、お前は他の部屋の様子を見てきてくれ」
「わかりました」
葵生は急いで別の部屋へ向かい、研究者たちに避難を促した。しかし、自分も逃げようとした瞬間、あることに気づく。
—応援の要請を忘れていた。
焦りながら通信機を取り出し、この周辺にいる仲間たちへ緊急連絡を送る。送信を終え、再び避難しようとしたが——
ゆっくりと、足音が近づいてくる。
その音は確実に、こちらに向かっていた。
囁く悪意
「ねぇ♡ まだいるんでしょ?」
甘ったるい声が響く。
その声に、葵生は聞き覚えがあった。
辰月一派の幹部、コルティニー。
葵生は思わず息を呑む。
「よりによってアイツかっ……!」
逃げ場はない。葵生はとっさにロッカーの中へ身を潜め、息を殺した。
「隠れてるのは分かってるのよ?」
コルティニーの足音がゆっくりと近づく。葵生はじっと耐えた。
(とりあえず、居なくなるのを待つしかない……)
そう決めたその瞬間——
「柄本葵生。前に会ったわね♡」
葵生の心臓が跳ねる。
(は……? なんで私の名前を……?)




