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第39話:「命の継ぎ目」

隼風は肩で息をしながら、ようやく辿り着いた救護所の入り口をくぐった。


「はぁ…やっと着いた………」


廣海も息を整えながら、辺りを見回す。


「急いだけど、暗くなってしまったわ。まさかこの吹雪が能力も妨げるとはね」


彼らの腕の中には、意識を失った沙彩がいた。傷は深刻で、一刻も早い治療が必要だった。


隼風は慎重に彼女を治療台へと寝かせると、廣海がすぐに声をかける。


「そういえば、腕は?」


隼風は持参してきた沙彩の切断された腕を見せる。


「持ってきましたけど…治るんですか?」


廣海は微笑みながら頷いた。


「えぇ、治るわよ。元通りに」


その言葉に隼風は少し安堵するが、依然として緊張は解けなかった。廣海は近くにいた白衣の女性へと歩み寄り、淡々と指示を出す。


「南那、患者。重症だから早くして」


その女性――叶丸南那は、振り返ると隼風たちを見て、一瞬驚いたような表情を浮かべた。


「あっ、唯子〜久しぶり! ……って、その子、腕が………」


彼女の視線は沙彩の状態へと向けられる。廣海は短く答える。


「南那の能力なら治せるでしょ。」


叶丸南那(かなまる なな)――彼女の能力は、物を永久的にくっつける力。隼風は彼女の言葉を待ちながら、沙彩の腕が本当に元通りになるのか、緊張しながら見守った。


叶丸は自信に満ちた表情で頷くと、慣れた手つきで沙彩の右腕を慎重にくっつけた。その動きには迷いがなく、驚くほどスムーズだった。


「腕はこれで大丈夫。」


叶丸がそう言い切ると、隼風はほっと胸をなでおろし、深く頭を下げた。


「本当にありがとうございます。」


だが、叶丸は腕の接合だけで終わりではないことを知っていた。彼女は沙彩の全身を確認しながら、少し厳しい表情で言った。


「でも、彼女の状態はあまり良くないわ。腕はつながったけど、背中の損傷がひどい。このままだと危険かもしれないから、すぐに病院に連れて行った方がいい。」


その言葉に、隼風もすぐに頷いた。


「……わかりました。」


すぐに救急手配がなされ、沙彩は医療スタッフに引き渡されて病院へと運ばれていった。彼女の命が助かることを祈るしかなかった。


それからしばらくして、夜の帳が完全に降りた。


この状況では、夜間の作戦続行は困難だった。無理に動けば、さらなる危険を招く可能性が高い。そこで、隼風たちは救護所で一夜を過ごすことを決めた。


静寂に包まれた夜。戦いの緊張感がわずかに和らぐ中、それぞれが思いを巡らせていた。

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