表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/97

第23話:「復帰」

葵生は、霞む視界の中でその声を必死に捉えようとした。


「にい……さ……」


声を出そうとしても、脇腹の痛みが邪魔をする。だが、それでも隼風に届くように、絞り出すように言葉を紡いだ。


「……ここ……に……っ」


次の瞬間、強烈な風が吹き荒れ、忍者風の男の周囲に旋風が巻き起こった。


「おいおい、随分と派手にやってくれるじゃねぇか」


忍者風の男は身構えながらも余裕の笑みを浮かべる。しかし、次の瞬間——隼風の姿が疾風のごとく目の前に現れた。


「葵生をよくもやってくれたな」


怒気をはらんだ声とともに、拳にまとった風が男を吹き飛ばす。だが、男は素早く受け身を取り、地面を滑りながらも体勢を立て直す。


「ほぉ……なるほど、こりゃあ厄介だ」


男は楽しげに言うが、隼風の目はすでに次の攻撃を見据えていた。


「今は話してる暇なんてねぇぞ」


隼風の風が激しく渦巻く。忍者風の男も一歩も引かず、瞬時に姿を消し、次の一撃を狙う。


——風と闇の戦いが始まった。


葵生は倒れたまま、戦況を追うこともできず、ただ遠ざかる気配を感じていた。戦いは次第に森の奥へと移動していき、やがてその音も遠のいていく。


(兄……さん……)


意識が途切れそうになる中、葵生は最後の力を振り絞り、隼風の名を呟いた。


隼風の攻撃は勢いを増し、忍者風の男を確実に追い詰めていた。


「ちっ……!」


男は舌打ちしながらも、素早くくないを複数放つ。しかし、隼風にとっては脅威ではなかった。


「そんなもん、俺には通じねぇよ」


風の力を使い、くないの軌道を逸らすと、それらはあらぬ方向へと飛んでいく。忍者風の男は歯を食いしばりながら呟く。


「……相性が最悪だな」


そう判断した男は、戦法を切り替えた。くないや遠距離攻撃ではなく、接近戦に持ち込むことを選んだのだ。


「ならば、直接叩き斬るだけだ!」


一瞬で間合いを詰め、鋭い手刀を隼風の首元へと振るう。しかし——


「遅ぇよ」


隼風は軽々とかわし、逆に拳を叩き込む。風の勢いを乗せた一撃は、男の腹部に炸裂し、後方へ吹き飛ばした。


「ぐはっ……!」


男は転がりながらもすぐに体勢を立て直し、隼風を睨む。


「クソッ……これが第20班の実力ってわけか……とんだルーキーだなぁ!」


「さっきから何をゴチャゴチャ言ってんだ? やるならさっさとかかってこいよ」


隼風は余裕を見せつつ、肩を軽く回す。だが、次の瞬間——


「……ならば、消えるまでよ」


忍者風の男の姿が、ふっと霧のように掻き消えた。


「……っ!?」


隼風は即座に周囲を警戒する。風を流し、気配を探るが、どこにも感じられない。


(……消えた? いや、そんなはずは……!)


緊張が走る。まるで影に溶け込むようなこの感覚——


「どこだ……!」


風のざわめきが森の中に響く。戦いの行方は、次の一瞬で決まる——。


もうひとり


隼風は警戒を強め、周囲の気配を探る。しかし、どこにも男の存在を感じることはできない。


(クソ、またどこかに隠れてやがる……!)


風を僅かに流し、動きを読む。すると——


「……そこか!」


隼風の視線が木の一つに向けられる。その瞬間、木の幹からくないが飛び出した。


「なっ……!」


思わず反応した隼風は、それを避ける。しかし——


「まだまだ甘いなぁ」


低く不気味な声が、背後から囁かれる。忍者風の男は、いつの間にか隼風の背後へと回り込んでいた。


「まぁ、所詮ガキだからな」


刹那、男が動こうとしたその瞬間——


「……1人だと思いました?」


突然、男の足元から黒い影が揺らめいた。影の中から伸びた手が、男の足をしっかりと掴み、拘束する。


「うおっ……!」


驚いた男が動揺する中、影の中から夕音が現れた。


「……相手は二人いるんですけど」


夕音の静かな声が響く。


彼女は忍者風の男の足を影で拘束しながら、冷静に微笑んでいた。


「やったな!夕音。やっぱり連れてきて正解だった」


隼風は影の中から現れた夕音にそう声をかける。


「夜は私の能力が活かせますから」


夕音は淡々と答えながらも、影の拘束を強める。忍者風の男は動けずにいた。


しかし、その状況にもかかわらず、男は不敵に笑った。


「へぇ……この第20班ってのは、ガキばっかりなんだなぁ」


その言葉に、隼風の表情が険しくなる。


「……何だと?」


「隼風さん、挑発に乗らないでください」


夕音が冷静に隼風の腕を掴み、制止する。


「今は葵生のもとに戻るのが先です。ほかの班にも連絡を——」


その言葉を聞き、隼風も冷静さを取り戻す。


「ああ、そうだな……」


隼風は携帯を取り出し、通信を試みる。しかし——


「残念だったなぁ」


男の含み笑いと同時に、辺りが濃い煙幕に包まれた。


「クソッ……!」


視界を奪われた隼風と夕音は、すぐに防御の体勢を取る。だが、男の気配は煙の中へと溶けるように消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ