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第21話:「潜入調査」

葵生が辰月一派の裏サイトを見つけてから数日が経っていた。

彼らは明確な思想を持ち、能力者による新たな秩序を築こうとしていることがわかった。


(兄さんたちには言えない。でも……このままじゃ何も変わらない。)


隼風は未だに立ち直れず、第20班の士気も低いままだった。

このままでは辰月一派の動きを止めることなど到底できない。


葵生は裏サイトの掲示板を見ていた。そこには「同志を募集」という項目があり、指定された場所に来るよう指示がされていた。


《場所:中央区都市部近郊、森の中の施設》


表向きは研究機関を装っており、辰月一派に賛同する者を集めているようだった。


葵生は偽名を使い、研究者として申請を出した。

数時間後、返信が届いた。


《受理した。明日20:00、指定の座標まで来ること。》


(……思ったより簡単に潜り込めそうだな。)


不安がないわけではなかったが、ここで尻込みしている暇はない。

葵生は決意を固め、翌日の夜、誰にも知られぬように施設へ向かうことにした。


***


夜の中央区。都市の光が遠ざかるにつれ、周囲は静寂に包まれていく。


森の中へと続く道を進みながら、葵生は慎重に周囲を確認した。


(もし、誰かに見つかったら……)


考えたくはないが、最悪の場合、敵とみなされ処分される可能性もある。

それでも、今は一歩でも前に進むしかない。


しばらく歩くと、木々の間に不自然な建物が見えてきた。


(あれが……)


倉庫のような無機質な施設。だが、明らかにただの建物ではないことは一目でわかった。


指定された時間ちょうどに施設の前に到着し、葵生は深くフードを被った。


警備員が立ちはだかる。


「新しい研究者か?」


「ええ、そうです。」


(ここからが本番……)


冷静を装いながら、葵生は施設の中へと足を踏み入れた。



施設内は無機質で、壁の至るところに監視カメラが設置されていた。葵生は慎重に周囲を観察しながら、少しでも多くの情報を集めることに専念した。


通路を進むと、ある部屋に案内された。中にはすでに4人の研究者が集まっていた。彼らも辰月一派の理念に賛同し、この施設へとやって来た者たちだった。


(……私が一番若いな。)


周囲の研究者たちは明らかに20代後半から30代に見える。葵生だけが飛び抜けて幼く、すぐに視線を集めてしまった。


「おい、新入りか?ずいぶん若いな」

男の一人が目を細めて葵生を見た。


「ええ、一応……」


「本当に研究者なのか?いくらなんでも若すぎるだろう」


他の研究者たちも同意するように頷き、警戒の目を向ける。


(やっぱり疑われるか……。)


葵生は焦りを見せず、堂々とした態度を崩さなかった。


「私は特殊な環境で育ち、物心がついた時から研究に没頭してきました。専門は能力に関する研究です。」


「ほう……」


「若い天才というわけか?」


「まあ、そう思ってもらって構いません。」


葵生はそう言いながら、内心で冷や汗をかいていた。これ以上詮索される前に話題を逸らさなければ——。


「それより、ここではどのような研究を?」


すると、別の研究者が静かに口を開いた。


「……この森から、すべてが始まる。」


「え?」


「辰月様の計画だ。我々はその準備を進めている。」


研究者たちは、すでに重大な情報を知っているようだった。葵生はさらに食い込んで情報を探るため、慎重に質問を重ねることにした。


---


葵生は、無限石についての話が進む中で、慎重に質問を重ねていた。だが、話を聞けば聞くほど、他の研究者たちの知識レベルと自分の無知さの差が明らかになっていった。


「無限石って、そんなに膨大なエネルギーを持っているのに、制御は可能なんですか?」


軽く質問したつもりだったが、その場の空気が一瞬張り詰めた。


「……お前、それ本気で言ってるのか?」


向かいに座っていた男が怪訝な表情を浮かべる。


「ここに志望した研究者なら、無限石の制御技術について最低限知ってるはずだろ?」


「ま、まあ、研究分野が違えば知らないこともあるでしょうし……」


別の研究者がフォローを入れるが、明らかに疑念の目を向けていた。


「それにしても、君、若すぎないか?研究者ってことだけど、今までどんなプロジェクトに関わってたんだ?」


鋭い問いが飛んでくる。葵生は心臓が跳ねるのを感じた。


「え、ええと……」


咄嗟に用意していた経歴を思い出そうとするが、焦りで頭が回らない。言葉を探しているうちに、沈黙が続く。


「……おい、もしかして経歴すらまともに言えないのか?」


「いやいや、研究者にしては無限石のことを知らなすぎるし……」


「……スパイじゃないよな?」


その言葉に、場の雰囲気が一変した。誰もが疑いの目を向ける。葵生はなんとか誤魔化そうとした。


「ち、違います!私は——」


その時だった。


「おい、そいつは敵だなぁ。」


突然、背後から低い声が響いた。葵生が驚いて振り向くと、黒いフードをかぶった忍者のような男が、鋭い目つきでこちらを見ていた。


「……!」


葵生の背筋が凍った。忍者のような格好をした男が、部屋の入り口に立っていた。黒ずくめの装束に、口元まで覆われた布。鋭い目がこちらを射抜く。


「そいつ、無限石のことを知らなすぎる……研究者にしては不自然だなぁ?」


男はゆっくりと歩み寄りながら、まるで獲物をいたぶるかのように言葉を投げかけてくる。


(くそっ...まずい……!)


葵生は内心焦るが、表情を変えないよう努めた。しかし、周囲の研究者たちの視線が急速に冷たくなっていくのが分かる。


「お、おい……まさか、スパイか?」


「待て、ここで騒ぐな。まずは本人に確認しようじゃないか?」


一人の研究者が言い、場が一瞬静まる。しかし、忍者のような男は微笑しながら、さらに一歩踏み込んできた。


「そいつの態度を見てみろよ。まるで、今すぐここから逃げ出したいって顔をしてるぜぇ?」


「……!」


葵生は言葉に詰まる。確かに今、ここから逃げ出したかった。だが、そんな素振りは見せていないはず——なのに、こいつは何かを察知している。


「ふーん……なあ、お前、名前は?」


男が尋ねる。葵生は偽名を名乗ろうとするが、頭が真っ白になってしまった。ほんの一瞬の躊躇い——しかし、それが決定的だった。


「答えられないのか?」


その瞬間、男の手が動いた。


シュッ——!


刹那、鋭い音とともに手裏剣が飛び、葵生の足元に突き刺さる。


「おっと……」


葵生は咄嗟に後退し、警戒する。だが、忍者のような男は、さらに鋭く笑った。


「やっぱりな。スパイ確定だ。」


その言葉と同時に、周囲の研究者たちが一斉に立ち上がる。葵生の心臓が跳ね上がった。


(……まずい!!)


一気に緊張が走る。葵生は次の行動を決めなければならなかった。

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