第18話:「募る悔恨」
闇の中の閃光
シュバッ! シュバババババッ!!
ナイフが次々と宙を裂き、隼風へと襲いかかる。
だが――
「そんなもんで……止まるかよ!!」
隼風はそれを無視し、一直線にコルティニーへと突っ込んでいった。
一本、二本―― さらに三本、四本。
ズブッ!
次々とナイフが肉を貫き、体に突き刺さる。
それでも隼風は止まらない。
風を纏い、黒い暴風を巻き起こしながら、コルティニーに拳を叩き込もうとする――
だが――
「……っぐ!!」
ドサッ!!
限界を超えていた。
足がもつれ、力が抜け、隼風の体が地面に崩れ落ちる。
意識が遠のく。
(……クソ……が……)
動けない。
見上げると、コルティニーが笑っていた。
「ふふっ♡ せっかく可愛く怒ってくれたのに、もう終わり?」
ゆっくりと隼風に近づく。
そして――
「さよなら♡」
コルティニーの足が振り上げられる。
――殺される。
隼風が覚悟した、その瞬間――
「――ルミナ・セカンズ。」
ゴォォォォォォォォォォォ!!!!!!
空気が爆ぜるような轟音が鳴り響いた。
眩い閃光が夜を裂き、とてつもない巨大なエネルギー弾が、隼風とコルティニーの間を通過していった。
ドォォォォォン!!!!
大地が抉れ、粉塵が巻き上がる。
コルティニーが驚いたように後ずさる。
「……あら♡」
隼風は、かろうじて目を開け、そちらを見た。
――光の中に、見慣れたシルエットが立っている。
宮副セシリア。
第5班の副班長。
彼女の大杖には、未だ光の残滓が揺らめいていた。
「……これは予想外ねぇ」
コルティニーが唇を尖らせる。
白いローブの女が静かに呟く。
「……第5班か。少し、分が悪いな」
「そうねぇ♡」
コルティニーは余裕の笑みを崩さないまま、白いローブの女と視線を交わす。
そして――
「またね♡」
二人の体が、黒い霧に包まれ――
そのまま、どこかへと消え去った。
「隼風君! 大丈夫?」
セシリアが駆け寄り、隼風の肩に手を添える。
隼風は何も言えなかった。
痛みはあった。全身にナイフが刺さり、血が流れ続けている。
だが、それよりも――
仲間を守れなかった絶望のほうが、よほど痛かった。
隼風は拳を握り締め、地面に爪を立てる。
「……また、逃がした……」
悔しさが滲む声だった。
「それだけじゃない……俺は……俺は、仲間を……」
歯を食いしばる。
その時だった。
次々と仲間たちが到着した。
そして、目の前に広がる光景を見て――皆、言葉を失った。
「嘘だろ……まさか」
葵生の震える声。
「なんで……」
紗彩の掠れた言葉。
「そんな……先輩!!」
千紗の悲鳴にも似た叫び。
「……っ」
夕音は唇を噛み締め、俯く。
沈黙が広がる。
そこへ、第5班の班長、末政も到着した。
厳格な表情を崩さぬまま、重く口を開く。
「……すまなかった。私たちの到着がもう少し早ければ……」
その言葉を聞いた瞬間、隼風の中で何かが弾けた。
「いや!!」
彼は末政の言葉を遮る。
「俺が悪いんです……俺のせいで……俺が、もっと強ければ……!!」
拳を握り締め、血の滲む唇を噛む。
「俺が、もっと早く動いていれば……俺が、白瀬を助けられていれば……!」
無力さが、心の奥底を焼き尽くしていく。
白瀬の声が脳裏にこだまする。
――「ありがとう」
――「私、あなたと一緒に戦えてよかった」
彼女の想いを、最後に応えることができなかった。
隼風はその場に崩れ落ち、拳を地面に叩きつける。
「くそぉぉぉぉ!!!!!」
夜の闇に、悲痛な叫びが響き渡った。




