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第16話:「緊急事態発生」


第20班の本部。


当番で勤務していた隼風と葵生のもとに、突如として通報が入った。


「通報だ! 白瀬から!」


葵生は即座に端末を操作し、発信場所の特定を急ぐ。


「……待って、これ……シンセシティの外!?」


隼風の表情が険しくなる。


「何だって……? そんな場所に一人でいるはずがないだろ……!」


「状況は不明。でも、すぐに向かわないとまずい!」


「わかってる!」


隼風は迅速に行動を開始する。


「第20班、全員集合! 緊急事態だ!」


通信を入れた直後、彼はさらに別の回線を開いた。


「こちら第20班の柄本隼風! 第5班、応答できるか!?」


すぐに返事があった。


「第5班の宮副セシリアよ。どうしたの?」


「至急、応援を頼みたい! 白瀬が危険な状況にある。通報の発信場所はシンセシティの外だ!」


「シンセシティの外? そんなところで何が……? まぁいいわ。末政とすぐに向かう!」


セシリアが通話を切ると同時に、葵生が場所の特定を完了させた。


「場所は特定した! ここだ!」


葵生が端末を隼風に見せる。そこに映し出されたのは、シンセシティの外れにある広大な砂漠。普段、ユスティティア・ルカヌスが管轄しているエリアではない。


「まずいな……管轄外だと、公式な応援がすぐには期待できないかもしれない……」


「だからこそ、私たちが行くんだろ!」


葵生の言葉に、隼風は頷いた。


「そうだな。急ぐぞ!」


第20班の仲間たちと合流し、一行は現場へ車で向かう。


(——無事でいてくれよ、白瀬!)


能力の秘密


白瀬とコルティニーの戦いは続いていた。


コルティニーは相変わらず素早い動きを見せるが、その動きにはどこかぎこちなさがあった。


(……なるほど、一瞬だけ発動するタイプの身体強化か)


白瀬は戦いながらコルティニーの能力の仕組みに気づく。


一瞬だけ、筋力や速度を爆発的に上げる能力——だが、基本的な戦闘技術は素人同然。無駄な動きも多く、攻撃も大振りだ。


(つまり、攻撃が来る瞬間さえ見極めれば対処は可能——)


ペンギンは氷の槍を生み出し、コルティニーの動きを封じる。さらに、次々と氷の障害物を作り出していく。


「なかなかやるじゃないの……♡ でも、まだ終わりじゃないわよ!」


コルティニーが再び距離を詰めようとする。


しかし、白瀬は冷静だった。


「……終わりだよ」


氷の刃を形成し、一気にコルティニーの懐へ飛び込む。


その瞬間——


「——っ!?」


鈍い衝撃が頭を襲い、視界が赤く染まった。


全身から力が抜け、その場に崩れ落ちる。


(……何が……!?)


意識が遠のく中、視界の先に映ったのは——コルティニーとは別の女性。


白いローブを纏い、白瀬を冷たく見下ろしていた。


「……あらら、残念だったわね♡」


コルティニーの声が耳に響く。


白瀬は、薄れゆく意識の中で歯を食いしばった。


拷問


白瀬はぼんやりとした意識の中で、何とか起き上がろうとした。


しかし、その瞬間——


「——っ!!」


鋭い痛みと共に、腹部に衝撃が走る。


吹き飛ばされた先に転がるのは、大きめの岩。


(……何……!? 岩が……飛んできた……?)


「ふふっ、驚いた? 私の能力はね、対象の物を指定した位置まで高速で移動させることができるのよ」


そう言いながら、白いローブの女が白瀬を見下ろしていた。


「さて、そろそろ本題に入りましょうか♡」


その言葉と共に、コルティニーがペンギンの首を掴み、締め上げる。


「グルル……!」


ペンギンの苦痛が白瀬に伝わる。まるで自分の首を絞められているかのような感覚——いや、それ以上の痛みが走る。


「——がっ……は、ぁ……っ!!」


喉が締め付けられ、視界が揺らぐ。


息ができない。頭がぼんやりとして、意識が遠のく——


「ふふ、ギリギリで手を離してあげるわ♡」


コルティニーがペンギンを手放す。白瀬は地面に倒れ込み、荒く息をする。


白瀬は唇を噛みしめ、コルティニーを睨みつけた。


——だが、それは終わりではなかった。


「ふふっ♡ まだ睨む元気があるんだぁ? いいねぇ、そういうの大好き♡ だって、壊しがいがあるもの♡」


そう言いながら、コルティニーは白瀬に馬乗りになり——


「ふふっ♡」


ボゴッ!!


顔面に拳がめり込む。


「ぐっ……!」


メキッ! バキイッ!


「ほ〜ら♡可愛らしい顔がグチャグチャになってるわよ♡」


何度も殴られ、唇の端から血が垂れる。


白瀬は激痛に耐えながら、なんとか口を開いた。


「……わかった……話す……」


コルティニーと白いローブの女は顔を見合わせる。


「ふふ、最初からそうすればよかったのに♡ さあ、教えてもらおうかしら?」


白瀬はゆっくりと息を整え、震える声で語り始めた。


「第20班のメンバーは……能力を持っているのは私と班長の隼風だけ……他のメンバーは……ただの補助要員……」


コルティニーは興味深そうに聞いていたが、次の瞬間、クスクスと笑い出した。


「……あらあら♡ これはまた、随分と雑な嘘をつくのねぇ♡」


白瀬の背筋に冷たい汗が流れる。


「どこから嘘だと……?」


「ねぇ、私たちがこんな簡単な情報収集すらできないとでも思ったのかしら? ふふっ♡」


コルティニーは楽しそうに白瀬の髪を軽く指で巻き取りながら、囁くように言った。


「あなたの班は一人を除いて全員が能力者なのよねぇ? それに補助要員? そんな無能力者をわざわざ能力者部隊に入れるわけがないじゃない♡」


白瀬は歯を食いしばる。


(くそ……! 既に私たちの情報はある程度知られている……!)


白いローブの女が肩をすくめる。


「ま、嘘つかれるのは予想してたけどねぇ〜♡。じゃ、罰として——」


コルティニーは舌なめずりしながら、白いローブの女に指示を出す。


「 ふふ♡次はこのペンギンちゃんを虐めちゃおうかしら♡」


次の瞬間——


「おっと、いくわよ〜♡」


ズドンッ!!


先ほどの岩がペンギンの右肩に直撃する。


「——ッ!!」


その瞬間、白瀬の右肩にも激痛が走る。


グチャッ.....!


鈍い音と共に、骨が砕ける感覚。


(——あ、あぁ……肩が……!)


激痛に息が詰まり、身体が震える。


ペンギンの苦しむ声が響く。


その光景を見下ろしながら、コルティニーは満足げに笑った。


「ねぇ♡ まだ耐えられる? それとも、もう泣いちゃう?♡」


白瀬は歯を食いしばった。


(こんな……ことで……)


(私が……折れるわけには……いかない……!)


コルティニーは白瀬の顔を覗き込む。


「いいわぁ♡ その顔! もっと壊したくなる♡ ねぇ、次はどこを砕こうかしら?」


彼女の狂気に満ちた声が、暗闇に響く。

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