第11話:「辰月一派の脅威」
数日後、第20班のオフィスに届いた報告書は、隼風たちに緊張感を与える内容だった。調査を任されていた第5班からのもので、以前、港湾エリアに現れた霧の能力者と廃工場での事件の背後に辰月の影があることを突き止めたというものだった。さらに調査が進むにつれ、「辰月一派」と呼ばれる団体の存在が明らかになった。
辰月一派は、普通の犯罪組織とは一線を画す存在だった。ただの能力者犯罪集団ではなく、彼らは綿密な計画のもとで動き、大規模なテロを引き起こすことを目的としているとされていた。その行動は極めて計画的で、政府施設やユスティティア・ルカヌスの拠点を標的とする可能性が高いと見られていた。
報告書を読みながら、隼風は深刻な表情を浮かべる。
「テロの計画か……。単なる犯罪者集団とは思えないな。」
白瀬がその隣から報告書を覗き込みながら同意する。
「確かに。ただのスラムのギャングじゃないみたいね。これ、組織全体で動いてるってこと?」
「そうみたいだな。個々の能力者が力を振るうだけじゃなく、統率された行動を取ってる。厄介だ。」
辰月一派は、能力者移民の中でも特に孤立した者たちを取り込むことで勢力を拡大していた。社会から疎外された能力者たちを「平等と自由の解放」を掲げて勧誘し、その力を利用してきたのだ。さらに報告書によれば、彼らは「無限石」と呼ばれる特殊な物質を求め、北区や西区の廃鉱山を拠点に暗躍しているらしい。
「無限石……あれは確か、能力を強化する効果があるとか言われてたな。」
隼風が呟く。
「そうね。ただ、採掘場はほとんど停止されてるはず。あの鉱石が暴走したときの被害は計り知れないし……。」
白瀬が眉をひそめる。無限石は、能力者にとって強大な力を与える一方で、制御を失えば周囲を巻き込んで崩壊を招く危険な物質だった。それを辰月一派が集めているとなれば、彼らの計画は単なる脅しでは済まされない。
「……これ、放っておいたらシンセシティ全体が危険にさらされるかもしれないな。」
隼風の声には焦りが滲んでいた。彼らの行動がどこまで進行しているのかは不明だが、少なくとも辰月一派が次なる大規模な行動を起こすのは時間の問題だった。
報告書の最後には、ユスティティア・ルカヌスとして今後の方針が記されていた。
「辰月一派の脅威を受け、20班の育成を急務とすること。また、第5班はその指導役として、20班との合同訓練を実施する。」
「合同訓練か……。」
隼風は少し考え込む。
「俺たちも力をつけないと、辰月一派には太刀打ちできないってことだな。」
「そうね。」
白瀬が頷く。
「でも、訓練だけで追いつけるのかしら。相手はもうかなりの準備をしてるはず。」
隼風は拳を握りしめた。
「それでもやるしかないだろ。俺たちが動かなきゃ、誰が辰月一派を止めるんだ。」
白瀬はその決意を感じ取り、小さく微笑んだ。
「そうね。やるしかないわね。」
ちょうどその時、玄関から明石千紗の声が聞こえてきた。
「班長! 調査報告見ましたよ! これってつまり、もっとガツンと鍛えてくれるってことですよね?」
千紗が勢いよく駆け込んできた。その顔には不安よりも期待の色が浮かんでいる。
「辰月一派とか怖そうな連中だけど……でも、強くなるチャンスですよね!」
隼風は苦笑しながらも頷いた。
「そうだな。怖いけど、避けられない相手だ。まずは訓練で力をつけておこう。」
こうして第20班は、辰月一派の脅威に立ち向かうための準備を進めることになった。合同訓練は、彼らにとってさらなる成長の場となるか、それとも過酷な試練となるのか――それは、次の戦いを前に明らかになるだろう。




