思いつき2
「さて、吸いますか」坂下はフォルテに火を付けた。みなも煙草に火を付ける。
「あ~、美味え」古沢がしみじみという。
本田が煙草に火を付ける。マキはタイミングを見計らって本田に声をかける。
「本田さん、どうですか昼食後の煙草は?」
「まあまあだよ、お嬢さんは喫煙所に来てるのに吸わないのかい?」
「私、まだ16才なんです」
「それは、まあなんと!お爺さんの話を聞くかい?」
「はい、是非」
「深いものはすべて仮面を愛する。何よりも最も深い事物は、象徴や譬喩に対して憎悪さえもつ。反対ということこそ、神の羞恥が着てしずしずと歩くにぴったりした仮装ではあるまいか。これは一つの値する問いである。誰か或る神秘家がすでにそのような真似を敢えてしたことがないとすれば、それこそ不思議であろう。優にやさしい事件でも、それを粗暴で覆ってわからくする方がよいこともある。
「善悪の彼岸、ニーチェですね。続きをどうぞ」
「うむ」
「ーーー羞恥は工夫の才に富んでいる。最もひどく恥じる事柄が最も悪い事柄なのではない。仮面の背後にあるものは、常に奸智ばかりとは限らない。ーーー狡智のうちには多くの善意がある。効果で恐れ易いものを蔵している人間が、書く古い、箍を嵌めた酒樽のように荒々しく丸々と肥えて人生を転げまわるということも考えられる。彼の繊細な羞恥心がそうさせるのだ。羞恥のうちに深みを持つ人間は、かつて達しえた者もほとんどない道で自分の運命や優しい決断にも逢着する。そして、彼に近しい者たちも、このように隠された者、本能から沈黙して打ち明けることから免れることを必要とし、しかもそうしてやまない者は、自分の仮面が自分の代わりに友人の心を頭のうちを徘徊することを欲し、またそれを求める。そこで、彼が欲しないにしても、いつの日にかやはりそこに彼について一つの仮面があることについて、ーーーまたそれがよいのだということについて、彼の眼が開かれるであろう。あらゆる深い精神はそれぞれ仮面を必要とする。まして、あらゆる深い精神の周りには絶えず仮面が生ずる。彼の示す一語一語、彼の一歩一歩、彼の生の印しの一つ一つが絶えず誤って、すなわち浅薄に解釈されるからである」
「お見事です。私は小さい頃、ピアノの練習をしては父親に殴られていたので、幼いながらに人生とはなんなのか、私の人生とはなんなのか考えていたんです。それで、本を読み漁って。最終的には哲学に行きつきました。生きる意味とはなんなのか、仮にも哲学はそれに答えをくれました。毎日父親に殴られても自分に自信が持てた。ただ、学生生活は退屈です。だんだん精神も不安定になっていって。でも、妹を父親の暴力から守って、私だけが殴られ続けたことは悪くないと思っています」
「うむ、お嬢さんは苦しい人生を歩んで来たんだね。二十歳になったら仲間たちと酒を飲むといい」
今回もニーチェの言葉が出てきたんですが、知り合いには不評です。難しいとのことです。でもいいんです。こんな小説、自己満で書いてるので。これが僕のやり方です。
要は、哲学者とかの偉ぶってる人たちは、自分の精神が崇高だと思ってて、精神が崇高な人は他人にばれないように見せかけの仮面を被って二重人格みたいに生活してるってことです。
あえて普通な人を装うって意味です。偉そうですよね。




