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わたし

ある少女に捧ぐ

 マキはとにかく死にたかった。この世から存在ごと消えてしまいたかった。高校二年生のマキは高校が退屈でしかたなかったし、気が合う人といえば30代の美術の女教師くらいだった。それくらい同級生の恋バナはつまらなかったし、日常のすべてに退屈していた。

 ある日、この世界が嫌で嫌で仕方なくて手首をカッターナイフで切ってみた。それで、この世からおさらばできるならばマキは本望だった。結果、マキは死ぬことができなかった。日常的なリストカット。ある時は学校のトイレでリストカットした。長袖の制服の手首は血だらけになり、先生や親に注意された。

 「人生はチョコレートの箱、開けてみるまでわからない」これはフォレストガンプの言葉だがマキはこの言葉が嫌いだった。箱を開けてみたところで出てくるのは無常な退屈だけだった。

 マキは反抗と逃避のために首を吊った。16歳の少女が考えられる最適な判断だと思った。マキには世界はあまりにも狭かった。社会的な慣習の歴史全体を概説してみせるには、いささか時間が遅かった。結果は失敗。慌てた親がすぐに少女を精神病棟へ搬送した。

 マキは車に運ばれながら、これから向かう精神病院のことを考えた。ひっきりなしに叫ぶ男女。ぶつぶつひとりごとをいいながら歩きまる人。味のしない病院食。何も期待はできなかった。むしろわたしもあっち側の人間になってしまったのだと痛感せざるおえなかった。

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