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レッド・エン・ビシャス

 「アハハァ!刻んで混ぜて叩き込んで~」

 レッドはまな板の上で、恋を叩いている。愛を混ぜている。仕組みを振りかけている。

 それはあくまで作品の為。自走し、意志を持ち、目的を持って行動させるため。

 赤く、青く、飛び散り、光る。

 蜘蛛のように、雲のように。

 意図を張って、浩渺(こうびょう)たる世に満遍なく。

 「いっぱい作って、たくさん撒いておかなきゃ!」

 私の喜びのために。

 満たして、溢れて、世に渡れ。


 「歯車なんて気持ちが悪いよ!やっぱり生物だよね!金属に生物を混ぜるの!」


 今日もレッドは精を出す。火花と水音で部屋を満たしながら。



レッド(わたし)は言いました。わたしの中に喜びあれ!」

レッド(わたし)は思いました。わたしの外に刺激あれ!」


 神はわたしの中に一つ。

 神はわたしの外に二つ。

 神はそれらを包んで三つ。

 そして壊れて、五つになった。

 

 満たして溢れた歓びで、世界を覆って還してもらうの。


 私は常に溢れてる。

 私は常に乾いてる。

 

 いくら包んでも止められず。

 いくら注いでも満たされない。


 


 彼女に制御は意味をなさず、彼女に声は届いておらず、彼女に浄化も望めない。


 いつからだったか。最初からだったか。彼女にすらもそれはわからず。

 誕生を知る者はなく。

 不在を知る者はなく。


 在るがままであるにも関わらず、在ると知ることはついぞ敵わず。

 それを知るのは同位体。

 人の身で辿るは能わず。


 

「私ですらあれの全てを知らぬ。底なしの、『悪を生み出し続ける機構』だ」

 白き翼をゆったりとはためかせながら、背中を向けたまま彼女は答えた。


「ボっクは思うんだけど、あれは扱うことなんて到底考えちゃいけない代物だよ?何を考えてるんだ」

 余った両袖を突き出して、覇気のない怒声を飛ばしている。


「私の世界を完成させるために。ただそれだけだ」

 こちらを向くことなく、覇気のない声に答えて、翼をたたむ。


「『使えると思ったから使う』って?ま、君には逆らえないしね。好きにすればいいけどさ」

 最初から期待はしていなかった。語気はそれを如実に表し、伏せ目がちの表情は背を向く彼女に何も伝えることはなかった。


「お前はお前の役割を果たせ。私の代わりに」

 相も変わらず振り向くことは無く、光あふれる場において、地の底にいるかのような冷たい音。


「いいよ、ボっクにしかできない仕事をしてくるよ。君の代わりに」

 情報量の絶無な会話を交わして、白衣を翻し、冷たい聖域をデハルタは去っていく。


「……アオ」

 ただ降り注ぐ光を見上げ、誰にも届かぬ音を浮かべた。


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