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asmrと嫉妬



「『年上彼女のイチャイチャ耳かき』だっけ、それとも『メイドの愛情たっぷり耳かき』だったかな」



「・・・」



 僕が最近見た音声作品のタイトルをピンポイントで当ててくる玲奈。

 いつの間に玲奈に見られたんだろう……なんか自分の彼女にこういうタイトルの作品を見てるのを知られるのって恥ずかしいな。



「何回か寝落ちした直樹がasmrを聞いていたのを見たことがあるわ」



「あー、あとは幼馴染物も何個か見たかな…」



 何とか幼馴染物も見ているという事でお許しを貰えないかな。

 ほら、僕は玲奈と同じ幼馴染が好きですよーって意味で…



「ふーん、私というリアル幼馴染がいるのに架空の幼馴染がいいんだ」



「・・・」



 まずいかもしれない。

 全然ダメだった…



 どうやったらこのピンチの状況から玲奈の心を掴んで挽回出来るだろか…



「私なら直樹が望むことになんだって答えてあげるのに……」



 悲しそうに言われると罪悪感から申し訳なくなってくる。



「ごめん…」

 


「じゃあ、これからは私以外の女の声を聞くのやめてくれる?」



「・・・」



 シチュエーションボイスを聴きながら寝ていた僕には中々に厳しい選択肢だ。

 でも、玲奈が嫌がっているならしょうがないかな。一人暮らしを始めてからは半同棲みたいな形になって、玲奈と同じベッドで寝ることが多くなった影響で最近はasmrを聞く回数が少なくなってきたし。



「ちなみに、直樹の耳は私次第でどうにでもなるんだよ…」



 耳かきを僕の耳に突っ込みながら呟く玲奈。



「分かった。これからは聞くのをやめるよ」



 耳を人質に取られたんじゃあしょうがない。誰だって自分の耳は愛おしい…



「ホントに…?」



 不安げに尋ねる玲奈。



「うん、玲奈も嫌がってるし」



「ありがとう直樹! 大好き!!」



 僕の返事を聞いて嬉しそうに感謝の言葉を口にした玲奈は僕の後頭部を持ち上げて、その大きな胸で僕を包み込んでくれた…



 顔が柔らかくも弾力のある感触に包まれて幸せを全身に感じる。

 こんな最高のご褒美があるならシチュエーションボイスはもう聞かなくていいかもしれない。



「どう?」



「最高です!」



 そんなことは聞かれるまでもない。

 嬉しいに決まっている。



「フフッ、それじゃあ今度は反対側にごろんとしてね」



「うん」



 言われた通りに頭の向きを反対側にする。



「じゃあ、左耳もやってくわね」



 左耳も玲奈によって綺麗に掃除されていく。目をつぶって耳かきを堪能としていると段々と眠くなってきた。



「もうすぐ終わるから寝てもいいわよ」



「うん、ありがとう玲奈」



「リアルの耳かきも気持ちいいでしょ」



「うん、気持ちいい」



「直樹がやって欲しいなら、いつでもやるから。してほしい時は言ってね」



「うん、ありがとう。またお願いするよ」



 ああ、眠い。

 睡魔が僕を一気に襲ってくる。



「直樹が他の女に浮気しないように私もasmrを撮ってみようかしら…」



 耳かきと膝枕のコンボによって意識が遠のいていく僕には玲奈が何を言っていたのか聞こえなかった。

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