尋問と尋問
「とりあえず玲奈も座れば?」
仁王立ちでコチラを見ている玲奈にとりあえず座ればと声をかければ素直に応じてくれた。
「初めてまして、私は直樹の彼女の朝倉玲奈といいます。いつも彼がお世話になってます」
「ど、どうも。佐藤悠真って言います」
僕の横の席について直ぐに悠真に自己紹介をする玲奈。
それに対して悠真もどこかぎごちない様子で返事を返す。
「それで、今日は友達と2人でファミレスに行く予定じゃなかったかしら?」
悠真との簡単な自己紹介が終わると、さっそく僕に対しての尋問が始まった。
「いや、たまたま会ったんだよね…」
まあ、実際に待ち合わせしてたわけではない。
「たまたまね…」
「お兄ちゃんの奢りでティラミス食べていい〜?」
僕が隣にいる玲奈から冷ややかな目線を向けられているというのに、諸悪の根源のひなのはティラミスを要求してくる。
この状況を作り出しといて何を甘いことを言っているのか…
そんなの…
「いいよ」
「ありがとうお兄ちゃん」
まあ、可愛い妹におねだりされたら断れないよね。
「ふーん…」
「な、何かな玲奈…?」
「別に…ただ、優しいな〜って思っただけ」
「妹だからね、これぐらいは普通だよ…」
「妹ね…普通のお兄ちゃんは妹の胸に興奮したり、キスをしたりはしないと思うんだけどな」
「グッ…!」
「まあまあ玲奈ちゃん。お兄ちゃんを許してあげてよ」
マッチポンプもいいところだけど、ここで妹から救いの手が差し伸べられる。
「でも…そもそもひなのちゃんも兄弟だからって直樹と距離が近すぎると思うの……直樹は私のなのに…」
「推しの嫉妬てぇてぇすぎる」
小声で呟くひなの。
隣にいる僕には普通に聞こえてるからね…
「まあ、お兄ちゃんはシスコンだけど私もブラコンだからね〜。でも安心してよ、玲奈ちゃんからお兄ちゃん取ったりしないから」
「うー、分かったわ」
納得してないような雰囲気も少しあるけど、この場はなんとか治まりそうだ。昔から玲奈は何故だかひなのにはあまり強く出れないからな。
別に彼女たちの仲が悪いわけでは無いんだけど。むしろよく2人で遊びにいったりもしているし。
「ところで玲奈ちゃん」
「なに?」
「例の事はお兄ちゃんに聞かなくていいの? その為に来たんでしょ〜」
「そういえばそうだったわ」
なんだか凄く嫌な予感しかしないんだけど…
「さっきひなのちゃんからロインが来て、それを見てここまで来たの」
やっぱり玲奈をこの場に呼んだのはひなのだったのか…
薄々そんな気はしてたけどね…
「な、何かな…?」
「直樹がザイゼの店員に鼻の下を伸ばしてるって…それでこの店の常連になって彼女になろうとしてるって」
デマにもほどがあるでしょ…
確かに悠真はそんなことを言っていたような気はするけど。
そんな嘘を言った不届きものを見れば目を逸らされた。
「いや、確かに可愛いとは思ったけど…彼女にしようだなんて考えてないよ」
「本当?」
不安そうに尋ねてくる玲奈。ダイエットに成功してからの彼女はだいぶ自分に自信を持てるようになったけど、時々こうやって自身の無さが顔を出す。
「本当だよ…僕は玲奈以外を彼女にする気なん気なんて無いし、玲奈がいない生活なんて僕には想像できない。玲奈が思ってる100倍は君のことが好きだし、もう僕は君じゃないとダメなんだよ!」
「だから安心してよ玲奈」
「う、うん。分かった」
「ありがとう。好きだよ玲奈」
隣の席で耳まで真っ赤にしている玲奈を優しく抱きしめる。
「いや〜、一件落着ですな〜」
「そもそも玲奈に嘘のロインを送った奴がいるんだけどな…」
「てへ、ちょっと間違えちゃった」
絶対にワザとだろ…
笑顔で可愛いく言えば誤魔化されと思うなよ。




