石塚のパンケーキ
お昼の時間になると中央のエリアにたくさんの猫たちがやってきた。
横一列に並んでご飯を食べている姿は圧巻で猫たちは一心不乱に食事を取っている。
プロフィール表にも書いてあったけど、メイクイーン、マンチカン、ラグドールと色々な種類の猫がいる。
「どの子も可愛い〜!」
たくさんの猫を見られて玲奈もご満悦のようでなによりだ。
「僕たちも昼食にする?」
「そうね」
場所を移動して空いている席に着く。そこまで混雑していないので席はすぐに見つけることが出来た。
「猫関連のメニューも結構あるよ?」
「ホントね…たくさんあるけど、注文しても可愛すぎて食べれなそう」
メニューには猫の形をしたアイスが乗ったフラペチーノや、猫をモチーフにしたカレーやパンケーキなんかが書かれていた。
僕の想像以上に猫関連のメニューがあってびっくりした。
「悩むわね」
「じゃあ2人で頼んで分ける?」
「いいの…?」
「もちろん」
別にどうしても食べたいものがあるわけでもないし、今日は玲奈に楽しんでもらいたくて来てるんだから問題ない。
さっそく店員を呼んで注文をする。
「食事の前におやつを買って来ていい?」
「うん、いいよ」
玲奈は店に入ったときから猫におやつをあげている他の客を羨ましいそうに見ていたからなぁ。
さっそく売ってあるおやつを買うと1匹の猫が玲奈に近づいてきた。
「おいで〜」
おやつを手のひらに乗せて玲奈が呼べばパクパクとおやつを食べはじめる。
「ああ〜、猫ってなんでこんな可愛いんだろう!」
玲奈がおやつをあげ終わってからし少しして店員が頼んだものを持ってきてくれた。
「ご注文の猫カレーと石塚のパンケーキとなります」
この店では数ヶ月に一回のペースで総選挙をやっているらしく、石塚というのはこの店で人気No. 1の猫らしい。
人気No. 1だからこそ自分をモチーフにした商品が開発されているのだろう。
「やっぱり可愛いけど…食べるのがもったいない!」
「とりあえず写真でも撮ったら?」
「そうする」
玲奈はテーブルに置かれた猫をモチーフにした料理の写真を撮っていく。
「満足した?」
「うん」
「じゃあ食べるよ?」
名残惜しそうにしている玲奈に確認する。
「写真は撮ったから。食べ物な以上いつまでも口に入れないわけにはいかないし」
「じゃあ遠慮なく」
さっそくスプーンでカレーを口に入れる。ご飯部分が猫の形をしているから崩さざるおえないんだけど、隣にいる玲奈が悲しそうな表情をしているのに少し罪悪感を感じる。
玲奈は食べるのを葛藤しながら食事をしていたので食べるのに時間がかかったが、何とか完食することに成功した。
「このあとどうする? もう少しいる?」
「もう少しだけいてもいい?」
「別にいいよ」
「ありがとう! 猫アイス買いたいなって」
「了解」
さっそく買ってきた猫アイスを近くの猫に見せれば玲奈のそばに寄ってきた。
「どうぞ〜」
玲奈がアイスを近づければ猫は無我夢中でペロペロと舐め始める。
「美味しい〜?」
「ニャー」
タイミングよく玲奈の言葉に合わせて猫が鳴き声をあげた。
「返事してくれたー!」
「玲奈も返事してあげれば」
「そうね、にゃ〜! にゃ〜!」
猫言葉で一生懸命に話しかける玲奈。その姿は普段よりも幼くて見えて愛らしい。
これで密かに掲げていた玲奈の猫言葉を見るというミッションは達成だ。
「な、なにやらせるのよ直樹!」
「ごめんごめん、つい魔が差して」
「もうー!」
膨れっ面になって僕に抗議する玲奈。そんな姿まで可愛いのは反則だ。
猫も確かに可愛いけど、玲奈の可愛さには負けるね。
ただ、僕は気付いてしまった…
猫と玲奈の可愛さを合わせたら可愛い同士で最高のコラボだということに。
後日、猫耳のカチューシャを購入した僕は悪くないと思う…




