プロローグ
「なぁ、直樹はこの中だったら誰が好き?」
昼休み。
教室の隅でクラスの男子たちが好きなアイドルの話しをして盛り上がっている。
好きなアイドルだの、好きなクラスメイトだの、ああいう話題って男女関係なく盛り上がる事が多い気がする。
そして、今その話題で盛り上がっている男子の1人……早川直樹は私朝倉玲奈の幼馴染で初恋の相手だ。
恋する私にとっては好きな相手の好みは把握しておきたい。
だから、机に突っ伏して寝たふりをしながら彼らの話しを盗み聞きをしている。
「僕はこの子かな」
「あー、その子も可愛いよな! 出るとこでて引っ込むとこは引っ込んでてスタイルいいよな!」
どうやら直樹のタイプは胸が大きくてウエストの細い女の子らしい…
クッ…!
ぽっちゃりした私とは正反対だ…
だけど大丈夫。
あくまで今しているのは好きなアイドルの話しであって好きな異性の話しではない。
直樹は昔から私の体型についてバカにしたりしないし、別に無理にダイエットしなくてもいいと言ってくれた。
つまり直樹は自分の彼女を顔で選ぶような男ではないのだ。
「こんな子と付き合えたらいいよな」
「それね」
「俺は誰でもいいから今すぐにでも女の子と付き合いテェー! 直樹は選り好みしなきゃ直ぐにでも付き合えるのにな」
そう、彼の言った通り私の幼馴染はモテる。
ぱっちりとした二重で鼻もスッとして高く、色白であどけなさの残る顔立ち。女子が嫉妬してしまうような白い肌に薄い唇。
それでいて清潔感もあり聞き上手。他の同学年男子よりも大人びていて余裕のある感じもモテる理由の一つだろう。
私は直樹が動揺している所やイライラしている所を見たことがない。
何より小学校の時にデブとクラスメイトに言われて揶揄われていた私を庇ってくれた。
そういう勇気のあるところや、いつも私を助けてくれるところ、一緒に居て楽しいところ。
そうやって色々な事が積み重なり気がつけば彼の事を好きになっていた。
最初は気が付かないフリをしてたけど、すぐに自分の気持ちを誤魔化せなくなった。
近くにいるだけで顔が熱くなって直樹を避けてしまったり、「おはよう」って朝に挨拶するだけで嬉しくなったり、気が付けば直樹のことを1日中考えてたり…
そんなの好き以外の何者でもない…
私を見つめる綺麗な瞳、私のことを呼ぶ声、あどけない顔立ち、直樹の全部が好き…絶対に私以外の誰にも渡したくない。
「そんな事ないよ」
「嘘つけ、この前も女の子振ってたじゃん」
女子にモテる直樹はよく告白をされるが、誰かと付き合ったという話しは1度も聞かない。
だからこそ、私は直樹と恋人になりたいと思いながらもフラれるかもと、あと一歩勇気を踏み出せずにいる。
この気持ちを伝えたら今の関係が終わってしまうのでは無いかと。
だから直樹とずっと一緒にいられるのならなんでもいい。そばにいられるのら、たとえ彼女じゃなくても彼の役に立てるのなら。
それに直樹は今のところ女子と付き合う気はなさそうだし、ずっと一緒にいればいつか私が恋人になれる日が来るんじゃないかなんて夢も見てる。
そんな告白をしない言い訳をしているうちに気がつけば月日が経っていた。
「だって、あまりよく知らない子だし…」
そうだよね。
知らない女とは付き合えないよね。
きっと直樹には身近にいる幼馴染の女の子とかがお似合いだと思うな。
「まったく…直樹はただ顔が好みじゃないだけだろ?」
え……?
そうなの…?
「まぁね…」
「お前…ホント面食いだよな…同学年にタイプの子がいないって言ってたもんな」
「男なら理想は高く持たなきゃ。僕の初めては年上のエロいお姉さんにリードにしてもらいたい」
「それもいいけど、俺はお互い初体験なのがいいな」
「裕二はそんな感じするわ」
「どんな感じだよ! じゃあ、もし高校で好みの子に告られたらOKするの?」
「もちろん」
この瞬間に私は決意した。
ダイエットして可愛いくなって直樹に告白しようと…
もうフラれるのが怖いとか言ってられない……高校入学までに生まれ変わって直樹を落として見せる!
このままではポットでの女に直樹を取られてしまう…
どすけべお嬢様とか巨乳生徒会長とか美人風紀委員長とか……
直樹が高校に入って他の女とイチャイチャしているのなんて耐えられない!
私じゃない女と出かけたり、キスしたり、食事をしたり…その先なんてもってのほかだ!!
直樹は私のなんだから!
絶対誰にも渡さない!
・・・
「フフッ、どこ見てるの直樹?」
下着姿の幼馴染に押し倒される。
とても中学生とは思えない立派な二つのメロンに目が奪われるのは男なら健全な反応だろう。
「大丈夫、私も初めてだから」
僕の両親は旅行で家におらず、妹は友達の家でお泊まり。
つまり彼女の暴走を止められる人間はこの家にはいない。
「フフッ、口では否定しても体は正直ね」
そう言って彼女は僕の息子に手を伸ばさそうとする。
おかしい…
いつから僕の幼馴染はこんなにエロくなってしまったのだろう。